第117話 アオの暇つぶし
(なんでオレがこんな目に……)
金髪のオーガ蒋鬼は不満を噛みしめながら、デュエル・ウィザーズのカードを手にして数日前を思い出していた。
◇
「蒋鬼よ。お前に名誉ある仕事をやる。このお方に王都の案内をせよ。くれぐれも無礼のないようにな。」
そういって周鬼は自分の前に一人の女を連れてきた。
異世界風の服を着た青みがかった髪の美しい女。
奇妙なことに目にはバンダナで目隠しをしている。
「周鬼、なんだ、この女は?」
蒋鬼は女を注意深く観察する。
(盲目の女?何者だ?)
「この方は、青竜様だ。」
周鬼は一言だけ言った。
「なに!?このお方が!?」
(なんの魔力も感じぬ。周鬼め。おれをからかっているのか!)
「アオ様とお呼びしろ。頼んだぞ。」
周鬼はそれだけ言って去ろうとした。
「まて、周鬼。このお方が青竜様だと。お前、オレをからかうか。」
蒋鬼は周鬼を呼び止める。
周鬼は舌打ちして、アオに跪き謝罪する。
「アオ様、申し訳ございません。無能なオーガゆえ、ご容赦ください。」
「いいよ、いいよ。こういうのは慣れてるからね。」
アオは笑って答える。
その後、宵喬にも確認したが、この女は間違いなく青竜様だと言われた。
「アオ様、無礼承知で申し上げますが、オレと戦っていただけませんか。オレは宵喬様のようにあなたの霊力を感じることはできません。しかし、強者と戦うことこそがオーガの喜び!」
そういって、蒋鬼は棍棒を手に取った。
2メートルはある蒋鬼が振るう棍棒は、並みの剣では受けることすらできない。
「やれやれ。アオ様、お願いできませんでしょうか。ただし、命だけはお許しください。これでも貴重な戦力なのです。」
周鬼は再びアオに跪き頭を下げた。
強者と戦いたいというオーガの思いを周鬼も否定することはできなかった。
「これも魔族の流儀、どうかご容赦を。」
宵喬もアオにひざまずく。
「私だからいいけど、クロやアカなら殺されてるよ。」
そういうと、アオは右手をポケットに入れ、左手を上げる。
「さあ、おいで。君に神を見せてやる。武術だけで勝ってあげるよ。」
アオは目隠ししたまま構えた。
蒋鬼は初めての感覚を得た。
強い者はその構えもさることながら、何らかの形で魔力が必ず見える。
魔力感知されないために流れを抑えることもある。
しかし、アオの場合はまるでその場にいないよう。
「オオオオ!」
蒋鬼は恐怖を克服するように棍棒を薙ぎ払った。
通常の敵であれば、防ぐことはできない。
よって、敵がとる行動は二つ。
懐に飛び込むか、上に逃げるか。
アオは懐に飛び込んできた。
(この時を待っていた!)
蒋鬼の奥の手である。
【高熱の息】
口から高熱の息を浴びせる。
これで倒せるとは思っていない。
しかし、いかなる相手でも必ずひるむ。
そこに必殺の一撃を浴びせるのだ。
「う!」
アオの動きが止まる。
(今だ!)
蒋鬼はその隙を逃がさなかった。
棍棒に力を込めた。
が、しかし、次の瞬間、蒋鬼の意識は闇に落ちた。
◇
気がついたとき、蒋鬼は空を見ていた。
「気がついた?蒋鬼。」
宵喬が心配そうに声をかける。
「な、なんだ。オレは負けたのか。」
「いやあ、私の負けよ。見事だよ。」
上半身を起こしたところ、アオが椅子に座って、自分をたたえていた。
「何があったのですか?宵喬様。」
事態を把握できない蒋鬼は宵喬に確認する。
「蒋鬼、あなた一瞬でアオ様に氷漬けにされたのよ。死ぬ一歩手前だったのよ。」
「そ、それでなぜオレの勝ちだと。」
蒋鬼はアオを見る。
「いやあ、まさか、口臭で私をひるませるとは思わなかったよ。」
「は?」
「思わずイラっとして、霊力を使ったからね。君の勝ちでいいよ。あんな恥も投げ捨てた戦法をとってるとは、おっぱい押し付けて勝ったアビみたいな勝ち方をするとはね。」
「口臭……アビ?」
蒋鬼は思わず、自分の口に手を当てる。
「まってくれ!そんなつもりじゃなかった!」
蒋鬼は思わず否定した。
「クハハハハ!さすがだな、貴様の口臭にはアオ様もかなわんらしい!」
横で聞いていた周鬼が笑った。
「周鬼貴様!」
「お前はまずは歯を磨け。全てはそれからだ。」
周鬼はそういって、さらに蒋鬼を煽った。
そして、アオに再戦を挑んだが、いとも簡単にたたきのめされた。
◇
それで、蒋鬼は今、アオのデュエル・ウィザーズの相手をしている。
「これで、君のライフはゼロ。やっぱり初心者相手だと面白くない。」
そういって、アオはカードをテーブルに置いた。
「でも、ようやく退屈が終わりそうだ。」
そう言ってアオは視線を遠くにやる。
「それはどういう?」
蒋鬼も目線を追うが何も見えない。
「もうすぐわかるよ。」
アオはこちらに向かっているアマンの部隊を感知していた。
(でも、アビはいないな。私をほっといてどこにいったのやら。)
頬づえをついて、少しムッとした。
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