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冒険者ギルドで死亡扱いされた私が、神と邪神に愛され最強で最高のダークヒロインになる。  作者: 黒木菫
正義愛鬱編

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第166話 神々に翻弄されるものたち

「ふむ……」


アオは刑将の居城の前に降り立った。


(傭兵団のみんなはここにいるみたいだけど、アビとヨクトとビゼンはいないようね)


「おい、そこの人間、何の用だ!」


門番の二体の鬼がアオに絡んできた。


「ここにアビという子が来ているでしょう。私はその子の仲間のアオよ。彼女は今いないみたいだけど、中で待たせてもらえないかしら」


鬼たちは顔を見合わせた。


「ああ、確かにアビならここに来てる。ちょっと待ってろ、確認してくる」


一体がアビの仲間たちの兵舎へ向かった。


◇


兵舎の入り口に立っていた二人の女に声をかけた。


金髪の女と、黒髪の少女だった。


「おい、そこの女ども。アオとかいう女が訪ねてきたが、お前たちの仲間か!?」


「アオ?そんなやつ知らないなあ」


金髪が答えた。


「なに!?そうなのか!」


「ああ、そんな奴は知らない」


「あの女、なめやがって、ぶっ殺してやる!」


鬼はいきり立って出口へ戻った。


「究姫様、今の鬼、何か言っていましたか?」


リョーカが走って様子を見に来た。


「いや、大したことはないよ。なあ、凍子」


「私は知らないよ」


(絶対に何かあったな)


リョーカは危険を感じ取ったが、アオもいない。どうしようもなかった。


◇


「おい、女!オレを騙そうとしやがったな!」


鬼はアオに棍棒を向けた。


「何かの間違いよ。もう一回、確認に行ってきなさいな。坊や」


アオは手を払うように言った。


「この女、ぶっ殺してやる!」


鬼がアオに触れようとした瞬間、二体の鬼が氷漬けになった。


「敵襲か!」


魔族たちが騒ぎ出す。


(やれやれ)


アオは目隠しを外した。


霊力が目線を媒介に放たれる。アオの視界に入ったものが、次々と凍りついていった。


居城の奥で、刑将はさとった。


とんでもないものが、城に来たのだと。


◇


「おまえら!戦闘態勢に入れ!とんでもないやつが来た!」


刑将の言葉に、魔族の戦士たちに緊張が走った。


しかし、何も起きない。


いや、すでに起きていた。


魔族の戦士たちは何が起きたかもわからぬまま、みな氷の柱になっていた。


(なんだ、何が起こっている!?)


その瞬間、突風が来た。


窓が割れ、衝撃波で配下の魔族が吹き飛ぶ。


(何が来たのだ!?)


気がつくと、目の前に一人の女がいた。


青い髪の、美しい女だった。


「あなたがここの責任者ね。まったく、どういう教育をしているのかしら」


「ア、アンタはいったい!?」


刑将は恐る恐るアオに尋ねた。


刑将は強者だ。それゆえにわかった。


目の前にいるのはおそらく——禁忌そのものだ。


かつてあった魔王ですら、こんなことはできなかった。


「私はアビの仲間のアオよ。アビがここに来ていると思ったから待たせてくれと言っただけで、あなたの配下の連中が襲いかかってきたから、身を守らざるを得なくなったのよ」


(アオ様!これが青竜様か!というか、どう見ても過剰防衛だろ!!)


