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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

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第203話 レジェンド勇者、チミ

「だんな、今、見てきましたが刑将のアジトには異世界人はいないようですね。」


小柄なゴブリンがフードの男に話しかける。


ゴブリンの首には首輪がつけられ、男の奴隷であることを示している。


「よし、なら今がチャンスだな。」


「しかし、だんななら、だれが相手でも問題ないのでは?」


ゴブリンが不思議そうに問う。


男はレジェンド勇者チミだった。


「そういう問題じゃねえんだよ。今回は青竜ってのを一目見にいくんだよ。」


(それでなんとかなりそうなら、脅して、俺を魔族にさせればいい。)


(もし、刑将の野郎の首がとれればそれでも構わねえ。)


チミは自分のスキルの弱点をよくわかっていた。


この世界のどんな攻撃も自分を傷つけることはできない。


しかし、異世界人の素手の攻撃などは普通にとおる。


そのほか閉じ込められたりしてもどうしようもないのだ。


ただ、チミは人間としての自分に限界を感じていた。


チミは歩きながら改めて自分を振り返った。


◇


チミは勇者ガチャでアビやジョカ、シリュウたちと同じようにこの世界に召喚された。


チミは召喚された時点では最強だった。


「この世界のすべての攻撃を無効にする。」


それがチミに与えられた最強になるはずのスキル【世界最強】だった。


レジェンド勇者とよばれ、だれも自分を止めることはできない。


はずだった。


しかし、それはもろくも崩れ去った。


異世界人の女であるアビのただの拳が全てを打ち砕いた。


そして、自分は閉じ込められた。


しかし、改心したふりをしてスキを見て逃げ出した。


そして、この世界を見て回って気が付いたのだ。


そもそもこの世界においては人間である時点で、最強でもなんでもなかったのだ。


人間はこの世界の知的生命体では短命種のほうだった。


(医療もないこの世界では50まで生きられるかどうか怪しい。)


(まして若い年齢でいられるのはもっと短い。)


そして、この世界の魔王ヴィクトリーも、もとは自分と同じように異世界から召喚されたただの人間であったことを知った。


さらに、人間が人間の寿命をこえる方法がいくつかあることも知った。


自我をもったまま、精神体になるというものもあった。


その中でもっとも自分にあっているとおもったものが長命種である魔族への変化だった。


(死翼に会わせてもらうために災王に協力してきたっていうのによ。)


災王でも刑将でもチミにとってはどちらでもよかったのである。


(その死翼が行方不明というんじゃあそこにいても仕方ねえ。)


チミはそう考え、ひそかに災王への裏切りをきめる。


そして、刑将のところに青竜がいるという噂を災王から聞いたチミは、その真偽を確かめるために刑将のテリトリーにやってきたのだ。


◇


(さすがにあちこちに刑将の紋章がかけられているな。)


チミが町を歩いていると、目にするのは刑将の縄張りをあらわす紋章だった。


チミは冒険者ギルドの酒場にはいり、刑将に雇われていそうな傭兵を探す。


といっても、ここは刑将のおひざ元。


彼の息のかかっていない冒険者などいないのだ。


(さて、なにか情報が聞こえるといいが。)


