第四百九十四話 公開詰問
「マリー…………」
国王ルイ十六世は妻の弁舌を漫然と聞き入っていた。
「実に堂々としておられる。これなら魔女の謗りを退けられるのではありませんかな?」
ビロンの賛辞の言葉にも答えずマリーを見つめ続ける。
「大事無ければそれでいい。ビロン、いざという時には兵を出せるよう臨戦体制を取っておいてくれ」
「はっ、勿論であります!」
「ヒバリコどこだ〜!!」
護衛に囲まれた状態でヒバリコを探し回るテレジアをビロンは細めた横目で見た。
(この人は放っておいていいかな?)
「て、てめえあの怪しげな魔法を国中に広める気か?!」
追及するフィリップの声がうわずっていた。
「魔法ではありません、理にかなった技術です! 実際学んでみれば実感できます!」
「ふざけるな!こいつ 魔法を教えて魔女を増やす気だ!! 騙されるなみんな〜!!」
「やってみれば分かります。それより……」
マリーは拘束されているフロンを振り見た。
「フィリップさん、この人の名は?」
ぎくっ
フィリップは身構えた。
(これは答えてはいけない奴か?)
となれば。
「知らねえ!」
「ふむ」
マリーは首を傾げた。
「あの人は私を襲った賊であります。フィリップさんが彼を知っていれば……あなたも賊の仲間となるところでしたが…………」
フィリップは心の中で安堵した。
(危なかった……フロンも俺を仲間とは言わないだろう)
「しかし」
(うん、なんだ?)
今度はフィリップが首を傾げる番だった。
「これ、もしフィリップさんが賊の仲間なら……あの賊を私に倒させねば魔女呼ばわりはできませんよね」
(な、何を言っているんだ?)
背筋に震えが来た。
見透かしているような言い方だ。
「それを踏まえた上であの、ええと、八人ですか。彼らに聞きます」
そう言いつつマリーは通路の真ん中に寄せ集められている八人の暗殺者の元に歩んだ。
護衛に挨拶した上で八人を見る。
彼らは護衛兵との戦いで相当傷ついている、のみならず一人は死体となっていた……
あの戦いなら死人が出て当然だ。
マリーは一瞬顔を顰めた後、一番傷の浅そうな者を見定めた。
「……あなた、お聞きします。あなた方の作戦、派手な割にずさん過ぎます。こんな失敗が容易に予想できる計画に何故乗ったのです? 私を殺すのはまず無理ですし、万が一成功しても絶対逃げ切れません。まるで私を魔女に仕立てる為にあなた達は捨て駒となったみたいです」
賊に話しかける声ではあったが、観衆にも聞き取れる良く通った声でマリーは話していた。
マリーに問いかけられた賊の表情が青ざめていく。
「そんな……聞いてない…………」
「そこでお聞きします。あなた方の首謀者はどなたですか?」
賊は震える声で答えた。
「…………フィリップだ…………フ ィ リ ッ プ だ〜!!」
捨て駒にされた賊の皆さん、お気の毒です。
首謀者の名をばらしたくもなるってものでしょう。
観衆に聞き取れる声でしっかり話すマリーもさすがです。
これで流れは変わったかな?




