第138話 ロリババア
ジョカ——
ワタシは彼女の名前を呼びそうになる。
見た目は十代前半の少女だ。
だが、ワタシは知っていた。
彼女は見た目通りの年齢ではない。
異世界からの転生者だ。
親友にして、この世界にきてからワタシに生き方を教えてくれた人。
彼女はワタシと別れたあと、西方にいくといっていた。
今考えればあれは霊教会のことだ。
戻ってきていたのか。
しかも名前が「ジョカエル」とは。
なにを考えている。
ワタシは声を出したいのを必死にこらえた。
しかし、彼女の方から意外な言葉が出た。
「殿下、よろしいでしょうか!?」
ジョカエルがキョウに発言の許可を求めた。
カギがキョウの方を向き、キョウはうなずいた。
「発言を許す。」
カギが代わりに答えた。
「実は私は、そちらの護衛、アビ殿との知己でして、挨拶の無礼をお許しいただきたいのですが。」
(そうなのか?)とキョウは目線で合図をおくり、ワタシはうなずいた。
それをみてカギが発言する。
「よかろう、許す。」
カギの発言を聞いて、ジョカが発言した。
「久しぶりね。アビ。元気そうでうれしいわ。」
ワタシもおもわず、笑顔になる。
「こっちこそ、ジョカ……いえ、先生。」
ワタシも挨拶をした。
彼女との旅や冒険を思い出し、いろんな思いがあふれてくる。
「今回は、私は仕事できたから、あまりゆっくり話せないけど、また後でね。」
ジョカはそういって下がった。
◇
休憩時間——
「なんだ、なんだ、あいつはずいぶん親しげだったじゃないか。説明をもとめるぞ!」
キョウがそういって詰め寄ってくる。
「そうよ。わたしにも説明してもらうわよ!」
どこから湧いてきたのかアオまで来た。
彼女にとっては王宮のセキュリティなどなんの意味もないようだ。
(こいつ、ずっと覗いていたのか……)
「話せば長くなるけど、こっちの世界に来て最初の仲間になったひとりが彼女、ジョカよ。そして彼女はワタシにこの世界のことをいろいろ教えてくれたのよ。」
そういいながら、彼女との思い出を懐かしむ。
「ああみえて、年齢は不詳のロリババアよ。ワタシと別れたあと、西の方、つまり霊教国にいくといってたけど。戻ってきていたとはね。」
そうとしかいいようがないので、ワタシは二人に話した。
「でも、あいつ、神使よ。四霊の手下みたいなものよ。」
「そうなの!?」
ワタシはおどろいて、声を上げた。
「いや、でも、ワタシにそんなこといわれてもこまる。彼女と別れたのは、チュウエイと出会う更に前だし。」
(彼女になにがあったんだ?)
(普通に考えたら、霊教に感化されたんだろうけど。)
「でも、ワタシの敵とは限らないし、あのジョイエルみたいに、それなりにうまくやれるかもしれないし。」
ワタシはとっさにジョカを庇った。
「で、あいつはどんなやつだったの?」
キョウは衣服を脱ぎ捨てながら聞いた。
妲姫が几帳面に彼女の脱ぎ捨てた服を畳んでいる。
「なんというか、一見つめたいんだけど、仲間思いで、正義感があって、そして強い人だったよ。」
「ヨウトと同じだね。そういうやつを四霊は利用するんだよ。」
アオがため息をつくようにいった。
「やばいのが、彼女のスキル【写し身】でね。近くにいるもののスキルをコピーできるのよ。」
ワタシはジョカのスキルを二人に教えた。
「なんだ、それは!?強すぎないか!?ワタシはなにもつかえないのに。」
キョウが驚き声をあげた。
「弱点がないわけじゃないけど、こっちの戦力が強いほど、彼女は強くなるのよ。ワタシは練習試合で彼女に勝ったことがなかったよ。というか、彼女が負けるところもみたことがない。」
「恐ろしい小娘だな。」
キョウが苦笑いをする。
「恐ろしいロリババアよ。アオ、あなたでも彼女は解析できなかった?」
ワタシはアオの方をむいた。
彼女は不機嫌そうにソファーに寝っ転がっている。
「神使は無理なのよ。強力な結界というか、妨害があってね。直接触れたらわかるかもしれないけど、それでも無理かもしれない。」
「しかし、例の核兵器もカイも見つかってないし、彼女がなにか知ってるかもしれない。もう一度、ジョカエルを呼び戻すぞ。」
◇
再び謁見の間——
「面をあげよ。」
カギの言葉で再び、トウジョウとジョカエルは顔をあげた。
「何度もすまないな。トウジョウ殿、ジョカエル殿。」
キョウは無表情で二人に声をかける。
「いえ、とんでもないことでございます。なにか私どもにお話でも?」
トウジョウは静かに答えた。
「率直に聞くが、陛下の行方と、黒い卵のような魔道具を知らんか?」
キョウはストレートに聞いた。
「はい。陛下の行方は存じております。」
トウジョウは静かに答えた。
(何を考えている?)
「なぜ、言わなかった!」
キョウが席を立って叱責した。
「恐れながら、殿下。」
トウジョウは声を低くした。
「陛下の安全が保証されていないからでございます。」
「なんだと?」
キョウだけでなく横にひかえるカギも顔色を変えた。
「恐れながら殿下、あの逆賊チュウエイから逃れ、陛下を保護したのは霊教会にございます。そして、南にはまだあのコウロがおり、旧王都はまだ魔物の軍勢に占拠されたまま。このような状況で陛下を殿下とアマン殿におあずけするわけにはまいりません。」
(このじじい。日和見してたやつがよくいう。)
そう思ったが、単なる護衛のワタシはだまって聞いていた。
それよりもワタシの眼はジョカを見ていた。
(何を考えているの?)
「貴様、殿下とアマン様に向けて無礼だろう。」
カギがトウジョウに怒りをあらわにした。
それをキョウが制した。
「わかった。貴殿のいうことも一理ある。しかし、確認だが陛下は無事なのだな。」
「はい、それはもうご安心ください。」
トウジョウは口の端をあげながら頭を下げた。
そして、キョウはカギに告げた。
「アマンに伝えよ。ハオに対し、王都の速やかな返還を求める。同時に、逆賊コウロ討伐の準備を進めよ。」
「御意。」
カギは一言答えた。
コウロ、ワタシもあいつには借りを返さないといけない。
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