第四百四十九話 母娘でパリへ
朝食後、マリーと国王は護衛と共に部屋を出た。
そのタイミングでマリーは国王に話しかけた。
「あなた、それではパリに行って参ります」
言われて国王は怪訝な顔になる。
「何の用だね? しかもこんな時に」
こんな時、は実感だろう。
「はい、下水道の上に建てられた家屋の扱いが具体的になりました。すでにお役人の皆さんに指示を出せるまでになり動いてもらってます。ただ私はまとめ役の責任を持たねばならないのでパリには顔を出さねばならないと思ってます。事務的なものはテュルゴーさんにもやってもらってますが手落ちがないよう気を付けなければ。場合によっては立ち退きまであり得る事なので」
「ほう…………」
「ゴミがこれ以上増える事は無くしました。そういう仕組みを作りましたから。後は溜まっていた物を無くせばパリの清浄化は一応の達成です。現状でも大分綺麗になったとの声を聞いてます」
「では、君の悲願達成が近いと?」
「はい。だから仕上げを責任もってしっかりとやらせて頂きます」
「そうか。こんな時に行く理由は分かったよ」
国王は一息つくと意を決した様に言葉を発した。
「お母上の事は私に任せて行ってきなさい」
マリーの表情が色めき立った。
(か、かっこいい……!)
夫が凄い事になっている。
あの母を任せられるなんて!
「はい! 感謝この上ありません!!」
と、喜びを喜びを隠せないマリーだが……
「!!」
突如マリーの身体が動きを止めた。
廊下の向こうに瞳だけを向けた。
角を曲がって黒い影が出現する。
相も変わらず威圧感が半端無い。
マリーは良く知った圧力に向けて挨拶した。
「あら、お母様。おはようございます」
「あはようございます、国王様、マリー…………」
テレジアは国王を見やった。
「国王様に私を任せるのですか……」
言われて狼狽えまくる国王。
「あ、いや、それは、……」
テレジアは威圧感を抑え気味に声を発した。
「実は国王様に話したい事があります。ここで十分の話です」
「そ、そうですか。それで何用で?」
「フランス国民への顔見せですが……帰国時の送り迎えの時に行うと言う事でなら了承します」
「おお、了承くださるか」
「今、顔見せしては滞在期間中が息苦しい。そういう事でお願いします」
「……そうですか。分かりました。それでいつ頃まで滞在されるつもりか? お答えが先延ばしになっておりますが」
「それはもう少しお待ちを……ところで娘がパリに行くそうですね」
テレジアはマリーに目を向けた。
マリーは普通に答える。
「はい。残りの下水道を掃除せねばならないので」
「言い方! 立ち聞きした話と比べて誤解を呼びます!」
「おや、聞いておられましたか」
聞こえる距離で良くあの威圧感をを感じなかったものだ。
「それでです。私もあなたと一緒にパリへ行ってみたいのですが」
「何ですと!?」
これには国王もびっくり。
小トリアノンの一件があったと言うのに。
「ご理由をお聞きしたいのですが……」
「もちろん娘がパリでやっている事業を見せてもらう為です。要は娘の言い分を聞いてみようという事です」
意外な言葉。
これまで否定しまくっていたのに。
「お母様……急ですね…………」
「悪いですか!?」
「では……行きましょう!」
母の腹の底がどうであれ行くべきだろう。
もしかしたら本当に言い分を聞くつもりかも……だったらいいなとマリーは思った。
「それで馬で行くのですか?」
「馬?」
「いつも馬に乗ってます。馬車の数倍早く……」
「馬車です!!」
馬車で行く事になった。
なんとここで母娘が揃ってパリへ。
なんで?
テレジアの思惑はいかに?
にしてもテレジア滞在編長いですね〜。




