第129話 反則
「まさかお前がここに来ているとはな。」
チュウエイがアマンに向き合う。
「この戦いはお前を倒すことがすべてだからな。」
そういいながらアマンはロフのほうをちらりと見る。
「その様子、オレとロフの秘密を知っているようだな。」
「ああ、お前たち二人を同時に倒さないと無理なんだろう。」
「そうだ。そしてオレとロフを倒せる人間などこの世にいない。」
そういいながら、チュウエイは焦っていた。
剣はアビに砕かれた。
しかし、知っていた。
アマンは魔術の天才だと。
(だが、オレの敵はこいつじゃない。)
チュウエイはアビをちらりと見る。
(こいつでもない。)
そして、最後にキョウ王女を見た。
(あの小娘だ。)
(一人前に剣を持ち、この殺し合いの戦場に立っている。)
(オレの知っている王族はああではなかった。)
(あいつだ。あいつを殺しておくべきだったのだ。)
そして、アマンが切りかかってくる。
(やつの攻撃が見える。だからこそ、何かやばい!)
アマンの斬撃は普段見えなかった。
しかし今回は見えた。
チュウエイは【白狼】の高速移動で避けようとした。
しかし、左足の魔力の枷で回避が遅れ、アマンの斬撃が腕をかすめた。
鋭い痛みが走る。
(なんだ、何かやばい。)
傷口を見た。
(凍り付いてる!?)
あわてて、チュウエイは解呪を行った。
そして、傷口が回復していく。
(チッ、この凍結スキル、まだなれていないか!?)
アマンが内心舌打ちをする。
【魔剣】
チュウエイは魔力で剣を作りアマンの剣を受け止める。
(このスキルは発動中も体力を削るから使いたくはないが。)
しかし、アマンの剣戟にチュウエイは押される。
一歩。
また一歩。
(この小僧!剣も使えるのか!)
チュウエイとて、冒険者上がりの剣術があった。
しかし、あくまで我流。
対人戦では幼いころより正統派の剣術を学んだアマンには及ばなかった。
「さあ、チュウエイ覚悟しろ!」
アマンの剣戟により、チュウエイが追い詰められていく。
◇
「クア!クア!クア!」
饕狼が口から魔力弾を連射する。
ワタシはそれを避ける。
左、右、上。
アオの剣があるといえ、こちらの攻撃で有効なのはこの剣しかない。
このままでは、そのうちこっちが体力負けする。
そう思った瞬間、奴はワタシの足元に魔力弾を放った。
(やばい!)
体勢が崩れた。
「もらったあ!クア!」
奴がひときわ大きい魔力弾を放った。
かわせない。
「くそお!」
そういいながらワタシは魔力弾を剣で十字に受ける。
その瞬間、結界が張られ、魔力弾がそのまま饕狼に跳ね返る。
「うそ!」
「なにい!」
ワタシと饕狼の声がかぶる。
「ぐわあ!」
饕狼が自分の魔力弾をまともに受ける。
ダメージこそないようだが、さすがに驚いたらしい。
この武器、チートすぎだろ。
そう思った瞬間——光が走った。
両の剣が魔力の光にあたり消滅する。
(魔力すら感じなかった。)
目をやると少し離れたところにローブを着た者がいた。
(あいつか!)
アオの剣を消し飛ばすなんて、何者!?
その瞬間、空気がはじけた。
音があとからきた。
アオがそこに立っていた。
「なんだ、おま……!?」
饕狼がそういった瞬間、黙った。
「いや、あなた様は……!?」
さらに慌てて言い直す。
目の前の存在が何者なのかに気がついたらしい。
「君が出てくるなんて、それは反則じゃないか?究姫?」
アオはローブの者に話しかけた。
「いやいや、私は究姫じゃないよ。私の名はペルフェクティオだ。それに、あの武器こそ反則だろう?」
あの声は究姫だ!
あいつ、まじに生きていたのか?
心配した自分が本当に馬鹿だった。
「へえ?お前は究姫じゃないのか。じゃあ、お前をいくら叩きのめしても他の四凶には関係ないわけだね。」
その瞬間——
アオが究姫の正面に瞬間移動した。
いや、そう見えた。
【暴れくるう泉】——
アオが霊力を放つと究姫の足元から魔力が爆発した。
数10メートルの高さまで魔力の激流が間欠泉のように舞い上がる。
究姫は空中高く飛ばされる。
「うお!」
いや、彼女だけじゃなかった。
その場にいた全員が衝撃波の余波だけで吹き飛ばされた。
地面が揺れた。
建物の壁が崩れた。
アオが究姫を追って舞い上がり、宙を舞う究姫をさらにはるか上空に蹴り飛ばした。
また衝撃波が来た。
究姫はみるみる見えなくなっていく。
アオはさらに追いかける。
そして——轟音だけが響いた。
上空高くで二人が戦っている轟音が。
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