チミは空いているテーブルに座り、ゴブリンはいつもどおり床に座った。


ゴブリンがチミと同じ座席にすわることは許されていない。


「目立ちたくない。お前もテーブルにつけ。」


チミはそういうとゴブリンを自分の前のテーブルに座るように指示した。


「そんな、滅相もない。オレはここで。」


ゴブリンは慌てて遠慮し、手を地面につき土下座しようとした。


「ばか、何やってる。目立ちたくないといってるだろ。」


チミは声を潜めながら言った。


ゴブリンは主人の意外な言葉に驚きながらも恐る恐る席につく。


席についたとたん、叱責されるのではないかという恐怖があった。


以前、主人の言葉を鵜呑みにして、余興として殺されてしまった同胞がいたのだ。


「鵜呑みにするやつがいるかばか。遠慮しろ。」


チミは同胞の亡骸を見ながら、そういって笑っていた。


「おい、ゴブオ、適当になんか注文しろ。」


チミはゴブリンの名前など知らなかった。


適当に名前をつけてよんでいた。


「え!?」


ゴブオはチミの意外な言葉に驚く。


普段は水と最低限度の食事しか与えられない。


「お、オレも食っていいんですか?」


「ああ、普通の冒険者のようにふるまえ。」


普通の冒険者といわれても意味がわからなかったが、まともな食事などほとんど食べたことがなかった。


ほとんどがチミやチミの女が食べた残飯だった。


ゴブオは嬉々として手をあげて注文をした。


一方、チミは周りの声に聞き耳を立てた。


青竜に関する情報など聞けるとは思っていなかった。


だが、その匂いのようなものがかげればと思っていた。


しかし、予想に反して、青竜のうわさはあちこちでされていた。


「刑将様が青竜様に戦いを挑んで氷漬けにされたらしいな。」


「あの刑将様がいとも簡単に。やはり四神様は化物だ。」


「刑将様が青竜様の怒りを買って、兵の半数を氷漬けにされたらしい。」


「青竜様は盲目だが、とんでもない美女らしいが、ぜひ一度見てみたいもんだ。」


「オレは実際見かけたぞ。あれは竜というより聖女様だ。」


そんな声があちこちから聞こえてきた。


(どうやら刑将のところに青竜がいるというのは本当らしいな。)


チミは立ち上がり、実際に青竜を見たという冒険者のグループに近づく。


「オレも青竜、いや青竜様に興味があってな。どんな人だった? 話を聞かせてくれ。」


チミはそう言いながら、テーブルに銀貨を広げる。


「おお! こんなに奢ってくれるのか! だったらいいぜ。あれはまさに聖女様だよ!」


ドワーフの戦士が興奮したようにいった。


「へえ。青竜様は女なのか? しかもそんなに美人なのか?」


チミは青竜が美女と聞いて、さらに興味をもった。


「ああ、とんでもない美人だよ。普段はなぜか目を隠すようなバンダナをされていることが多いんだが、あれはおそらく美しさを隠すためだな。ぜひ、一度、お相手願いたいもんだぜ。」


「ばか! おそろしいことをいうんじゃねえ!」


ドワーフとその仲間たちは上機嫌で笑っていた。


「で、その青竜様はまだ、刑将様のところにいるのか?」


「さあ? どうかな。なんでもなんとかっていう異世界人の傭兵のところにいるらしいが。」


(異世界人の傭兵?)


それを聞いてチミは悪い予感がした。


「異世界人の傭兵って、なんてやつだ?」


チミは冒険者たちにさらに聞いた。


「あー、思い出した。ブラック勇者ってよばれたやつだよ。」


冒険者の一人がこたえた。


「そうだ、そうだ。死んだとか央国のほうにいったとかいわれてたが、央国にいってたらしいな。」


(ブラック、アビか!? なぜ、あいつが青竜と一緒に!? 面倒なことになった。)


「あ、ああ、ブラックか。聞いたことがあるな。で、そのブラックはどこに行ったんだ?」


チミは平静を装いながらきいた。


「ああ、なんでも刑将様の仕事で災王のエリアに行ってるみたいだぜ。どんな仕事かは知らねえけどな。」


(なんだと!? クソ、行き違いか!)


「いろいろ聞かせてもらって礼をいう。」


チミはそういうと席をたち、ゴブオのもとにもどった。


ちょうど、その時、ゴブオの眼の前に料理が並べられた。


(ああ! 久しぶりのまともなメシだ!)


ゴブオは嬉々として出された肉にかぶりつこうとした。


「おい、ゴブオ、引き返すぞ! 用意しろ。」


そのとき、チミが戻ってきていった。


「え? でもまだ、一口も・・・・」


「二度言わせるな。行くぞ。というか、お前、どんだけ注文したんだ。この金どうするんだ。しばらく飯抜きだからな。」


「え!?」


ゴブオはチミの言葉にかたまった。


チミはゴブオを捨て置いて店を出て行こうとした。


命令に逆らえば、首輪の魔法が発動し、自分の首は引きちぎられる。


ゴブオはできるだけ、食べ物をポケットや袋に詰め込んでチミの後を追った。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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