第四百七十九話 思惑が密やかに
午前七時前。
パリ……をぐるりと取り囲む壁。
その中に入る為の市門の一つ。
通りかかった一人の女性は市門を無視して歩をすすめていく。
背後で声がした。
「入らないんですか?」
歩きながら答える。
「パリを通らなくともヴェルサイユへは行けます。観光はいずれしますよ」
別の声が背後からした。
「早く行きたいです!」
「式典は三時間後。急ぐ必要はありません。ただ……」
彼女は後ろに振り返り言葉を続けた。
「大掛かりな式典です。なんらかの異変が起きる可能性もあり得ます。心の準備はしておきなさい」
「はい!!」
三人分の声が重なった。
同時刻ヴェルサイユの町外れにある小屋。
中にいるのは……
「おい、準備はいいか!?」
フィリップが号令をかける。
「おう!」
八人の大男達が呼応した。
「いいか、もう一度確認するぞ! 王妃のいる場所にも観衆は詰めかけてるだろうが無理に前に陣取る必要は無い。その時になったら力ずくで押し込めばいい。護衛がいるだろうが構わず王妃だけを狙え! 王妃を仕留める時間が短ければ短い程逃走しやすくなるのを忘れるな。警備兵が門をくぐる前に持ち物検査するはずだから武器や道具は持ち込めない。だから二日前、警備が手薄な内に持ち込んでおいた。門から入ったら武器の隠し場所に向かって調達しろ。気付かれないようにな」
気負った様子で頷く男達。
「八時に門が開く予定だ。半時間後にここを出る。それまで準備をしておけ」
フィリップは側のフロンを見た。
「俺はちょっと出て行く。戻るまでここを頼む」
フロンはぎこちなく頷いた。
頬に汗が滲む。
「いいのか本当に……?」
「覚悟はできてる」
「…………」
フロンは無言でフィリップを見送った。
フィリップは近くの小屋に入ると呼び声を上げた。
「お〜い、出て来ていいぞ」
奥の部屋のドアが開き四人の男女が出てきた。
男は二人で歳の頃は三十前後。
女は二十代と四十代位。
ごくありふれた平民といった風情。
「言った通りにやってくれりゃいい。俺の後に続いてな。お前達に迷惑はかからないさ。金の分だけ働いてそれで終わりだ。分かったな?」
彼らは遠慮気味に頷いた。
「八時頃には来てくれ。それじゃまた宮殿前で会おうな」
言い終わるとフィリップは小屋をそそくさと出て行った。
みんな色々画策している感じです。
特にフィリップはいかがわしいですね。
ヴェルサイユを舞台にどんな波乱が起きるのでしょうか?




