第四百六十七話 最後の対話
部屋に戻ったテレジアはソファーにどっかり座り大きく息を吐いた。
「ええい、ここまで騒がれるとは! 昨日までと大違いです!!」
昨日までにもあるにはあったが。
外では護衛と何人かの民が問答している様だ。
ここにテレジアがいるとばれてしまったのだ。
「ぬううう〜、こんな状態がいつまで続く!?」
近寄り難い空気を毎度のごとく発散しているテレジアだが、その空気に抗い接近する者が。
恐る恐るテレジアにメリシー伯は声を掛けた。
「テレジア様……」
「ん、なんですか?」
「その、そろそろ帰還の日取りを決めて頂かねばなりません……」
ぎろりっ
視線をぶつけられて怯むメルシーだがここは言わねばならない。
「いつまでも母国を空けておく訳にはいきません。日取りを決めオーストリアに伝令を送らねば……」
「まだ何も成していません!!」
「女王様が母国を空け続ければ支障をきたします! 国に揺らぎもおきましょう」
正論ではあった。
「何を成すにしろ期日を切るのが得策かと……」
テレジアの顔つきが渋くなる。
言っている事はよく分かる。
自分も一週間もあればと思っていたが目処は立っていない。
ならば期日を切りそれまでに全力で事にあたるべきか。
「…………分かりました。期日を切りましょう」
「おお、ありがとうございます!」
正直期待していなかった答えを頂きメルシー伯は心の中で胸を撫で下ろした。
「では、帰国の途につくのは一週間後! 伝令にて母国に伝えなさい」
「はは!」
「国王にも伝え帰国のお膳立てをしてもらいます」
ここでテレジアは頬に手を当て考える仕草をした。
(一週間以内でやるとなれば……そう言えばヴォードルイユが私に入知恵していたな)
帰り際にフランスの民に顔見せするというもの。
娘と離れた場所で盛大に、そして娘がこれからは好き勝手に暴れる事を自重すると確約するというもの。
そんな事であの娘を止められるのか疑問だが万策尽きた時に保険として用意された手段だ。
(すでに了承している以上はやるしかないか……その為の準備に時間を食うとなると残された時間がどれだけあるのか……?)
恐らく五日無いかもしれない。
(残り五日足らずでどうやれば…………いや、何日あってもあの娘を正す算段が見つかって無〜い!!)
王を口説き落とせればいいのだが、その王が今はマリーを支えにしていると見受けられるので目処は立たない。
(ヒバリコも見つからない。ならあの娘と一対一で今一度差し向かうしか無いのか…………あの子はなんであそこまで民にこだわる? ヒバリコは何を教えた? もしそれが分かれば状況は変わるだろうか?)
そこまで考えてテレジアは自ら当惑した。
当時そんなにヒバリコの事を知りたかっただろうか?
むしろ知りたくも無いという姿勢を取っていたかもしれない。
(敵を知っておくべきだったか……)
ヒバリコの行方は分からない。
今となっては娘を通してしか知る事はできないだろう。
(帰国前にもう一度試みるか……)
テレジアはソファーから立ち上がった。
「メルシー伯、国王に言伝を。娘に今一度一対一で対話を望みます」
これで本当に最後?
マリーと女王。
話題はヒバリコ。
どんなエピソードが出るのやら。




