第四百四十七話 ヴォードルイユ、先んじる
翌日朝。
テレジアは国王の会談の申し出を先延ばしにして自分に取り入った重鎮達と自室で会合を開いていた。
昨日は彼らの不平不満を聞くばかりだったので今日はテレジア自身の意見を中心に話を進める算段だった。
モルパ、モプー、ヴォードルイユ、さらに今回はカンパン夫人にベルタン夫人もいた。
小トリアノン跡の一件で目をかけられたのだ。
その他にも何人もの貴族、軍人達が集まっていた。
テレジアが第一声を発した。
「よくお集まり頂きました。今日は昨日聞いたあなた方の意見を参考に私の意見を言わせて頂きます。すなわち……」
息を呑む重鎮達。
「我が子の所業を改めさせる! これに尽きる!!」
やっぱり〜……
皆の予想通りだけどどうすればいい?
「昨日もあなた方の娘への不平不満をたらふく聞かせて頂きました。しかし娘の頑固さは私に負けていない。一昨日確かめました。真正面からぶつかっても音を上げない。国王殿に交換条件を出そうにも領地拡大について譲歩しようとしましたが最初から突き離された。娘の素行と関係ないと言う訳です。正直言って政治的取引に娘の素行絡めるなど私の望むものではありませんが、この際やむ追えないのかも知れません。皆さんご意見はありますか?」
一同無言。
そう都合良く名案は浮かばない。
その様な周りの様子を見計らいヴォードルイユが手を挙げた。
「提案がありますが……」
「お聞きします。えっと……」
「ヴォードルイユです。実を申しますと今女王様の来仏が市民に知れ渡っています。市民らは偉大なるオーストリアの女帝に御目通りしたいと願っております」
「それはやるつもりはありません!」
にべも無かった。
「お忍びで来たのです! 余計な事に体力を使う気は無い!!」
想定通りの答えだとヴォードルイユは思った。
ここからが腕の見せ所なのだろう。
「女王様、そこですが私に考えがあります」
「なんです?」
「お耳を…………よろしいですか?」
「……見合った内容なら」
「もちろんです。では……」
今回は女王の卓は他の者達の卓と向かい合っていた。
ヴォードルイユは女王の卓に歩み寄ると耳打ちの体制に入った。
(うむう〜、ヴォードルイユめ! 抜け駆けをしおって〜)
モルパは歯噛みをしていた。
しかし自分には妙案が無いので黙認するのみだった。
(もったいぶって耳打ちなど! 覚えておれ!!)
ヴォードルイユは小声で囁き出した。
モルパ達を差し置いてテレジアに近付くヴォードルイユ。
とは言えそれが目的じゃない、
狙いは王妃。
ではどんな提案を女王にするのやら?




