第191話 決勝
「核爆弾が解析されただと? くわしく話せ」
アマンは思わず乗り出して、死翼に問いただした。
「いや、正確にいうと、やつが触れたのは、ほんの短い間だった。あれは、すばらしくも恐ろしい兵器だな。異世界の人間たちというのは、なんとすばらしくも恐ろしいものを作ったのだ」
死翼は、興奮気味に話し始めた。
「簡単にいうと、あれは物質の中にある質量のエネルギーを、あり得ない速度で解放する装置だ。しかも、その仕掛けを再現すれば、起動自体は魔力で簡単に発動できる」
「で、お前はつくったのか。それはどこにある?」
クロもたちあがって、死翼に近づく。
「いや、再現して、感動のあまり、姒鯀のやつにも見せてやったのだ。しかし、姒鯀のやつが解析まで始めたので、あわてて消滅させたのだ。しかし、後から考えたのだが、ひょっとしたら、すでに解析されてしまったかも……」
バキィ。
クロが再び、死翼を殴り飛ばした。
死翼はふたたび、椅子から転がり落ちた。
「ぐわあ! 何をする!」
「それはこちらのセリフだ。あれは本来、精神体のお前たちには脅威じゃないかもしれないが、この世のすべてのものの脅威になる。再現されたら、どうする!」
「フッ、それなら安心しろ。私が改良を施した。物質だけでなく、精神体も破壊できるように、ナノマ」
バキィ。
クロが再び、死翼の顔面を蹴り飛ばす。
(ナノマ……? 何をいおうとしたのだ)
その瞬間、クロの眼が光った。
その場にいたアマン、リユウ、オウライに、めまいが走った。
(悪いな。それについては、お前たちにはまだ早い。アマン、お前ならいつか、自分でみつけるかもしれないが)
クロは人間たちの記憶操作をして、死翼をにらみつける。
「今、なんといったのだ? よく聞こえなかったが」
アマンは再度、死翼に確認をした。
「ああ、物質だけでなく、精神体も破壊できるように改良したのだ。あれなら、私たち悪魔族でも、まともにくらえば消滅するぞ」
死翼は、クロのほうを見ながら答えた。
アマンは、そのやりとりになにか違和感を感じながらも、それ以上の発言に戦慄した。
「それは……あなたがた、四凶や四神ですらも滅ぶ兵器になった、ということか?」
アマンは死翼を、さらに追及した。
「ああ。お前ら四神は死なないだろうが、あれは私たち四凶と呼ばれる存在でも、少なくとも自我の連続性はなくなるという意味では、死ぬな。まともに喰らえば、と言う話だがね」
「もっとも、今のお前の命を奪うのに、そんなすごい兵器はいらないけどな」
クロは再び死翼を蹴り飛ばして、いった。
「やめて! やめて! 暴力反対! さあ、知ってる内容は全て話したぞ! 私を解放しろ!」
死翼はのたうちまわりながら、叫んだ。
「本来なら殺してしまいたいが、こいつを殺したら、新しい四凶が生まれるかもしれないのであれば、そうもいかん。とりあえずは閉じ込めておいて、その後の対策は、クロ様たちのお力も借りるとして、あとで考えよう。他にも気になることはある。いちど会場にもどろう」
アマンはそう言って、取調室からでていこうとした。
「おい、まて! 話したら解放するといったではないか! 約束がちがうぞ!」
「何をいってる。そんな約束はしていない。あなたに、そんな交渉権があると思わないことだ。安心しろ、今後はあなたも、ただの人だ。最低限度の生活は保障する。大人しくしていれば、もう暴力は振るわん。そちらのクロ様は知らんが」
それだけいうと、アマンは出ていった。
「おい、クロ! 私をここから連れ出してくれ!」
死翼は、クロの足に縋りついた。
「はなせ。お前のことは、また考えるよ。いつもいつも、厄介なことをふやしやがって」
クロは死翼を再び足蹴にして、アマンの後についていった。
◇
「それでは、試合開始です!」
凍子の合図で、決勝戦、ジョカ対ホウコウの戦いが始まった。
ワタシたちはそれを、ガリョウのモニター越しで見ている。
試合が始まると同時に、ホウコウは魔術で大きく斜め上空に飛び上がった。
近接戦闘では、ジョカの【絶影】を防げないという判断だろう。
【銃魔】。
ホウコウは、筒状の羽の生えた砲台を、地上に向けてはなった。
当たり前のように、ジョカも飛翔する。
「こうかしら」
【銃魔】。
ジョカもホウコウのスキルをコピーし、迎撃をした。
「おおおっと! ジョカ選手、まったくおなじ戦術をつかった!」
凍子のアナウンスがこだまする。
双方の周囲を、銃魔が飛び回る。
『四霊法術・コード・霊亀』
ジョカの周りに複数、重階層のシールドが発生し、ホウコウの攻撃を遮断する。
さらに、遮断された魔力が分解され、ジョカの体に吸収されていく。
(そんな高等防御術もつかえるのか)
(いや、よく考えたら、彼女自身、霊教の大司教だ。もともと、自身でも法術を極めているのかもしれない)
ホウコウも、結界で攻撃を回避する。
(こちらは防御するだけ、相手はさらに吸収するか)
(これでは、いずれこちらが負けるか)
しかし、気が付く。
身体に、何かの糸がまとわりつきはじめている。
(これは、エルフの封魔術か! まずい!)
【剣魔】。
銃魔の形態が円盤のような形態に変形し、体にまとわりつく糸を切り裂いた。
「降参しなさい。あなたなら、勝負はみえたってわかるでしょ」
ジョカが、降伏勧告を行った。
「まだまだですよ」
そう言いながら、ホウコウは魔力を錬成した。
「実力の差は、知恵で埋めさせていただきます」
『水霧』。
ホウコウの身体を中心に、濃霧が発生した。
と同時に、モニターが荒れ、黒くなる。
「ガリョウ、これは?」
「先程の術式は、水の基本的な術式ですが。ホウコウはおそらく、独自の改良を加えるか、独自スキルを上乗せして、魔力感知を妨害しましたね」
「て、ことは、もう見えない?」
「いえ。おそらく射程距離は、広くはないでしょう。カメラを切り替えます」
ガリョウがそう言うと、応援席三階からのカメラに切り替わった。
会場の中心は濃霧で覆われていて、その様子はみえない。
「あんたのスキル、ほんとに便利ね」
ワタシはあらためて、ガリョウに感心した。
「いえ」
ガリョウがそう言った、そのとき、
闘技場を中心に、爆発がおこった。
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