↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/66

49 厨二病全開バトル!

 俺たちは、家の裏庭でヘルと睨み合っていた。

 背後には小川が流れ、棚田には、青々とした稲が一面に広がっている。


 ――ヘルが、静かに手をかざす。


 その瞬間、地面に無数の黒い渦が出現した。

 渦の奥から、次々と小鬼が這い出してくる。


 小鬼の全身を黒い靄が包み込み、黒々と揺らめいていた。


「神楽! この女は俺が相手する。お前は、小鬼どもを頼む」


「了解です!」


 短く応じた、その直後。


「あら、私のお相手はあなたなの?」


 ヘルは楽しげに視線を鬼頭さんへ向ける。


「神楽くんとも遊びたかったんだけど」


 そう言って、妖艶に微笑んだ。


 ――次の瞬間。


 鬼頭さんが大地を蹴り、ヘルへと迫る。

 それを合図に、戦闘が始まった。


 俺も即座に迎撃態勢に入ると、襲いくる小鬼を念装で強化した拳で殴り飛ばす。

 錐揉み状態で吹き飛んだ小鬼は、群れに衝突し、数匹が霧となって飛散した。


 続いて、空から襲いかかる個体を念動で拘束しようとするが――

 体を覆う黒い靄に弾かれる。


「くそっ……やっぱり駄目か」


 その攻撃をギリギリでかわし、小鬼が地面に着地したところを力任せに踏み潰す。


 一匹一匹はそれほど強くない。

 だが、数が多い。


 相手もそれを理解しているのか、数匹単位で連携し始めた。


 四方と上空から、同時に仕掛けられる攻撃。

 俺は一瞬だけ念装を解除し、瞬間移動でその攻撃を回避。


 再び念装を纏い、着地と同時に群れをまとめて蹴り飛ばす。


 周囲を見ると、分家の人たちも連携して小鬼と戦っていた。

 さすが鬼頭さんの言う通り、皆戦闘慣れしていて危なげがない。


「こっちは……今のところ油断さえしなければ大丈夫そうだな」


 視線を鬼頭さんの方へ向けると、ヘルが大きな鎌のようなものを構えているのが見えた。


 銀髪・緋眼 vs 黒髪ドレスに大鎌。


(……厨二病全開だな!)


 思わず、心の中で突っ込む。


 だが、そんな軽口とは裏腹に、戦闘は激烈を極めていた。


 鬼頭さんは、ヘルの振るう大鎌を避けもせず掴み取り、空いた腕でストレートを叩き込む。


 ヘルはその拳を、余裕の表情でバク宙してかわす。


 大鎌を素手で掴むとか……それに、あのパンチを余裕で躱す身体能力。

 ――両方とも、ヤバすぎだろ。


 とりあえず、あっちは鬼頭さんに任せるしかない。

 俺は俺で、小鬼を何とかしないと。


 ……しかし、何匹いるんだよ。

 まさかとは思うが、無限湧きとか言わないよな?


