第四百五十一話 疑れば止めど無い
パリ市門を通り抜けた馬車を降りながら母と娘が騒がしく声を上げ合っていた。
「ですから何度も言ってるでしょう! ヒバリコ先生はいません!」
「いないはずが無い! あなたにヒバリコが会わない理由が無い!」
「私もそう思います!」
「だったらいるでしょ!!」
「だって……いつまで経っても会いに来てくれないんですもの〜!!」
「そんな訳ないでしょう!」
「そんな訳無いほうがいいけど本当に来てないから困ってるんです〜!!」
「嘘つけ〜!!」
「嘘じゃ無い〜!!」
「何を言っているんだ、あのお二人は?」
バジーが呆れながらカークとビスケに問いかけた。
「いや、ヒバリコ先生だろ……」
カークが怪訝そうに答える。
「いるのいないの言ってるが……いないよな?」
ビスケも相槌を打った。
「いない! 私らずっとマリー様と行動を共にしてるんですよ? 護衛だから外出する時は常に。ヒバリコ先生にこのパリで会った事なんて無いですよ!」
「その通りなんだが……」
カークが母娘を見やる。
「我らが言っても信じてもらえそうにない」
他の護衛達もメルシー伯も母娘の激しいやり取りに途方に暮れ立ち尽くしていた。
「…………」
「…………」
お互い相手が綴らないと痛感した為、二人共言い淀んでしまった。
テレジアは大きく息を吐いてから眉間に皺を寄せ考え込んだ。
「…………あなたはこれからどこで何をするのですか?」
「え……それは下水道の立ち退きの相談に立ち会う予定です」
「私もついて行きますが……」
テレジアが不意にカーク達を睨んだ。
思わずたじろぐ三人にテレジアが近付いて来た。
「あなた達、マリーの行動予定を知ってますか?」
言われてカークとビスケが恐る恐るバジーを押し出した。
「お、おい!」
慌てるバジーにテレジアが迫る。
「あなたはマリーの今日の行動予定を具体的に把握してるんですね?」
「え、あ、一応は……」
「では貴方に予定を聞き、その通り行動する事にしましょう」
「ええ〜?!」
「娘に急遽予定を変えられたらヒバリコに会えなくなります」
「な、なんですか〜それ?!」
バジーは助けを求めるようにマリーを見た。
「お母様、言ってますけどヒバリコ先生にはまだ再会してません。細かい所にこだわってまで会おうとしても無駄です」
「それはやってみれば分かるでしょう!」
とりつく島も無いとはこの事だ。
「さあ、案内しなさい!」
テレジアはバジーの腕を掴んで促した。
(だ、誰か助けて〜!)
疑ぐるのは勝手ですがやる事強引。
何気に平民のバジーとも普通に接してるし。
テレジアが段々女王の威厳とか関係なくなってないかな?




