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第四百九十一話 一旦お預け







 「姫様、お久しぶりです」







 「ヒバリコ先生…………」



 マリーは震える足で足を踏み出した。



 「お待ちを!!」


 鋭い声が突き刺さる。

 マリーの足が止まった。

 表情が強張る。

 何故?!

 今、待つなんてあり得ない!


「姫様、今は魔女騒ぎの収拾を。あなたの愛する民の前で自らが魔女ではなく何者であるかお伝え下さい!」


 「う…………」


 そんな事すら放っておいて師と再会を喜びたい。

 それが我がままと分かっていても。

 マリーの心が大きく揺らぐ。


 「先生……」


 「大丈夫、私もご一緒します! だから行きましょう!」


 ヒバリコは地面に転がっているフィリップをひょいと肩に背負った。


 「さあ、行きますよ」


 「…………」


 「切り替えて!」


 「は、はい!!」


 フィリップを担いだままヒバリコが走り出す。

 ヒバリコが横に並んだところでマリーも走り出した。

 マリーは背後に複数の足音が付いて来るのを聞き取る。

 ヒバリコが囁く。


 「後で紹介します。姫様の弟弟子、妹弟子ですよ」


 「! ……」


 振り向こうかと思った時。


 「マリー様〜!」


 カークとビスケが駆け寄ってきた。

 

 「マリー様、これは……」


 話しかける二人をマリーはすり抜けた。


 「事情は後! 戻ります!」


 言い捨てるとマリーは観衆と揉み合う護衛、兵達をすり抜け先程フロンを突き飛ばした場所に舞い戻った。

 ヒバリコは観衆の手前で止まった。

 カークとビスケに向き直りフィリップを下ろした。


 「姫様の部下の方ですね? 姫様を魔女呼ばわりした張本人です。お預けします」


 言われてカークは当惑しつつ彼女を凝視した。

 東洋の血が混じっているだろうその顔。

 漆黒の髪は肩まで真っ直ぐに伸びていた。

 年は四十前位?

 しかし何よりその立ち方、背筋のピンと伸ばした姿勢。

 誰かと生き写し……


 ビスケが問いかけの声を漏らした。


 「あなたは…………ヒバリコ……さん?」


 「はい」


 「えええ〜!?」


 カークとビスケが揃って驚きの叫びを吐き出した。

 予々聞いていたあのヒバリコ!

 実物を初めて見たのだ。


 「あっあ……」


 ヒバリコが手で制する。


 「お待ちを。今はマリア様、いえ、マリー様の方を見守らねばなりません。無事にこの場を収められるか……」


 魔女コールはまだ続いていた。

 フィリップの手下四人が先導を継続していたのだ。

 ビスケが不安そうに聞いた。


 「私たちにできる事は……」


 「もちろんあれば遠慮なく手伝いましょう」


 



 

 

 感動の再開は後回し。

 事態の収拾が優先。

 果たしてマリーは魔女の汚名は晴らす事ができるのでしょうか?

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