 未だに黒い渦から湧き続ける小鬼を睨みながら、俺は思わずぼやいた。



 ◇◆◇



 ――神楽たちが戦闘に突入した、ちょうどその頃。


 別の場所でも、事態が静かに動き始めていた。


「ねえ茜(あかね)ちゃん。次は、こっちのお店に入ろうよ!」


「うん。でも真琴ちゃん、そんなに買って大丈夫なの?」


「ふふん。最近、臨時収入が入ったんだよね〜」


「そうなんだ、それなら安心ね」


「でしょ? じゃあ次はここ!」


 私は今、茜ちゃんを誘ってショッピングに出かけている。


 神楽先輩から連絡を受けてから、できるだけ茜ちゃんと一緒に行動する。


 そう決めて、私は急遽(きゅうきょ)実家からこちらに戻ってきた。


 茜ちゃんの隣には、狛狐の鈴ちゃんと結ちゃんも同行している。

 護衛……というより、半分は食べ歩き要員なんだけど。


 ちなみにブッチくんも誘ったけど、どうしても今はVTuberの仕事で手が離せないらしい。


 可愛いカッパのアバターと語り口調が人気みたいで、子供から大人まで楽しめるオカルト番組を中心に、登録者数も着実に伸びているみたい。


 ――ここだけの話。


 ROOTSの機密情報を漏らさないように、現在“監視対象”になっていることを、本人はかなり不満がっていた。


 ……でも、これまでの行動を考えれば、仕方ないと思うよ。ブッチくん。


 そんなこんなで、ショッピングを楽しんでいると、向かう先で人だかりができているのが目に入った。


「何かあったのかな?」


「……わずかじゃが、邪悪な気配があるのう」


 鈴ちゃんが、低くそう告げる。


 私と茜ちゃんは顔を見合わせ、警戒しつつ人混みに近づいた。


 そこには、足から血を流した女性が倒れていて、誰かが介抱している姿があった。


 そして――その先。


 ビルの上に、人影が見えた。


(え? ビルの上に人?)


 真っ赤な髪が風に煽られ、大きくなびいている。

 相手の姿は見えないけど……誰かと戦っているように見えた。


 しかし、次の瞬間その姿はビルの影に消えて見えなくなった。


 幸い、周囲の人たちは怪我人に気を取られていて、その異変に気づいた様子はないみたい。


「ねえ、茜ちゃん」


 私が声をかけると、茜ちゃんは即座に頷いた。


「鈴、お願い」


「任せるのじゃ」


 鈴ちゃんはそう言って、赤髪の女性を追って駆け出していく。


 私たちは、道に倒れている女性の元へ向かう。

 幸い、意識はある。

 話を聞くと、足に急な痛みを感じたと思ったら、荷物を奪われたのだという。


 その女性を介抱していた、別の女性にには見覚えがあった。


 ROOTSの施設で見かけたことがある。


「あの……ROOTSの職員の方ですよね?」


 声をかけると、その女性は一瞬驚いた表情を見せる。


「あなたは……?」


「あ、えっと。中央支部で鬼頭さんの班に所属している、藤宮って言います」


「え? 藤宮さん……? じゃあ、もしかして“ミョルニル”の?」


 私は左腕につけた、金色のブレスレットを見せた。


「なるほど……あなたが、そうなのね」


 女性は納得したように頷き、思い出したように続ける。


「そうだ。この近くに、銀髪の女性がいるはずなんだけど……見かけなかった?」


 銀髪?


 赤髪なら見たけど……。


「赤髪の人なら、見ましたけど……」


「その人です!」


 答えたのは、ROOTSの職員ではなく、足を負傷して倒れていた女性だった。


「……その方は、鬼灯(ほおずき) 凛(りん)さん。鬼頭さんのお姉さんです」


「えっ……鬼頭さんのお姉さんなんですか?」


「はい。今回、凛さんは“とある荷物”を運んでいた私の護衛をしてくれていたんです」


 女性の話によると――地元へ荷物を運ぶ途中で襲撃を受け、荷物を奪われたらしい。


 そして、その犯人を追って、鬼頭さんの姉――鬼灯 凛さんは、単身で追いかけたのだという。


「お願いします……! 凛さんを、手伝ってあげてください!」


 倒れていた女性は、痛みをこらえるように歯を食いしばりながら、必死に訴えた。


「あの荷物は……私たち一族にとって、本当に大事なものなんです」


 声が震え、目に涙がにじむ。


「どうか……お願いします!」


 私は一瞬、茜ちゃんの方を見る。

 茜ちゃんは何も言わず、静かに、でも強く頷いた。


 ――答えは、決まっていた。


「分かりました」


 私は、はっきりと告げる。


「あ、ありがとうございます! じゃあ、これを持っていってください」


 そう言ってオレンジ色のハンカチを手渡してくる。


「えっと、これは?」


「それを見せれば、味方だと信じてくれると思います」


「わかりました。お借りしますね」


 私は、そのハンカチを受け取りポケットにしまう。


「じゃあ、私たちは凛さんのところへ向かいます。今、仲間の子が追ってくれているはずなので」


 そう言って私は立ち上がる。


 ROOTSへの連絡は、職員の女性に任せた。

 状況の説明も、応急処置も、ここは任せていい。


 そして――


 私と茜ちゃん、結ちゃん。

 それから、先に走り出した鈴ちゃん。


 鬼頭さんのお姉さん――

 鬼灯 凛さんを追って、駆け出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。