第188話 クロと凍子
「妾はまけたのか・・・」
徐姫が目を覚ます。
するとそこにはクロがコンの前に立っていた。
「ちょっとクロ!試合はおわったけどどういうつもりよ!」
凍子がクロの真意を測りかねて苦情をいれる。
「あんな結界、並のものにはつくれないよ。お前一体なにものだ!?」
そういいながら、クロはコンに向かって視線を媒介に魔力を放つ。
しかし、半球状の結界が現れて、魔力を遮断した。
「凍子!おまえどういうつもりだ!邪魔すんな!」
クロは凍子に向かって叫んだ。
凍子はアナウンスをきって、クロの前にたった。
「邪魔すんな、はこっちのセリフだよ。試合に乱入されたら私の顔が潰れるじゃないか。」
凍子は腕組みをして文句をいった。
「ああ、悪かった。しかし、事情がある。こいつは例の死翼の仲間の姒鯀というやつらしい。例のビエムの居場所をはかさないといけない。」
「なにか証拠はあるの?」
凍子はコンをちらりとみる。
コンは腕組みをして黙って直立している。
「今のところはない。だから正体をあばいてやるんだよ。」
クロはコンを見ながら言った。
「だったらだめだ。少なくともこの大会中は。」
凍子はクロに向かって言った。
「おいおい、そんなこと言ってる場合かよ。もともとこの大会というか、このイベントは死翼のやつを捕まえるのが目的なんだ。あー、言い忘れたが、死翼のやつは捕まえた。しかし、例のビエムというやつは姒鯀というやつとともに消えたそうだ。で、その姒鯀がおそらくこいつだ。」
「まあ、それはそれ、これはこれってやつだよ。私も審判をしてくれと言われたんだから、この大会が終わるまでは、選手を守らないとね。私が契約を反故にするようなやつだと思われても困る。」
二人のやりとりは観衆には聞こえない。
ただし、四凶の凍子と四神のクロがなにやら言い争いをしているというだけで、観客には緊張が走った。
「アオ様、クロ様と凍子は何をはなしているんでしょう。」
貴賓席のジョイエルはアオに様子をうかがう。
「んー。クロはあのコンというのが例の死翼の共犯者だと思ってて、正体を暴こうとしているみたいね。」
アオは難しい顔をしてこたえる。
「ここから聞こえるんですか?」
ジョイエルは信じられないという顔をする。
「聞こうと思えば聞こえるけど、これは魔力感知だよ。」
そういってアオはふたたび二人のやりとりをみる。
まわりの人間にはなにか言い争っているくらいにしかわからなかった。
「とにかく、大会がおわるまでは、私も選手をまもる役目があるからね。いくらクロでもゆずれないよ。」
「ちからづくでもか?」
クロの眼が細くなる。
「そうだよ。」
一方、凍子も真顔になった。
「もし、どうしても、というなら・・・」
凍子が声を落とす。
「いうなら?」
クロが息をすった。
「泣くぞ。」
凍子が半泣きでいった。
「う」
それを見てクロはおもわずつまる。
「それだけじゃない。今ここでこのマイクで、お前に襲われて、レ〇プされたというぞ。」
「まて、きたないぞ、お前!完全にデマだろうが!」
「たしかにそうだね。でも、この場でいってもどっちを信じるかは観客しだいだね。」
凍子は薄ら笑いを浮かべる。
(これだからこいつは苦手なんだ!私が力づくでヤッたなんてうわさが広がるのはこまる!観客全員に誘惑と記憶改竄をかけてもいいが、やってもないことでなぜ、そこまで私がしないといけないのだ!)
クロはいらつきながら凍子をみる。
しかし、クロは凍子には弱いのだ。
「わかったよ。私の負けだ。大会がおわったらすぐにそいつの化けの皮を暴いてやるからな。」
クロはそういって貴賓席に向かって飛翔した。
「なんなのだ。一体。」
徐姫はその様子を唖然と見上げた。
「えー、みなさまご心配をおかけしました!玄武竜クロがコン選手の不正を疑いましたが、疑いは晴れました!」
凍子のその声にふたたび拍手と歓声が巻き起こった。
「それでは、次は休憩をはさんで準決勝になります!それではまたのちほど!」
凍子のアナウンスで休憩に入った。
◇
ホウコウの控室-
ホウコウは坐禅を組み、魔力を錬成している。
「気をつけろ、ホウコウ。あのコンというやつ只者ではない。」
アマンは壁を背にしながら、ホウコウに話しかけた。
「ああ、しかし、大丈夫だ。安心してみていてくれ。」
ホウコウは目を閉じたまま答えた。
「ところで、今更妙なことを聞くようだが、君がこんなイベントに興味があったとは意外だった。優勝者には究姫様が力を授けてくださるとのことだが、それが目的か?あるいは、魔術をもとめるものとして、やはり間近で四神や四凶をみたかったか。」
「わからない。その両方かも。魔術を極めるものなら、彼らと戦いたいのは当然だからね。」
「フ、それはそうだな。邪魔をして悪かったな。武運を祈る。」
アマンはホウコウに手を振って控室をでた。
出口に一人の臣下が待っていた。
「閣下、緊急の来客でございます。」
「緊急?何者だ。」
「それが……」
アマンはその名を聞いて顔色を変えた。
(なぜ私に?いや、聞いてみねばわからんか。)
「わかった、私もよく知っている方々だ。すぐに会おう。」
アマンは妙な胸騒ぎを覚えながら来客との面談に臨んだ。
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