第四百八十一話 出門
少し遅れて国王がもう一台の馬車に向かおうとしていた。
「ではそろそろ行ってくる」
「はい、お気を付けて」
見送るマリーはこの後間隔をおいて徒歩で出る。
馬車は望まなかった。
彼女に節約の意思があったのだろう。
「しかし君を遠ざけての挨拶とは。最後まで和解はできなかったのか……」
「いえ、私は結構和解できたと思いますよ。仲良く共にご挨拶をと考えていましたけどどうした事か…………」
「そうなのか……」
正直間に受ける気にはなれない。
あくまで妻の主観であるから。
王はテレジアが娘の膝枕で涙した事など聞いてないし、聞いても和解と認識するかは分からない。
(まあ、今はいいだろう……)
そう思うと彼は妻との会話を切り上げる事にした。
「また後でな。式典の最中に一緒に立てる事を願う」
マリーにとっては感謝この上ない言葉だった。
ここで王に気遣われるとは。
「…………ありがとうございます!!」
馬車に乗った女王が移動を開始し王の馬車がそれに続く。
マリーは距離が開くのを待つ。
内側の門が開いて先導の騎馬隊が出てくる。
続いてテレジアの馬車が門をくぐり出た。
門の外で待ち構えていた観衆と楽隊、その歓声とファンファーレが響き渡った。
馬車の前後左右を固める多くの護衛達が門を出ると同様に護衛に囲まれた国王の馬車が出た。
数本のロープが張られて作られた道をおびただしい数の警備兵が守りながら馬車はゆっくり進んで行く。
王の馬車の後ろをこの国の重鎮達がついて行こうとしていた。
大臣、貴族、軍人、聖職者など……
先頭には女王護衛の兵を取り仕切るヴォードルイユが。
最後尾には王妃護衛の兵を取り仕切るビロンが。
彼らは徒歩である。
ビロンと並びマリーが前の列が動き出すのを待っていた。
取り巻く数人の護衛の中にカークとビスケもいた。
「お母様、大丈夫でしょうか……」
呟くマリーにビロンは首を傾けた。
「う〜ん。今はご自分の事をお考えになった方が良いですよ。王妃様とてやる事はあるでしょう?」
「まあ、見守るくらいですから。特に母娘で何かするでも無い、となっておりますし」
「我々は護衛として王妃様を全力でお守りするまでです。王妃様も気を引き締めて頂ければありがたい」
「主役は母ですから」
「いえ、不測の事態に母も娘も関係ありませんから」
「…………?」
ビロンは自分の言葉に王妃が何か引っ掛かっていると察した。
自分自身もヴォードルイユが王妃警護を押し付けてきたのが引っ掛かっていた。
杞憂に終わればいいが。
「とにかく王妃様、身の回りにはご注意を。いつもの様に」
「分かりました。いつも通りに…………」
引っ掛かりが負の予感に変容する。
今で言うフラグが立つというものだ。
護衛達の中でマリーの前後を守るカークとビスケが表情を硬くする。
(そういう言葉はマリー様でなく我々に言ってくれないと…………)
つまっていた前の列の者達が歩き出した。
「それでは私達も行きましょう」
「ははっ」
マリー達は門に向かって歩き出した。
出門ですが一応フラグは立っていた。
まあマリーなら立っていようといまいと関係ないか。
とは言え、これだけ観衆の多い場所で何がどう繰り広げられるのでしょうか?




