第四百八十話 開門されて
午前八時半頃やっと開門が行われた。
どどどどっ
詰めかけていた民衆が歓声と共に門を通り抜けていく。
その中にフィリップ達も混じっていた。
彼らはロープを張られて作られた通路に群がる民達と違い、まずは広間の柵沿いに進み塀の辺りに来た。
半数は塀を背に座り込みくつろぐふりをして隠してあった武器道具を掘り出す作業を行う。
残り半数は向き合って立ち談笑するふりをして掘り返し作業を隠していた。
程なく武器道具を掘り出し全員に行き渡らせるとフィリップが小声で、しかし鋭く言い放った。
「獲物は絶対見えないように隠しておけ。その時が来るまで大事にしまっておけ。それじゃ行くぞ」
フィリップはフロンとロープで仕切られた通りに群がる観衆の後ろに付いた。
他の者は四人ずつになり通路の両側に分かれ内門前まで移動した。
フィリップは周りを見回した。
さっき会っておいた四人の男女が自分からやや離れた位置にぽつんぽつんと立っている。
この四人の存在はフィリップとフロンだけが知っている。
王妃を襲う暗殺者は何も知らされていない。
(後は王妃を待つだけか…………)
隣に立つフロンが声を漏らした。
「あいつら最後まで言われた通りにやってくれるだろうか……」
「あいつらには破格の金を渡してある。多少の無茶は覚悟しているだろう」
「もう後戻りできないか……」
「ああ……」
二人は漫然と女王が、いや王妃が出てくる門を眺めていた。
式典開催の十時が近付いている。
宮殿内では女王、国王、その取り巻き達が準備を整える為大わらわだった。
外側の門が開かれ民衆達が広場で待ち構えている所に内側の門から騎馬隊の先導でテレジアの乗る馬車が出てくる手筈だ。
馬車はすでに内側の門内に用意されていた。
屋根の無い物で二人乗りだった。
それが二台。
この二台に女王と国王が乗って入場するのだ。
宮殿内から多くの護衛と取り巻きを引き連れて女王が出てきた。
ゆったりとした歩調で馬車に向かう。
目ざとく女王の姿を見つけた観衆が歓声を上げた。
テレジアは動ずる事もなく進んで行く。
冷静、というより無関心な感じで。
(結局マリアを大人しくさせる事は叶わなかった。このまま帰らないといけないのか……)
一応フランス国民に挨拶しなければならなくなった。
(ヴォードルイユに授かった策……あれはどうなのか)
さっきも彼に念を押されたが果たしてどうするか。
一応娘と離れた場所にいる事は容認しているが、この後民の前で娘が暴れん坊を返上するなどと宣言してどうなるというのだろう?
娘をたばかったところで大した効果は望めるとは思えない。
「この私が流されるままか…………」
「は? どうされましたか?」
後ろを歩くメルシー伯が怪訝そうに聞いた。
「いえ、なんでもないです…………」
テレジアは馬車にたどり着くと軽く息を吸い、深く吐いた。
開門されてせっせと準備を重ねるフィリップ達。
一方乗り気でないテレジア。
用意されたお膳立てが実はマリー暗殺に利用されてるとも知らず……
果たして敵はマリーをどう攻略するつもりでしょうか。




