第四百七十五話 警護の段取り
マリーは貴賓室を出るとカークとビスケを引きつれ国王の間に向かった。
そしてテレジアとのやりとりがどんなものであったかを王に報告した。
「と言う事でお母様には酷な事になったかも知れませんが…………お母様がサジを投げる所まで行きつきました」
「…………なんと…………」
妻の報告に王は二の句が告げなくなってしまった。
あの激烈な女王に諦めさせたと言うのか。
「そうですねえ。私は悪い子ですよね」
自重気味に笑う妻に王は未だ投げかける言葉を見出せなかった。
翌日からテレジアは貴賓室から出る気配を見せなかった。
帰国時の民衆への挨拶についてはメルシー伯がフランス側と会議を行いその結果をテレジアに伝えると言う形で進行した。
マリーは母の様子を気遣っっていたが、メルシー伯から面会を望まれておられないと聞かされた。
挨拶の儀の際も同席は認めないととの意向を伝えられ、困惑してしまった。
どれだけ反発し合っていても間近にいたのに今更遠ざけるとはどういう心づもりなのか…………
テレジアがサジを投げてから二日目の朝。
ヴォードルイユ伯爵がメルシー伯を通じてテレジアに入室を認められた。
対面の理由は帰国時における女王の挨拶の際の護衛等の諸作業を任せてもらう為だった。
護衛は軍人の任務だからおかしくはない。
しかしその理由は…………
「女王様、手筈通りに。民衆への挨拶の際王妃様が今後その行動を自粛する、と宣言すると言う事で。王妃様に口出しさせぬよう別々の場所にいるようにして下さい。我々もその様に取り計らいますので」
「ああ、それですか…………」
心ここに在らずといったふうでテレジアは答えた。
そう言えば挨拶の際王妃を遠ざけるように言われていた。
今どう言う顔して娘と接していいか分からなくなっていた所なのでなんとでもなるだろう。
にしても最早その様な小賢しい手段で娘をどう抑え込めると言うのか。
「女王様、くれぐれも段取りを違えぬ様願います!」
気負うヴォードルイユの言葉に流されるようにテレジアは答えた。
「ああ、後は任せます」
貴賓室を出たヴォードルイユは次の行動に移った。
女王の護衛を仕切る事はメルシー伯が国王に伝えるだろう。
問題は王妃の方の護衛だ。
そちらまで手を回したら王妃暗殺が成功した時、護衛任務に失敗したとして責任を取らされる。
極刑もあり得るのではないか。
そんな任務に関わる訳にはいかない。
大掛かりな護衛任務になるだろうから役割分担は必然だった。
(王妃の護衛は誰に任せるべきか……ブザンヴァルあたりがいいか)
考えを巡らせながらヴォードルイユは歩を進める。
(いや、どうせ責任を取らせるならこちらにとって厄介な奴にすればいい!)
女王のお別れ会? が始まろうとしています。
マリー暗殺の為の段取りとも知らずにテレジアさん無造作に受け入れてます。
半ば虚脱状態なのでしょうか。
これで滞りなく暗殺が決行される?




