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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

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第190話 尋問室

「準決勝第二試合はコン選手とホウコウ選手の予定でしたが、コン選手、試合放棄のため、ホウコウ選手の不戦勝となります」


会場がざわつくのが、画面上で見えた。


「普通に考えたら、正体がバレそうになったので逃げた、というところだけど」


ワタシはモニターの中の会場のざわつきを見ながら言った。


「よって、予定を変更して、これより決勝戦を行います! 決勝戦は、ジョカ選手対ホウコウ選手です!」


歓声に包まれながら、ジョカとホウコウが入場してくる。


ジョカは相変わらず、ワンピースのスカート姿で、とても戦いに向かう姿には見えない。


一方のホウコウは、戦闘タイプの魔道士スタイル。


解析しなくても、魔法耐性と物理耐性があがる術式の紋章が埋め込んであるのがわかる。


「さあ、泣いても笑っても、これが最後の戦い。戦いの前に、両者にコメントを求めたいと思います! まずはジョカ選手! ひとことどうぞ!」


「そうね。この人を倒したら、私の力があなたたちにどれくらい通じるのか、早くためしてみたいわ」


拡声魔法によって、会場中にジョカの声がつたわる。


これから戦うホウコウのことなど、全く眼中にないという感じだ。


「おやおや、いいのかなあ! そんなこと言って、戦いの相手はホウコウ選手だぞ! 油断していたら、足元をすくわれるぞ!」


凍子が、その挑発を流しながら答えた。


「じゃあ! ホウコウ選手、どうですか!?」


凍子はホウコウに手をかざす。


「全力を尽くします」


ホウコウは、短くシンプルに答えた。


「それでは、両者、位置についてください! まもなく試合開始です!」


◇


一方、グルメイベント警備室。


「まさか、閣下がこんなところにおいでとは」


警備隊長がアマンを迎えた。


よこには護衛として、オウライとリユウ、それにクロがならんでいる。


「それで、その食い逃げおよび、婦女暴行未遂犯はどうしている?」


「一貫して、黙秘を貫いています。身分を示すものもなく、その被害者の女性の行方も知れず。数日反省させて解放しようかと思っていたのですが、まさか閣下がお越しになるほどの重要人物だったとは」


「まあ、そんなところだ」


そう言いながら、アマンたちは取調室の前に案内される。


「私たち以外は、中にはだれもいれないように」


アマンはそう言いながら、部屋にはいる。


取調室にはいると、一人の中年のおとこが、机に頬杖をついて居眠りをしていた。


何者かが部屋に入ってきたことに気が付き、こちらをちらりと見る。


「げええ! クロ!」


その中にクロをみつけ、悲鳴をあげた。


「クロ様、ほんとうにこれがその、四凶、死翼様なのですか?」


アマンは、どう見ても人間の男になっている死翼をみて、クロに再度確認をした。


「人化の法という秘術があってね。魔族を人間にする秘術がある。ふつうは上位魔神が下位魔族に、罰として行うことが多いのだけど。まさか、異世界の食べ物を食べに会場に潜り込むために、自分で自分にかけるとは思わなかったよ」


クロが、冷たい目線を死翼に浴びせた。


「では、死翼様、いや、死翼殿は、完全に人間になっていると」


「ああ。普通は上位魔神が下位悪魔の本体を封印するんだけど、下位悪魔にわざと封印させたか、本体をどこかに置いてきたかだと思う。なお、今、こいつを殺すと、人間として死ぬ」


それを聞いて、死翼の顔が青くなる。


「でも、こいつを殺したら、多分、新しい四凶が誕生するかもしれない。それがコイツ以上に厄介だったら、めんどうなことになるけどね」


クロはそう言いながら、椅子にすわる。


「なるほど。では、死翼殿、貴殿を殺すつもりはないが、死ぬまで檻に入れておくことはできる。それがいやなら、貴殿の知っていることを全部話してほしい」


アマンはそう言いながら、死翼の前にすわった。


「わかった。私も、もうここに用はない。はやく離れたいからな」


死翼は、クロのほうをチラチラとみながら言った。


「では、単刀直入にきくが。我々はビエムという男を探している。やつはとても危険なやつだ。どこにいる?」


アマンは死翼を真正面に見ながら言った。


「私をそんな風に睨めた人間は、お前で三人目だ。なかなか、気に入ったぞ」


死翼は笑って言った。


「オウライ」


アマンは短くいった。


するとその瞬間、オウライが死翼に近づき、拳が死翼の顔面にめり込んだ。


「ぐおおおおお!」


死翼は椅子から転がり落ち、のたうち回る。


「死翼殿。私は世間話をしに来たのではない。質問には短く的確に答えていただきたい。我々人間には、悪魔とちがって、悠久の時があるわけではないのだ」


アマンは冷たくいった。


「知らない。気がついたら、いなくなっていた。おそらく、姒鯀というやつと一緒だ。どこにいったかは知らない」


死翼は鼻血を出しながら答えた。


リユウが近づき、回復魔法で鼻血をとめた。


「そうそう。そうやって素直に話していただくのが、お互いのためだ。しかし、その話はすでにクロ様より聞いている。では、質問を変えよう。その姒鯀というやつについて、あなたが知っていることを、出来る限り詳しく話してほしい」


