第四百八十三話 立ち回り、始まる
「始まったぞ!」
フィリップが食い入る様に見つめていた。
これから一体何が起こるのか。
フィリップ自身どう転ぶか予想がつかない。
「くっ……俺も」
動こうとするフロンの肩をフィリップは掴んで止めた。
「よせ! 分かっているだろう」
「だがあいつら王妃を殺すのに必死で……」
「ああ、あいつらが王妃を殺せるならそれに越した事はないが…………」
フィリップは唇を噛み締めた。
(手段は選べねえ…………)
マリーが突然移動した為八人の暗殺者はそれに合わせて移動を余儀なくされた。
煙で見えにくい状況の中、護衛達をスルーしてひたすらマリーのみを狙わんとしていたのだ。
護衛達もマリーを追おうとした。
マリーは襲いくる暗殺者の一人に向かって走る。
その男は大金槌を持っていた。
突進する自分に対し突進し返して来るマリーに当惑しつつ、彼は大金槌を横殴りに振り回した。
ひょいという感じでかわし二、三歩後退するマリー。
今度は大金槌を大上段に振りかざそうとする暗殺者。
それに合わせてマリーは俊足で突進した。
大金槌が後方に振られ男が体を反らせ、その重心が後方に移動しきった瞬間にマリーの体が胸元に激突した。
どんっ
大金槌を持ったまま男は煙を突き破り弾け飛んだ。
「い、今のは何だ?!」
マリーの妙技は初見のフィリップは驚嘆の声を上げた。
一体どういう理屈でああなったのか皆目見当がつかない。
「こ、これがマリーアントワネットという奴か!」
フィリップは周りを見回す。
観衆達も大男を体当たりで弾き飛ばしたマリーの勇姿に驚嘆している。
煙で隠せるレベルではなかった。
(これは……これなら!)
フィリップは隣で驚いているフロンに囁いた。
「まだだぞ……」
「何ですか、一体…………」
観衆が騒ぐ声を聞きテレジアは顔を訝らせる。
馬車の椅子から立ち上がり周りを見回した。
「…………ん?」
マリーのいるはずの場所で煙が広がっている。
「これは!?」
隣の馬車の国王の声が聞こえた。
「襲撃だと?!」
(襲撃?!)
テレジアは唖然として煙を凝視していた。
と、煙を突き破り男が吹っ飛んで背中から地に落ちた。
二つに割れた煙の向こう側に立ちはだかるのは…………
「マリア〜〜!!」
驚きに怒りの感情が混じり込んだ。
「何やってるんですか〜〜!!」
ついに始まる大立ち回り。
敵も観衆も王も女王も見ている。
こんな中、王妃が派手に立ち回っていいのかな?




