第140話 滅びゆくもの
コウロの居城——
「あの小娘が何を考えている!」
コウロは手に持っていたワイングラスをたたき割った。
ハオがアマンを素通りさせたことに激怒したのである。
「リング!貴様!あの小娘を討伐せよ!」
コウロは控えていた武官リングに対してハオ討伐を命じた。
「ハッ!御意!」
リングはコウロに敬礼し、振り向き、すぐさま準備に入ろうとする。
「しかし、それでは、アマン軍対策はどうなされます?」
文官が挙手してコウロに確認をした。
コウロははっとして、リングの背中に罵声を浴びせた。
「そうだ!とりあえずはアマンのほうだ!お前勝手なことをするな!」
理不尽に叱責されたリングはさすがに渋い顔をした。
「閣下、よろしいでしょうか?」
「なんだ?カンユ。」
「アマン軍は私があたります。ですから、閣下の軍を一部お貸し願いませんか?リング殿はハオの本陣へ行き、旧王都の部隊にアマンの軍を叩けとハオに伝えるのです。」
「うむ、カンユのいうことは一理ある!それぞれの仕事をせよ!」
「ハッ!」
コウロの部下たちはそれぞれ動き始めた。
◇
「父上!」
カンユの息子、ゲンリュウが会議室から出るなり声をかけた。
カンユはコウロが支配する領地の近辺に代々力をもつ豪族である。
立場的には本来は同盟関係であるが、コウロは家臣のごとくカンユを使っていた。
ゲンリュウはそのカンユの息子である。
「ゲンリュウか。わしからも話があった。まずは一旦屋敷に戻るぞ、話はそれからだ。」
ゲンリュウはうなずき、父についていった。
◇
カンユの屋敷にて——
「父上、本当に、アマンと戦うつもりですか?」
屋敷につくなり、ゲンリュウは父に真意をたずねた。
「どういう意味だ?」
「コウロなどもう終わりです。我々がなんでつきあわないといけないでしょうか?」
ゲンリュウは真剣な顔をして父に言った。
「ククク、ハハハハ。」
「なにがおもしろいのですか!」
ゲンリュウは怒りをあらわした。
「いや、すまん。お前も成長したな。わしはアマンと戦うつもりはない。コウロの兵も嫌々金でつきあってるだけだ。わしは兵を説得し、コウロの兵をつれ、そのままアマンの軍に降るつもりだ。」
「なんと!」
「わしは軍勢を率い、ゆっくりとアマンのもとに向かう故、ゲンリュウ、お前は一足先にアマンのもとに行き、わしらは降伏するということ、そして、コウロ軍の作戦や陣容、兵糧の場所をつぶさに伝えるのだ。」
「父上、そのような考えをおもちでしたか。安心しました!それでは私は父上のおっしゃるとおりにいたします。」
ゲンリュウはすぐに準備をしてアマンの陣営に向かった。
◇
一方、リングは南方のハオの陣営に向かった。
「コウロ様の命令である!ハオ、貴様は旧王都の軍勢にアマン軍の後方を攻めるように命令を出せ!」
リングはハオに会うと威圧的にいった。
「ハッ!かしこまりました!ただちにそのようにし、我々もアマン討伐に向かいます!」
ハオは黙ってそれを聞き、コウキが代わってリングに答えた。
「いやにすなおに聞くな。」
リングは思ったことをそのまま口にした。
「われらにコウロ様に反抗する気持ちなどございません。」
コウキは笑みを浮かべてこたえた。
「本当だな、ならば貴様直筆の書面をよこせ。お前たちの使者とともに、俺みずから旧王都に向かってやる。」
「構いませんよ。ハオ様、周鬼宛の命令書を書いていただいてよろしいでしょうか?」
コウキの言葉にハオは黙ってうなずき、その場で命令書をしたためた。
そして、それをリングに渡した。
「たしかに。これなら間違いないだろう。」
リングは命令書を受け取り、周鬼のもとに向かった。
「では、よろしくお願いいたします。」
コウキはリングに頭を下げ、ハオもそれに従った。
◇
「なんだ、あいつはあああああ!」
リングが帰るとハオはみつあみのおさげを振り回して暴れた。
「だから、オレに任せろといったじゃないか。」
暴れるハオをなだめてコウキは答えた。
「なんど消し炭にしてやろうとおもったかわかんない!」
「やめろやめろ。作戦通りだ。お前もよく我慢した。」
コウキはハオをなだめて落ち着かせた。
「して、コウキよ。これからの作戦は?周鬼は大丈夫か?」
イフがコウキのほうを向いて尋ねた。
「あそこには宵喬もいます。うまくやるでしょう。おそらくコウロはアマンに敗れるでしょうが、また逃げ出そうとするでしょう。」
「なるほど、それで、コウロを捕らえるのですね。」
暁喬が確認する。
「いえ、そうではありません。コウロなどどうでもよいです。コウロの領地を一気に奪い去ります。」
「それでは、アマンを——いや、キョウ殿下を敵に回すことにならないか。」
イフが聞いた。
「そこで、旧王都から軍を引くことを条件にコウロの領地を要求するのです。旧王都はここから遠く、さらに復旧も難しく、今の我々がこのまま占領するには手に余ります。アマンにとっても悪い条件ではないはず。」
「アマンがそれを飲まない場合は?」
「そのときは、私が相手をしてやるさ。」
ハオが赤い目を輝かせて答えた。
「最近は相手がいなくて退屈していたからな。」
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