第四百八十六話 魔女
フランスに於いて魔女の存在は古くから信じられ、十五世紀〜十七世紀に魔女裁判が盛んに行われた。
その結果多くの女性が魔女として処罰された。
かのジャンヌ・ダルクも魔女として火炙りの刑にされたのは有名な話である。
しかし時代と共に魔女裁判は下火となった。
十七世紀後半頃から司法の中央集権化が進み、魔女は実在しないと認識が改められていったからだ。
1682年、フランスで魔女裁判が禁止された。
実際には1745年に最後の魔女裁判が行われたとされている。
こうして魔女は貴族階級などを中心に否定されたのだが、民衆の意識とは乖離があった。
彼らの間では魔女の存在は根強く信じられていたのだ。
特に地方、辺境の民衆には魔女は現存する恐怖としてあり続けていたのだ。
女王テレジアの姿を一目見ようとしていた民衆はパリ、ヴェルサイユの民が多かった。
が、他国の女王様を見る為、わざわざ地方からやって来た民衆もかなりいたのだ。
「 魔 女 だ 〜〜〜!!」
響き渡る叫び声。
マリーは声のした方を振り向いた。
と、その瞬間別の場所から声が飛んだ。
「魔女だ」
「魔女だ!」
「魔女だ!!」
「魔女だ〜!!」
ばらばらの場所から口々に叫ぶ男女。
フィリップが仕込んでおいた四人だった。
煽るように叫ぶ彼らの声に観衆達は動揺の色を見せる。
場の空気が澱んでいく。
「魔女だっ! 王妃は魔女だ〜〜!!」
フィリップが再び叫ぶ。
「マリー様!」
駆け寄るカークとビスケだが動揺した様子で周りを見回している。
マリーが命令する。
「二人共取り敢えずそこに倒れている男の拘束を!」
「ははっ!」
命令している間もマリーは顔色を変えずに一点を見ていた。
軽く息を吸うと腹から声を発した。
「おや、フィリップさんではありませんか。魔女とはどう言うおつもりで?」
大きさ以上によく通る声が観衆に届く。
フィリップは一瞬怯んだ。
(顔を覚えていたか、だがやることをやらねば逃げられない!)
最早暗殺にこだわる気はない。
王妃を魔女に仕立て上げれば復讐を実現できる。
フィリップはさっき見た光景を思い返しつつ言い返した。
「あれだけの大男をどうやって吹っ飛ばしたんだ? 魔法だ! 魔女だ〜!!」
マリー暗殺を失敗し続けたフィリップの打った手段はマリーを魔女に仕立てる事でした。
確かに復讐にはなるけど後先考えてないな。
マリーは魔女の汚名を見事跳ね返せるのでしょうか?




