第174話 魔導武術大会
アマンは会議室で幹部たちに、キョウから出された異世界グルメイベントの案を見せた。
「異世界グルメ王?」
企画書をみて、リユウが素っ頓狂な声を上げる。
「協賛が、玄武竜クロ様に、青竜アオ様、それに究姫様に凍子様ですって!?」
カギも目をうたがった。
「目的は、例の異世界の兵器を持ち去り起爆させた犯人、革命軍の首謀者ビエムをつれさった四凶、死翼をさそうことらしい。」
アマンはため息をつきながら答えた。
「こんな手で来るわけがない! というか、あの連中は馬鹿か!」
ジユンが企画書を投げ捨てながら言った。
「ちょっとジユンニイ! 聞こえてたらどうするんだ! ころされるぞ!」
エイサイは顔を青くしていった。
「正直いうと、私もふざけた話だと思う。しかし、四人の神々は必ず死翼はくると読んでいる。それになにより、我々に拒否権はない。」
アマンは諦めたように笑みを浮かべていった。
「ま、まあ、たしかにあの方々が四人もやるといわれて、逆らうことなどできませんね。」
カギも諦めたようにいった。
「単純に逆らえないというだけの問題ではない。好き勝手されるよりは、むしろ我々の管理下でやってもらったほうがましだ。ならば、いっそこれを利用しない手はない。死翼の件はクロ様たちに任せるとして、我々はこれを機に戦力増加をはかろうとおもう。」
「戦力増加だと?」
ジユンがあごに指をあてながら、隻眼を細めた。
「まず、今回のイベントでは種族をこえ、魔族などもあつめるらしい。それもまた、死翼をうらやましがらせる餌とのことだ。」
「治安は大丈夫なのか?」
ジユンが驚く。
「そこは問題ない。クロ様たちが厳重に注意し、暴力行為をするものは誰であろうと厳罰に処すとのことだ。魔族対策は問題ない。あの方々に逆らえるものなどおるまい。」
「それで、戦力増加にどうつながるのだ?」
「我々も協力するかわりに、神々にも協力ねがう。魔導武術大会を開いていただく。そして優勝者には、四神様、四凶様と戦う栄誉をいただく。」
「なんですと!」
アマンの後ろに控えていたオウライが、おもわず立ち上がる。
「そうだ。あの方々と戦えるとあれば、多くの猛者や魔導士たちがあつまるに違いない。彼らをわが軍に引き入れ、戦力アップをはかるのだ。むろん、魔族の連中には、我々の強さを見せつけなければならないがな。なお、大会には私も出場するつもりだが、諸君らの活躍も期待するぞ。」
「アマン様も!?」
黙って聞いていたエイサイも声をあげた。
「アビのところにいた、ビゼンやヨクトといった連中と戦えないのが残念だな。」
ジユンも不敵にわらった。
(アビか。殿下はなんらかの方法で彼女と連絡をとっているようだがな。彼女が私の命を狙っているというのは、杞憂だったかもしれんな。)
(いまは彼女より、ショウだ。さて、やつはどうでるか。)
◇
ショウは愛妾シンと酒を飲んでいた。
しかし、胸の奥には、何かがつかえていた。
もちろん、シンとクロの関係についてである。
ショウは意を決して、彼女に聞いてみることにした。
「シンよ。少し聞いたが、お前は幼いころ、あの玄武竜クロ様に助けられたという。本当か。」
「ええ、本当ですよ。」
シンは屈託のない笑顔で答える。
「興味深い話だな。どんな状況で、あのクロ様とご縁ができたのだ。詳しく話してはくれないか?」
「いいですよ。あれは私が子供のころ……」
シンは、幼いころ魔獣に襲われていたところ、偶然にクロに出会ったこと。
その魔獣をクロが追い払ったこと。
それがきっかけでクロと交流がはじまり、いろいろな場所につれていってもらったことを話した。
「雲のはるか上空につれていってもらったり、見たこともないような幻想的な風景を見せていただいたり……」
シンは幼いころの記憶を振り返る。
ショウはその様子を見ながら、複雑な思いにかられていた。
(自分で聞いておきながら嫉妬するとは、我ながら器量の小ささがいやになる。)
(そうだ。これは幼きころの話にすぎん。)
ショウは自分にそう言い聞かせた。
「そういえば、最近はクロ様をお見かけしませんが、次はいつこられるのでしょうか? 女官たちも楽しみにしておりまして。」
シンは無邪気に尋ねた。
しかしショウは、自分の中に黒い、だが情けない嫉妬が込み上げてくるのを、抑えるので必死だった。
そして、まためまいがおこり、思わずよろめく。
「ショウ様!?」
シンがおもわずショウを支えた。
「すまん、大丈夫だ。すこしよろめいただけだ。」
ショウは呼吸を整える。
「今日は、もうお休みになられては……。」
「いや、今夜はお前と……」
ショウはシンに手をとられながら、ベッドに向かった。
しかし、そうはいいながらも、体は睡眠をもとめた。
「わかりました。わたしがおそばにいますから。」
「ああ、すまん……」
そして、ショウはひそかに決意をする。
(たとえ勝てなくとも、クロとは決着をつけねばならん。一人の男として。)
ショウはシンに抱かれながら、そのまま眠りについた。
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