第四百七十話 聞かれた以上に話す
中に引き入れられたマリーは中の様子を見分する間もなく奥の部屋へと連れ込まれた。
「外から聴かれない様にしておきます! 念の為」
奥の部屋に入ると更に奥の奥へ。
引っ張られるままに入ったのは寝室だった。
「ここで良いでしょう」
テレジアはマリーの手を離すとベッドに無造作に腰掛けた。
「用心深いですね」
言いながらマリーも母の横に腰掛けた。
仄かなランプの灯りに照らされいかにも密談を行う雰囲気が寝室を満たしていた。
「マリア!!」
「声が大きいです!! 隣に座ってるんですよ?!」
いきなり密談の雰囲気がぶち壊された。
「よくお聞きなさい」
テレジアはややトーンを下げた。
「今日あなたに聞きたい事は他でもありません…………ヒバリコの事です!」
「えっ?」
「本人がここにいないのなら仕方ない、あなたから聞くしかないと思ったのです」
「…………一体何を聞きたいというのですか?」
テレジアは一呼吸ついた。
「…………そもそもあなたがこの様な暴れん坊だとか言われる様になったのはヒバリコのせいです!」
否定的な言い方と受け取ったマリーは言い返した。
「ヒバリコ先生のせい、とはなんですか?!」
「原因はヒバリコでしょう? ヒバリコの教育が今のあなたを作ったのでしょう。違いますか?」
「それはそうです。そして感謝してます」
「……要するにヒバリコがどんな教育をしてあなたを育て上げたのかを具体的に話して見せよと言っているんです。具体的に!」
「ああ、そういう事ですか……」
急に冷静を取り戻したマリーの様子を窺い見るテレジア。
「聞きたい事はいくらでもあります!」
「聞かれた事にいくらでも答えます!」
なんだか言いたそうな顔になっている。
眉を顰めながらテレジアは問い始めた。
「では……あなたは民の事をとても大事に思っている。その行動を見れば常軌を逸しているとしか言いようが無い程に。ヒバリコの教育なしにこうはならないでしょう。あなたはヒバリコに何を教えられたのです?」
「…………」
「どうしました?」
「…………よくぞ聞いてくれました〜!!」
『?!」
テレジアの顔が曇る。
これは悪い流れでは無いのか?
「先生は私に様々な事をお教え下さいました、学業や馬術、武術など、しかしそれらの事を教えてもどう使うかは私自身に任すという姿勢でした、私を自分の思い通りにしようとするのを嫌い警戒するする人でした、それでも唯一こうしなければならないと教えられたのが民を大事にするという事でした!!」
ろくに息継ぎもせず一気に喋り立てるマリーにテレジアは悪い流れを実感してしまった。
「国は民の上に成り立っている、民が土台、土台が壊れれば国が傾くどころかひっくり返る! 、なので民が国をしっかり支えられるよう、王家が民に寄り添い民の為に力を尽くさねばならないと教えて下さったのです!!」
勢いを加速させて喋り続けるマリーはもう止められな……
「待 て え え え え〜〜!!」
ずずずいっ!!
テレジアはマリーの眼前に顔擦り合わせんばかりに迫った。
「……お母様?」
「一方的に喋るな! 演説でも講釈でもない! 少しは会話を成立させなさい!!」
「…………はい、善処します」
顔と顔を離してテレジアは再び聞く体制に戻った。
「続きを!」
テレジアも知らぬヒバリコとの過去話。
ヒバリコの教育姿勢はわかったけど……
具体的なエピソードは続きをって事ですかw




