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第四百六十三話 化ける



 


 


 「ですから貴国のバイエルン併合は認められない! オランダもいらない!!」


 対面に座する国王の強い言葉にテレジアは表情を硬くする。

 王妃抜きでここまで強硬に抗弁するのか、この自分相手に。

 しかしテレジアも引く気は無い。


 「お互いの国の利益になるとは思いませんか?」


 「利益にはなる」


 「ならば……」


 「目先のな!」


 「むっ?!」


 国王は肩を落として息を吐くと次の言葉を繰り出した。


 「テレジア殿、こう言う言葉をご存知か? 自分がされて嫌な事は人にしてはならない」


 「な、何です?」


 テレジアにとっては唐突過ぎる言動だった。

 これはどういう意図なのか?

 

 「自分の国の領土が奪われたら嫌でしょう? 自分が嫌な事は他者も嫌なのです」


 「それは理屈です! 自国の為にやらねばならない時もある」


 「奪われた国の民が苦しんでもですか?」


 「他国よりもまず自国が大事でしょう?!」


 「その他国も併合すれば自国でしょう? 自国の民となった者達の為に何をされるつもりか?」


 (これは…………)


 テレジアは目を見張る。

 この考え方は異様だった。

 国同士の戦の場合勝った方が領地と民を奪い、負けた方の民を奴隷とする。

 こんな事は過去より連綿と続いた歴史の常識だ。

 そうで無い国や史実など聞いた事が無い。

 たとえ戦無き併合であっても併合された国の民が割を食うのは道理だろう。

 それを一々気にしてどうするのか。

 テレジアは今一度国王ルイ十六世を見つめ直した。


 (……この私に一歩も引かないつもりか……)


 テレジアは彼の背後に影を感じた。


 (マリアに…………背中を押されているのか?! 我が子ながらとんでもないのに影響されてるう!!)


 警戒心を膨らませるテレジアに国王は言い放った。


 「オランダ国民が我が国に併合されて喜ぶとは思えん! 当然反発し、争いが起きる。わざわざそんな火種を抱え込みたくない! あなたもバイエルンに火種を抱えるのを控えた方が無難だと思う!!」


 「それは……余計なお世話です!」


 「我が国は領土拡張より現有の領土内を充実させていきたい。その上で貴国との友好を深めていきたい、という事です」


 「…………」


 テレジアは歯噛みした。

 ここまで毅然とした態度で、しかも王妃である娘の意見を代弁するかの様に主張するのか。

 完全に予想を超えている。

 どう対抗するか?

 それともうまい妥協策を見出すしかないのか?

 

 (このゆるい王がここまでやるとは……取引するなら領地拡大の代わりに娘の素行に目をつぶる…………いや逆!! 領地拡大止める代わりに娘の素行を王命で止めさせる、ってなんでここまで譲歩せねばならないの!?)


 思考を巡らせすぎて額に汗するテレジアに国王が結論を述べた。


 「私は譲歩する気はない。以上だ」


 「……!!」



 唖然。



 (国王が…………化けた!!)


 


 


 マリーの影響か国王が変貌を遂げた。

 なんだか頼もしいけど女王始めそれを喜ぶ者が周りにどれだけいるのかな?

 今後の政局にも影響与えるかもしれないですね。

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