第135話 とんでもない遺失物
チュウエイが死んで二か月。
未だ、王の行方は不明だった。
キョウが仮の王——摂政となり、アマンが仮の宰相として取り仕切っていた。
そんな時、めずらしくアオのほうから、私やキョウ、それにアマンに相談があると持ち掛けてきた。
謁見の間——
王が座るべき場所には誰も座っていない。
ワタシとキョウとアマンはとあるものたちに呼び出された。
ワタシはともかく、キョウやアマンを呼び出せるものなどこの国にそうそういない。
アオ、スカーレット、クロ、それに究姫と凍子までいる。
(こいつらだけで全てが解決できそうなもんだが。)
「みんな集まってもらって申し訳ない。」
アオが切り出した。
「そうだぞ。私たちは忙しいんだ。」
究姫が口を挟んだ。
「だまれ、いつもどおりお前にも原因があるだろう。」
アオは究姫の尻に蹴りをいれた。
(こいつ今度はなにをしたんだ?)
「アオ様、それで、あなたがた五柱もお集りになってどういったご用件でしょうか?」
キョウが口を開いた。
「実は私たちはあのチュウエイとの戦いのあと、あるものを探していてね。でも私たちでも見つからなかった。だから人の手を借りたい。本来なら私たちでこっそりなんとかしたかったんだけどね。」
「それで、そのあるものとは?」
キョウが聞き返した。
「核爆弾というものだよ。」
「ブーーーーー、か、核爆弾!!」
ワタシはおもわず、飲んでいた飲み物を吹き出し叫んだ。
キョウやアマンには意味がわからなかったらしい。
怪訝な顔をしている。
「なんで、そんなものが!」
「チュウエイが作って、あの戦いのとき、霊都の広場にあったらしい。それで、究姫のやつが魔力感知も遮断していたから、私たちもわからなかった。」
ワタシはおもわずめまいがした。
「なんなんですか、その核爆弾とは?」
キョウがアオに聞いた。
「私たちも詳しくは知らないんだけどね。チュウエイとアビの世界の兵器らしい。ただ、その威力はこの霊都くらいなら吹き飛ばせるみたい。それがどこかへいった。」
「な、なんと。」
キョウが顔色を変える。
「しかし、そのような強力な兵器であれば、とんでもない魔力が必要でしょう。誰でも使えるわけではないのでは?」
沈黙していたアマンが興味深そうに聞く。
「それが問題なんだ。アビの世界では起動が難しかったらしいんだけど、この世界では魔力を使えば、やり方さえ知っていれば見習い魔導士にもできそうなんだ。」
「なんと、そんなものが。」
アマンも顔色を変えた。
「だから、本来私たちがこっそり見つけて処分したかったんだけど、強力な魔力妨害がされているのか見つからない。だから人海戦術で探すしかない。」
「しかし、あなたがたの眼を欺くなど、できるものがそうそういるのですか?」
アマンが聞いた。
「四霊、あるいはその神使、四凶のこいつら以外のやつら、四神のシロ——まあ、あいつは知らないといっていたけど——そのほか、異国の魔王たち。そして異国の勇者やその他、目を欺くくらいならできるかもしれない。」
「なあ?もう帰っていいか?バイトの時間なんだけど。」
スカーレットが空気を読まずに興味なさそうにいった。
「いや、お前もオアシスの真ん中で爆発したら困るだろ。」
クロがつっこむ。
「それはそうだけど、ワタシらはたぶん大丈夫でしょ。」
「お前は大丈夫でも、バイト先はなくなるぞ。」
「それはこまるな。」
こいつらの中でも温度差があるらしい。
「究姫、お前がだまって見ていたからこうなったんだ。お前ももっとやる気を出せ。」
アオはそういいながら、究姫の尻にまた蹴りを入れた。
(たしかにこれは蹴られてもしかたない。)
「あれを作ったのはチュウエイ、つまりは人だよ。私のせいじゃない。まあ、チュウエイが死んだら壊そうとは思っていたけどね。」
「なんで私が尻拭いをするの?」
凍子が不機嫌そうにいうが——
「凍子、お前はアビを騙したという貸しがあったわよね。人間なんかに借りを作っていていいのかしら?」
アオにつっこまれて黙る
「う……、こうなったのもやっぱりあんたのせいじゃないか。」
凍子もそういって究姫を肘でつっついた。
(なるほど、四神も大概だとおもっていたが、こいつらも四凶などといわれる理由がわかった気がした。)
「わかりました。こちらも全力を尽くします。しかし、この話はなるべく内密に。」
キョウが釘を刺す。
「ああ、でも、あれはこの国全体にかかわるものだ。協力者は必ず必要だ。それについても話し合いたい。」
クロがニヤリと笑っていった。
◇
そして、ショウの会議室。
「核爆弾……そんなものが……」
クロの話を聞いてショウが顔色を変えた。
「ああ、だけど、部下には詳細はいわないように。ここにいる全員ね。」
そういって、ショウの他、ここにいる数名の臣下を見る。
「外見は高さ三メートルほどの黒い卵のようなものだ。そして必ず結界に覆われているか、でかい石の棺のようなものに囲まれているらしい。」
「それはどういうことでしょう?」
「なんでも常時、ホウシャセン?とかいう呪いを発しているらしくてね。なんの対策もしていないと、近づいただけで呪いにかかり、数日から数か月で死ぬらしい。」
「なんと……」
臣下たちはつばを飲んだ。
「なお、ショウ以外の全員に、ただ今呪いをかけさせてもらった。ここにいる者以外に核爆弾の詳細を話そうとしたり、記録に残そうとすると死ぬ呪いだ。」
「え……!?」
臣下たちの顔色がまた変わった。
「悪く思うな。事態が解決すればちゃんと呪いを解いてやる。記憶も消してやる。人に聞く場合は、三メートルほどの近づけば死ぬ黒い卵の魔道具とでもいえばいい。知っている者ならそれでわかる。」
「いや、確かにそんなものの存在が広がること自体が危険だ。皆の者、いいな。」
ショウは家臣に釘を刺した。
「これで私の話は終わりだ。じゃあ、よろしくな。」
そういって、クロは席を立とうとした。
ショウは慌ててクロを止めた。
「お待ちください!クロ様。」
「なんだい?まだなにか?」
「いえ、せっかく来ていただいたのです。わが領の酒や料理、美女たちをぜひ楽しんでいただきたいのですが。」
「そうか、悪いね。じゃあ、お言葉に甘えるとするよ。」
ショウの眼が輝いた。
「ありがとうございます!ではすぐに用意させますので、それまで私にわが城を案内させてください!」
(これは、天が与えた機会だ。)
(玄武竜様を客人として迎えられれば、我が陣営の重みは変わる。)
ショウは自分にも運が回ってきたことを喜んだ。
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