第四百四十八話 使える策か?
ヴォードルイユは小声で囁き出した。
「御目通りの際、民衆に挨拶の御言葉を即興を装っておっしゃるのです。その時に王妃様が今後出過ぎた行いを控える事になったと声高らかに宣言すれば良いのです。現場の事業には本人は参加を遠慮する。それが王妃と王室の尊厳を著しく損なうと自覚したから。王妃はそう約束すると言い切れば良いでしょう」
「ふむ……」
「王妃と一緒にいたらすぐに止められるなり否定されるなりしますので、距離を置いておく必要があります。いわゆる騙し討ちになるので顔見せは帰国の途に付く際にすればどうかと」
女王は眉を顰めた。
それでうまくいくのか。
「王妃様の実母が言うのですから説得力がありましょう。顔見せに参加する我らもその場で盛大に同調します。ここにいる連中を吟味して女王様の顔見せ直前に策を伝えれば良いでしょう。策が漏れない様にするために」
「うう〜む…………」
こういうものは話す時間が長くなると説得力が増す、というかなんとなくそれでいいかという気持ちに流れてしまう傾向がある。
役人が為政者に良く使う手であり、詐欺の手口の一つでもあった。
耳打ちにしては長すぎではあるが。
とは言えテレジアは今一つ納得がいかなかった。
それで娘を止められるものか?
ヴォードルイユは締めくくりの言葉を囁いた。
「帰国の途にはまだ日があります。それまでの間に王妃様を説き伏せられれば良し、どうしてもできなければこの方法を!」
「…………」
耳元から顔を離したヴォードルイユに対し、テレジアは無言で目を閉じ考えを巡らせている様子だった……
……やがてテレジアは目を見開いた。
「分かりました。もし状況が変わらずに帰途の日が来たならそうしましょう」
「ははっ」
(ヴォードルイユめ、何を女王に!? 、うまく取り入りおって〜!!)
密談をする二人の姿を見てまたもモルパは歯噛みした。
(長々と〜! 後でヴォードルイユに聞かねば!!)
その後会合はさしたる意見交換も無く早々に終わる事になった。
貴賓室を出たヴォードルイユは唇を歪めた。
(女王を丸め込めたか。よく首を縦に振ってくれたもんだ)
自分でもそうなると確信はしてなかったから上出来だ。
後はフィリップに伝えておき、更に時がくれば顔見せの日時場所を伝える。
それまでに女王が王妃を説き伏せる事は無かろう。
それができるならとうにできてるはずだ。
「おい、ヴォードルイユ! 何を話した!?」
背後からモルパの声が飛んできた。
「わしにも教えろ!!」
ヴォードルイユはやれやれとばかりに振り向いた。
(こいつくらいなら教えてたっていいか)
ヴォードルイユの策。
そんなに効果があるか疑問はある。
だけどテレジアとりあえずは受け入れちゃった。
少し弱気になってるのかな?
元気を回復して欲しい?