アオの視線に入ったものはみな氷の柱になっていた。


「あ、アビ殿なら任務をお願いしておりますが、傭兵団の皆さんもここにいらっしゃいます!すぐにご案内します!いや、私が直接ご案内します!!」


「いいわよ。ここの中身はもうわかったから。一言言いたかっただけだから」


アオはそう言うと、次の瞬間には消えていた。


「……あれが青竜様か」


刑将は凍り付いた配下を眺めながら呟いた。


「あの方と行動をともにしているとは…アビとは、一体何者なのだ」


◇


「あ、アオ様、お帰りなさいませ」


リョーカや兵たちが礼をする。


「やあ、アオ」


凍子が声をかけた。


それでアオはすべてを悟った。


「あなたがここにいるということは、究姫もいるよね」


すると入り口の方から、アビと究姫が並んで歩いてきた。


「なんか、入り口付近の魔物が全員凍ってるんだけど‥‥‥アオ、あんた何か知らない?」


アビがジト目でアオを見る。


「私がやったのよ。そこの究姫のせいよ」


「またあんたか……」


ワタシはうんざりした目で究姫を見た。


「ひどいじゃない!なんで私なのよ!私はずっとみんなといたわよ!そこのリョーカも証人よ!」


「おかえり、アオ。何かわかった?」


こいつの相手をしていても仕方がない。ワタシは究姫を無視してアオに話を聞いた。とにかく話を進めないと。


「わたしを無視するんじゃあない。あんた、偉くなったわねえ」


うるさいから一応話を聞くことにした。


◇


究姫と凍子の持ってきた情報は、想像以上に大きかった。


核兵器を起動したのは霊教会の幹部ビエム。そして今、そいつは死翼というやつに匿われている。


「死翼のやつが、核爆弾を起爆させた神使をかくまったんだって。クロやアオたちから隠してくれと言ってきたんだよ」


凍子がとんでもない情報をあっさり吐いた。


(でかした!)


とは思ったものの‥‥‥こいつら、あっさり味方を売るんだな。


「これで、チュウエイの時にちょっと嘘をついた件はチャラでいいな。悪魔は借りは作らない」


究姫が悪そうな顔をした。


まあ、実際悪いわけだが。


「一つ聞いても?」


「なに?」


「その死翼はどこにいるの?なんであんたは仲間を売るの?」


「質問が二つになってるわよ」


究姫が揚げ足を取る。


「こいつらは四凶なんて呼ばれてるけど、この二人はともかく、あとの連中はそんなに仲良くないからね。別に仲間じゃないよ」


代わりにアオが教えてくれた。


「じゃあ、これで一つになったわね。その死翼はどこにいるの?」


「知らないよ」


究姫はあっさり言った。


あああ、使えない。


「なんなら、匿うとだまして、そいつを捕まえればよかったのに」


「お前、悪いことを考えるな。そんなこと悪魔でも思いつかないぞ」


「アビ、悪くなった。本当に悪くなった」


凍子がうなずく。


悪魔の王二人にワタシが理不尽に呆れられた。


なんなんだ、この人たちは。


アオが究姫を毛嫌いする理由がわかる。四凶と呼ばれる理由もわかる。


こいつらはナチュラルに人様に迷惑をかけるのだ。


初対面の時も右目を要求してきたが、今思えば、彼女なりにワタシにチャンスをくれたのだろう。


チュウエイにスキルを授けたのも、社会の底辺にいた彼にチャンスを与えたつもりだったのかもしれない。


しかし、その後の責任など考えず、やりっぱなしなわけだ。


おそらく死翼というやつも同じタイプだ。そうとうまずい。


「それはアマンの耳には入ってるの?」


ワタシは究姫と凍子に聞いた。


「死翼の話じゃ、おそらくクロがアマンにもショウにも伝えてるだろうって話だ」


「あいつ、クロにビビりまくってたね。特にクロにバレたら殺されるから助けてくれって」


凍子が笑った。


「一応聞くけど、クロなら死翼を倒せるみたいな言い方ね」


「というか、あいつが本気になれば、私たちは助からないよ。実際、過去に消滅させられたやつもいるしな」


究姫がちょっと怯えながら言った。


(そうなんだ。こいつらにも弱点はあるのか)


「まあ、クロが究姫や凍子をどうこうすることはたぶんないよ。残念ながら」


アオが残念そうに言った。


「まあ、そういうわけだ。借りは返したぞ。じゃあね」


「またね」


究姫と凍子はそう言うと姿を消した。


なお、究姫とアオのせいで刑将の居城の兵に多数の凍死者が出たわけだが、アオは「あんなゴミ、いくらいても仕方ないでしょ」と切り捨てて終わっていた。


一応、自分に敵意を向けたものだけを凍らせたらしいが、本当に容赦がない。


しかし、ここはそういうところだ。


人類圏ならアオはここまでしなかっただろう。


アオや究姫たちにとっては、人も魔族も等しく弱者だ。


そして、アオはそれぞれの流儀にしたがってるつもりなのだろう。


ホウスウが戦っているのは、人や魔物ではなく、この世界の文化と思想そのものなのだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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