第四百七十一話 思い出話に腹が立つ
「続きを!」
「ええと、国は民の上に……」
「そこ聞いた! ヒバリコが具体的にあなたに何をどう教えたかです、民の為に」
「実地、ですか」
「そう、そこから!」
「それでは……先生から馬術を教わりそれなりの腕を身に付けた私は馬に乗り城外へ出る様になりました。そこから外の民との交流を図る事となりました。確かにヒバリコ先生のお膳立てです。小さい頃は民と仲良くしなさいと、十歳頃からは民と信頼を以て接しなさいと言われました」
「なんと……」
「よく子供達と遊んだりもしました。虫を捕まえたり蛇の巣を突っついたり……」
「何をやっとるんです!」
「知っての通り牛の乳搾りを手伝った時もあります。ただやらせてもらったではなく牛飼いの皆さんのお役に立ったと認めてもらう位に。そうやって民の気持ちを感じる様に指導して下さったのです」
「…………ヒバリコはなぜそんな事を? 彼女自身の目的は?」
「そこまでは分かりません。ただ私はそれが当たり前だと思っていたのでヒバリコ先生もそうなのだろうと……」
それは違うだろうとテレジアは思った。
そんな事が当たり前である訳が無い。
となると…………
「ヒバリコは素性が良く知れない人間でした。シルクロードを渡ったオランダ商人が連れ帰った貴族階級の子孫だと言っていましたが……どこまで本当か」
「東洋に伝わる様々な技能を私に伝授して下さいました。武道もその一つ……」
「伝授……?」
「はい。武道、武術とも言いますが厳しい鍛錬を積み鍛えました」
「鍛錬? そんな事を王女がしてどうするんですか!?」
「基礎運動、形稽古、組み手、など」
「だから王女のする事では無い!!」
さっきから伝授だの鍛錬だの形稽古だの聞き慣れない言葉ばかり聞かされ、テレジアの神経に負担が一層かかる。
その先から。
「滝に打たれるなどもありましたね」
「滝? 打たれるぅ?!」
「はい、滝の下にて落ちてくる多量の水をかぶり、しばらく立ち続けるというものです。打ち当たる水が痛い程冷たく……」
「何の意味があるんですか〜〜!!」
「精神修養に絶大な効果が」
「そんな修養やる理由があるか? あなたは王妃でしょうが〜!!」
「当時は王女……」
「知っとるわ〜〜!!」
思い出話に花が咲く、とはならずに突っ込みまくり。
テレジアの心労は重なるばかり。
しかも思い出話はまだ終わりでない。
話のネタと女王の精神。
どちらがどこまで持つのやら。




