第115話 決意のとき
「妲姫の正体がばれたらしい。」
ワタシはビゼン、ヨクト、リョーカを呼び緊急で会議を開いた。
月明かりと魔法の炎がメンバーの表情を照らす。
「そして、おそらくチュウエイのやつは殿下が勝手に逃げたというように民衆のヘイトを殿下に向ける気だ。」
「では、至急、アオ様に連絡をとり、殿下には霊都にいっていただかないと。」
リョーカが意見を進言する。
「いや、もう間に合わないと思う。」
ワタシはリョーカの意見を遮った。
「ではどうするつもりだ。」
ビゼンがワタシの方を向く。
「殿下、ワタシに一つ策がある。でもこれには覚悟がいる。」
ワタシはキョウの目を見た。
「今さらだ。なんでもやる。」
「アマンにあなたの正体を話すのよ。」
「何?」
「そして、王都に行って、みんなに自分が助けに来たと告げるのよ。そうすれば、アマンに大義名分もつく。私たちがチュウエイを討つ大義名分にもなる。」
「しかし、それでは私はカイと戦う可能性もあるんじゃ……」
「極力そうはならないようにするけど、このままだと全てがチュウエイの思い通りになるわ。」
ワタシはキョウの目をまっすぐ見た。
一拍おいてキョウは答えた。
「わかった。覚悟はできた。傭兵ルオは終わりだ。王女に戻ることにする。私をアマンのもとに連れて行ってくれ。」
キョウの言葉にワタシは頷いた。
◇
ワタシとキョウはビゼンとヨクトとともにアマンのもとに向かった。
夜遅くだったが、キョウの顔を知る者は多く、緊急事態ということですんなり面会することができた。
「アマン様、報告していなかったことをお詫びします。」
そういって、ワタシはキョウをアマンに紹介した。
「王女殿下、このような場所にお越しいただくとはおそれいります。」
アマンはキョウの姿を見るなり、ひれ伏し、配下のものたちもそれに倣った。
「アマン、あまり驚いていないようだな。私が偽物だと考えないのか。」
キョウはアマンの行動を見て言った。
「おそれながら、先日、アビが連れてこられた傭兵はうすうす殿下だと気がついておりましたので。」
(まじか。しかし、ハッタリにも見えない。)
「なぜだ?なぜわかった?」
「手です。」
「手?」
「はい。おそらくはアオ様のお力でお顔を変えておられたと思いますが、殿下のように美しい手をした傭兵などおりません。」
ワタシはアマンの慧眼に舌を巻いた。
(そこまで見ていなかったな。恐ろしいやつだ。)
「なぜ、気が付かない振りを?」
キョウはアマンを問いただす。
「おそらく殿下のことですから、民のことを考え、いても立ってもいられなくなったというところではないかと愚考しまして。」
(そのとおりよ。)
「すべてはお見通しというわけか。では、ワタシがここに来た意図も想像はつくか。」
「はい、恐れながら、ついにチュウエイを討伐される決意をされたのではないかと。」
「そうだ。アマン、私に力を貸してくれるか。」
キョウはひざまずいているアマンの肩に手をかける。
「もちろんでございます。私だけではありません。我が部下、全て殿下と陛下に忠誠を誓います。」
キョウはアマンの手を取り立ち上がらせる。
「私も陣頭に立ち戦う。カイを、いや陛下を逆賊からお救いするのだ。」
「ハ、私に策がございます。」
そういってアマンは自分の策を話し始めた。
「本来であれば私が陣を取り我が軍5000を霊都に向かわせます。しかしこれは陽動です。密かにアビの傭兵隊と我が軍の精鋭を難民に紛れさせ、王都の反チュウエイの陣営と連携し、内乱を起こし、一気にチュウエイとロフの首を取ります。」
「そんなにうまくいくのか。」
「この作戦は霊都本体がこちらの陽動に乗るほど成功します。恐れながら、殿下が自ら陽動にご協力いただけるならばまちがいないでしょう。」
「アマン様、反チュウエイの陣営とは?」
ワタシはアマンに作戦の詳細を尋ねた。
「シシ殿という方がいる。彼はチュウエイが気を許しているが、かならず我々に協力してくれる。」
「信用できるのですか?」
「大丈夫だ。なにせ、その男こそ、かつて私にチュウエイ暗殺を依頼した男だ。やつもチュウエイは殺さねばいずれ滅びると考えている。」
「なるほど。」
ワタシはあらためてアマンの用意周到さに感心した。
「よって、アビ、あなたはまずは霊都に潜入してほしい。アオ様には王都でお会いして、そちらに合流していただくつもりだ。」
「アオはそちらにいたほうがいいのでは?」
「フ、神を利用しようとすると滅びる。私はゴメンだ。あなたも気をつけろ。」
「お言葉ですが、私は彼女を利用しているつもりはありません。」
「そうだな。それはわかっている。しかし、あなたもアオ様には十分気をつけろ。彼女は自分の友人が10万人を虐殺してどういう反応だったか覚えているか?人間の精神ならば、かなりの動揺があると思うが。」
(まあ、たいして気にもしていなかったわね。彼女たちにとっては自分に関わらない人間の命などどうでもいいのでしょう。)
「いや、作戦に関係ない話をしすぎた。」
そういってアマンは再びキョウに向き合う。
「殿下、かならずや勝利をあなたに捧げます。」
(なんか、忘れているような……)
(あ、思い出した。)
(妲姫のことを忘れていた。)
ワタシは妲姫に思念通話で作戦の概要を伝え、隙を見て逃げてキョウのもとに来るように伝えた。
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