第214話 「私が死んでいる? 何をいってる?」
「私が死んでいる? 何をいってる?」
呂鋼鬼が笑った。
「審判、あなたならもうわかるでしょ。たぶん、呂鋼鬼は殺された。そしてあの姒鯀に操られている。」
ワタシはクロにジャッジを仰いだ。
「ノーコメント。私は中立だからな。しかし、操られているからと言って、試合を無効にするとかいうルールはなかった。次回からは検討するよ。」
クロは両手をあげて肩をすくめた。
「まってくれ。それではまるでアビの言ってることが本当のように聞こえる! 玄武竜様! どういうことだ!」
呂鋼鬼はクロに声を上げた。
「そうだな。これは試合の勝敗に一切左右しないからいうが、呂鋼鬼君は確かに死んでいる。そして、おそらくとあるものに生き返らされた。そいつは死んだものを操られている自覚もあたえず操ることができる。私も最初は見抜けなかった。そういうスキルにあったことがなかったからね。でも、君は以前操られた死人と同じ操作が施されている。」
「本来はワタシでは見抜けないんだけどね。精神体があなたとおなじオーガのものではなくなっている。はじめから疑っていたから気がついた。」
ワタシは呂鋼鬼にいった。
「ふざけるな! 私は生きている! そんなもの信じられるか!」
呂鋼鬼は叫んだ。
無理もない。
自分ではまるでわからないんだ。
「いや、その術は一定時間が経つか術者が解除すれば、君は死ぬらしい。一つ言えるのは君の仮初の命は長くない。悔いの無いように戦うんだ。戦士として誇りを持って。アビ、君も全力を尽くしてやれ。殺すも情だ。」
クロはワタシと呂鋼鬼にいった。
いつになく真面目な顔で。
「クロ、助ける方法はないの?」
ワタシはクロに聞いた。
「あるよ。」
「え? あるの!?」
予想外の答えに驚いた。
絶対にないとかいう流れだろ。
「例えば。人間とか、魔族とかに生まれ変わらせるとか。吸血鬼やサキュバスなんかもおすすめだがどれがいい?」
いや、なんというか、軽い。
晩ごはんなにがいい? みたいな感じで死んで生まれ変わるならなにがいいと言われても…
「ふざけるなあああ!」
声を上げたのは他ならぬ呂鋼鬼だった。
「私の、オーガの誇りはそんなに軽いもんじゃない!」
「おいおい、私やアビに怒るのは筋違いだ。怒るならお前をそんな眼に合わせた姒鯀ってやつに怒れ。それに今の君の敵は姒鯀でも私でもなく、アビだ。」
呂鋼鬼はワタシの方を向いてあらためて、構えた。
「アビ。お前は良いやつだ。だが、操られていようが、なんだろうが、お前を倒し、須玉を倒し、災王様に再び立っていただくのが私の使命だ。これが最後の攻撃だ。5秒間、私は力をためる。その後、最後の一撃を放つ。」
彼女はそういうと両手で顔面を防御し、ボクシングのようなポーズをした。
そして、ワタシの【翻訳者】が反応する。
5秒間、全ての攻撃の耐性と再生速度があがるが、一切攻撃できない。
「5・・・」
彼女のカウントダウンが始まった。
ワタシは再度剣を抜き、両腕を斬りつける。
【お前の刻は凍りつく】(アブソリュート・ゼロ)
瞬間、彼女の両腕が凍りつく。しかし、切れない。
「4・・・・」
【魔神雷斬】(ライトニング・スラッシュ)
ワタシの斬撃で彼女の凍りついた両腕が砕け散った。
しかし、直後に、外骨格が崩れ落ち、あらたな鎧が再生される。
「3・・・」
【突風破】
ワタシは呂鋼鬼に突風を浴びせる。
今のワタシの放つ突風破は建物すらなぎ倒していくレベルだ。
彼女くらいの体格ならいくら踏ん張ろうが、耐えることなどできないはずだった。
しかし、彼女は四股を踏むように体勢を低くし、ワタシの起こした風に耐えきった。
「1・・・」
やばい!
ワタシは崩すのを諦め、距離を開ける。
そして、左右どちらにも回避できるように準備した。
「0・・・・」
彼女が両手をあけ、顔をだした。
そこには鬼がいた。
「鬼念咆!」
彼女の口から魔力衝撃波が放たれた。
【砂鉄盾】
ワタシは電気を使って砂鉄の盾を作って衝撃にそなえた。
さらに剣を十字に構え【豪傑覇気】のシールドをはる。
そこで、ワタシの意識は途切れた。
◇
ワタシが意識を失っていたのは一瞬らしい。
ワタシは砂鉄の山から立ち上がった。
呂鋼鬼がたおれている。
いや、全身の魔力でできた外骨格ははがれ、両手両足はちぎれたままだ。
どうやら、本当に力を使い果たしたらしい。
それでも彼女は座って、そして、いった。
「私の負けだ。トドメをさしてくれ」と。
ワタシは彼女に近づき、首をはねた。
「勝者、アビ!」
クロがワタシの勝利を告げた。
そして、ワタシは彼女の首を抱きしめた。
涙はでなかった。
◇
「はいはい。早くしないと死ぬよ。」
クロはそういうと、ワタシから彼女の首を取り上げて、死体にひっつける。
するとみるみると両手両足がもとにもどった。
「オーガは首を切ったくらいじゃ、少しは生きてるんだよ。」
クロはそういうとワタシに手をかざした。
するとワタシの全身の痛みもなくなっていった。
ワタシは呆気にとられて、呂鋼鬼をみると、全身筋肉の鎧だった彼女の体がしぼんでいき、いわゆる女性らしい体型になっていった。
「オーガとしての命は終わってるからな。姒鯀の魔力を切り離して、それをもとにオグレスとして作り直した。なかなか、いい体になっただろ。」
クロはそういって、呂鋼鬼の胸をつついている。
堂々とセクハラするとはなんてやつだと思いながらも、それ以上に声がでなかった。
とにかく、命が助かったらしいが、意識を取り戻したあと、どうしようか。
ワタシは彼女の体を抱き上げた。
次は須玉、いや、レジェンド、お前の番だ。
◇
姒鯀は無言でおもわずたちあがった。
(オレの魔力が奪われあらたな個体に利用されただと!)
「あら? どうしたの? 急に立ち上がって?」
横のスカーレットがクスクスと笑っている。
(死者蘇生にオレの能力を利用するとはなんでもありか!? あいつは。)
(死翼が、四神には手を出すなと言っていたが、こういうことか。)
◇
「おお、アビはすごいじゃないか! アレなら私もたのしめそうだぞ。そうは、思わないか? 究姫!」
凍子はチラリと究姫をみる。
「で、それからどうしたんだ?」
「最初は彼女も恥ずかしがってたんだけど。今じゃ、自分から◯☓凹凸するようになったり私やクロの◯△◇を◆◎で…」
「おお・・・」
究姫とアオはいつのまにか試合をみずに、下ネタを話していた。
「君たち、試合はみてなかったの?」
凍子はジト目でふたりをみる。
「ちゃんと魔力感知でみてるわよ。呂鋼鬼が魔力切れでアビの勝ちでしょ。なんか、クロが彼女を救ったみたいだけど。」
アオは当たり前のようにいった。
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