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第四百八十四話 飛んでくる斧は……


 

 




 マリーに弾かれた男が背中から落ちた所に丁度いた護衛が慌てて喉を踵で打ち据えた。

 残りの七人が一斉にマリーに襲い掛かろうとする。

 

 「マリー様!」


 カークが間に割って入ろうとした。

 しかしマリーが塊となった七人の右側に走り更に背後に回り込もうとした。

 カークそっちのけで追う七人。


 しゅっ


 ナイフが空を切り七人の内の一人の尻に刺さった。


 「うぎゃっ」


 転ぶ男。

 ビスケのナイフだった。

 転んだ男にカークが蹴りを放って吹っ飛ばすと再びマリーを追いかける。


 「マリー様、もう動き回らないで下さ〜い!!」





 

 「みんな離れろ! 逃げろ〜!!」


 ロープで張られた通路に張り付いていた兵士達が観衆に怒鳴り続けている。

 その内の何人かは護衛達の援護に回ろうと持ち場を離れ出していた。

 一方観衆達は避難をする者もいたがその場を離れず犯行が起きている現場を目を離さずに見ている者も多かった。

 それどころか女王を見に移動していた観衆の多くがこちら側に戻ってきた。

 完全に野次馬だ。

 多くの観衆が見守る中、混戦は続く。





 煙が引いてきた。

 六人の大男が必死にマリーの元へ進もうとしている。

 護衛達が迎撃して押し留めようとする。

 ごつんという音がいくつも重なり武器と武器がぶつかり合った。

 その中の両手に斧を持つ男が片手で護衛の剣を受けて残った片手で斧を振り投げた。

 斧は縦回転でマリー目掛けて飛んでいく。


 「あっ!」


 護衛が声を漏らした。



 騒乱を目の当たりにしている観衆達はまるで動く気配がない。

 危険より好奇心を優先させた連中の集まりだった。

 彼らのお目当てのマリーが素早く体一つ分横移動させた。

 その時観衆はマリーに隠れて見えなかった斧がこちらに向けて飛んでくるのを見た。

 

 「!!」


 このままでは斧が観衆に突っ込んでしまう。

 驚く観衆の前でマリーの手が横に伸びるのが見えた。



 マリーの動体視力は高い。

 彼女は斧の刃を避け柄の部分を掴めると読んだ。

 しかし斧はかなり大きく重そうだ。

 掴んでも体ごと持っていかれそうだった。


 

 自分を境界にした自分以外の空間……

 斧が眼前に迫る。

 襲い来る斧にマリーは手を伸ばす。

 



 

 「マリー様!」


 組み付いていた相手をたたき伏せながらカークが叫ぶ。


 「マリー様ぁ〜!!」


 ビスケも叫ぶ。

 ビロンもマリーに視線を集中させていた。

 

 

 


 ぱしっ!


 回転する斧の柄をマリーは見事に掴んだ。

 それでも斧の勢いは止まらない。

 マリーは体を軸に横回転をしながら斧の軌道をずらしていった。

 勢いを失わぬまま斧は弧を描く。

 更にマリーは真上に斧の軌道をずらし放り上げた。


 回転しながら斧は空高く舞い上がった。

 

 しゅるるる……


 観衆達が一斉に見上げる中、斧はやがて落下を始め地面に突き刺さった。


 ずんっ


 重い音を立てて突き立つ斧を悠然と見下ろすマリー、と呆然と見つめる観衆達。

 マリーは観衆に振り返りにこりと笑った。


 「民の安全は私が守ります」


 おおおお〜


 歓声が轟いた。


 



 

 斧を見事に方向転換。

 なんだか観衆が観客になってるみたいな。

 なんか調子に乗ってるとも受け取れるけど、そう上手く事が運ぶでしょうかね?

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