第104話 伝説の剣の真実
「アオ様、申し訳ございません——」
へし折られた青龍冷艶鋸を手に、ビゼンがアオの前に膝をついた。
涙が流し謝罪をしている。
「気にしなくていいよ。ビゼンが無事でよかった。」
アオは、ビゼンの眼を見て慰めた。
「いえ、私が未熟なためにこんなことに。」
ビゼンは再びうなだれて謝罪する。
ワタシはその様子を見ながら、アオの表情が少しおかしいことに気がついていた。
何かを隠している。
アオと深く付き合ってきたからこそ、わかることだった。
◇
(まあ、子供のおもちゃだし、当然よね。)
アオは折れた薙刀と泣き崩れるビゼンを交互に見て、どうしたものかと考えながら、数百年前の出来事を思い出していた。
◇
数百年前——
とあるダークエルフの里。
アオは気まぐれにダークエルフたちに魔術の指導などをしていた。
その合間に、子供たちといわゆる勇者ごっこに興じていた。
「アルテマスラッシュ!」
ダークエルフの少年が小枝を振り回して、アオを斬りつけるフリをする。
「ドラゴンバリアー!」
アオはバリアを張るフリをしてそれを防いだ。
「だめだよ、アオ姉ちゃん!これはなんでも切れる伝説の剣なんだ!バリアなんかで防げないよ!」
「クラウドだけそんなの持ってずるいじゃない。」
アオはクラウドという少年にのった。
「だって俺はいつか姉ちゃんの勇者になるんだぞ!それで姉ちゃんを守るんだ!」
少年はアオに向かって宣言した。
「あら、うれしい。じゃあ、ワタシからプレゼントしようか。」
そういうと、アオは落ちていた細長い石を拾って、そこに霊力を込めた。
すると、一本の薙刀になった。
「すげえ!」
クラウドは目を輝かせた。
「見てて。」
アオがその薙刀を振るうと、横にあった大岩が斜めに切り倒された。
「おおおおお!」
クラウドは再び声をあげた。
「これをあなたにあげるわ。これこそ、何でも切れる青竜の剣——大きくなったら私を守ってね。」
そういって、アオはその剣をクラウドに渡した。
アオにとっては、ちょっとした気まぐれだった。
「オレ、これを家宝にするよ!」
それから数百年——
小石でできたおもちゃの剣は、青龍冷艶鋸と呼ばれるようになっていた。
アオにとっては、想像すらしていないことだった。
◇
——そして現在。
(まさか、あれがずっと伝わっていたとはね。)
(今更、子供のおもちゃよ、とは言いにくいわね。)
アオはすべてを正直にいうと人を傷つけることがある——それをアビから教えてもらっていた。
(さすがに四霊が魔王討伐のために真剣に作った剣に、私のおもちゃが勝てるわけはないからね。)
「あなたのせいじゃないのよ、ビゼン。」
アオはそういうのが精一杯だった。
ビゼンはまだうなだれていた。
その手に、刃の砕けた青龍冷艶鋸を、握ったまま。
(仕方ないわね。)
アオは右手の人差し指を立てる。
すると人差し指の爪が見る見る伸びていった。
「ビゼン、そのおもちゃ……いや、薙刀を貸して。」
「いや、今、アオ様、おもちゃとかいわなかったですか?」
ソウがアビに耳打ちする。
「いったわね。」
アビも返事をしたが、ビゼンの耳には入っていないようだった。
ビゼンは砕けた青龍冷艶鋸をアオに渡した。
アオは伸びた爪の部分を砕けた刃にあてた。
すると刃が爪を吸収するように光り輝き、見る見る修復されていった。
それだけではない。
明らかに以前よりも輝きを増し、鏡のように美しい刃になって生まれ変わった。
「これで、あの四霊の剣にも負けない剣になったと思うわ。」
そういって、アオは再びビゼンに薙刀を返した。
「はい!必ず、雪辱を果たして見せます!」
ビゼンは青龍冷艶鋸を受け取り、その刃をじっと見つめた。
「今回のは精神体も斬れるようにしておいた。これで斬れば文字通りなんでも切れるよ。ロフでもチュウエイでもね。」
アオはしれっととんでもないことを言った。
「念のために聞くけど、それはあなたでも斬れるってこと?」
ワタシはアオに確認する。
「自分の爪で自殺もできないし、人も殺せないでしょう。さすがにそれは無理だよ。」
それを聞いて少し安心した。
「あと、ヨクト。あなたの攻撃もロフに届いてたよ。君ならロフを殺せるかも。」
アオがヨクトのほうを見ていった。
「まじですか!?」
ヨクトが嬉しそうに反応した。
「あいつの体調がものすごく悪くてフラフラだった場合だけど。」
「あーそうすか。」
(ものすごく肩を落としてる。)
やっぱりあのロフってやつは化け物ね。
こうして、ワタシたちアビ傭兵団はアマン軍と同行することになった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
続きが気になった方は、
ぜひ応援クリック、ブックマークをお願いします!
SNSで拡散お願いします
やる気がでます