「やつは、南方で力をつけてきた魔族だ。とはいっても、私たちのような純粋な悪魔じゃない。受肉した悪魔族と、ダークエルフのハーフだ」


「やつの目的は? どんな能力をもっている?」


「正直言うと、やつの目的はあまり知らない。本当だ。私が異世界のものを研究しているのは知っているな。それで、やつのほうから私に近づいてきたのだ。研究対象をいろいろ提供してくれてな。それで、今回は私がそのクロに追われて、彼に匿ってほしいと頼んだわけだが」


そう言って、死翼はクロのほうをみた。


「やつは、死者を一時的によみがえらせることができる。そして、自分の手ごまにつかうんだ。それが、やつの能力だ」


それを聞いて、アマンは一瞬、目をとじた。


「面白い能力だ。しかし、一時的とはいえ、死者をよみがえらせるなど、なにか制限があるとおもうが」


「まず、死体がいるらしい。それも、できるだけ傷がついていないものだ。病死したものがベストだと言っていたな。だから、やつは墓泥棒にわざわざ金を払ってまで、死体を集めていた。そして、死者は、自分が死ぬ直前の記憶がなくなるのだ。そして、操られるといっても、細かい指示はできない。おおよその目的が与えられるが、それに疑問も持たずに動くのだ。たとえそれが、生前の自分であればありえないものであっても、だ」


死翼は、おびえながらいった。


「姒鯀の目的は知らないといったが、思い当たることはないか? なんでもいい。金とか、権力とか」


「ああ。目的といえるか、わからないが。やつは、ダークエルフを作った邪神を超える力を、手にしたいらしい」


「ダークエルフを作った邪神だと?」


アマンは驚いた。


「檮杌(とうこつ)と呼ばれる邪神だな」


死翼が笑っていった。


「だが、あれは伝説上の邪神で、実在が確認されていないが」


アマンがつぶやく。


「あれは凍子だよ。ダークエルフを作ったと言われてるのは、凍子だよ。実際には、つくったんじゃないけど、そういうことになってる」


横で聞いていたクロがいった。


「そ、そうなのですか?」


今度は、エルフのリユウが驚いた。


「私が各地の遺跡や書物を調べたところ、ダークエルフが邪神の呪いを受けたというのは、人為的なうわさに過ぎない可能性が高い、ということがわかったのですが。クロ様や死翼殿は、真実をご存じなのですか」


アマンも本来は自分の力で真実を調べたかったが、こうなっては止むをえず聞いた。


「もともと、ダークエルフなんていう種族はいなかったんだよ」


クロはリユウを見ながら話した。


「しかし、エルフの中に、たまに肌や髪が黒い子が生まれることがあった。しかし、その子たちは大人になることなく、必ず短命で死んだ。たぶん、そういう突然変異だったんだろう。しかし、もともと子供がすくないエルフにとって、ようやく生まれた子供が短命におわるのは、悲劇でしかなかった」


「ええ、そうです。基本的にエルフは、めったに子をなさないくらいなので」


リユウがつづけた。


「そんなとき、ある黒い子供を授かったエルフの夫婦が、神に祈ったんだ。自分たちの子を助けてくださいと。それを偶然聞いた凍子が、気まぐれに子供の命を救い、それ以来、黒い子供も短命ではなくなったんだ。それからも黒いエルフは生まれることはあったが、みな他のエルフと同じように、大人になれた」


「そんな。それでは、ダークエルフというのは?」


リユウが驚きながら、クロの話をきいた。


「そう。もともと、ダークエルフなんて種族はいなかった。たんに、肌の色が黒いエルフだった」


クロが、その続きを話す。


「しかし、エルフというのは長命で魔力が高く、強力な種族だ。だから、その発展を恐れた誰かが、こんなうわさを流した。肌の黒いエルフは、邪神と契約した一族の末裔で、呪われた種族だと」


「そ、そんな。私たちは子供の時からずっと、それを聞かされていました」


リユウは、信じられないという表情をする。


「エルフは強いからね。様々な種族も、それにのっかった。というより、それを一番信じたのは、誇り高いエルフ自身だった。純血のエルフをハイエルフと称するようになって、ますます肌の黒い、つまりダークエルフを迫害し。それでエルフは、自分たちで同胞たちを虐殺し、いがみ合うようになった」


「しかし、今の話では、邪神……いえ、凍子様は、エルフの救世主では……」


「そうだよ。あいつは優しいんだよ。いい子だろ。まあ、そのあと、自分が邪神だと言われても、訂正すらしなかったんだけどね」


「では、その姒鯀には、その話をしなかったのですか?」


リユウは死翼をみた。


「したさ。凍子はお前たちの仇なんかじゃない、むしろ救世主だと。しかし、聞き入れなかったよ。たとえそうだとしても、アイツの行動がきっかけで、俺たちは苦しむことになったと」


「そんな」


リユウは、唖然とした。


「では、姒鯀の目的は、凍子様の命か?」


アマンは、死翼を再びにらんだ。


「だろうね。でも、あいつが凍子を殺せるわけがないし、実際なにを企んでるかは知らない。……あ、あと、言い忘れたが。やつにはたぶん、核爆弾を解析されてしまったよ」


その一言に、全員が凍り付いた。



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