第四百四十五話 噂への対応
その国王は……
(それ程まで知れ渡っているとなると知らぬ存ぜぬとはいかないか……)
弱り顔で考え込んでいる国王。
実はかなり前からこんな様子だった。
と、ドアが開いてマリーが王の私室に入ってきた。
「あら、まだお考えでしたか」
「ううむ……」
「お母様はどうお考えでしょう?」
「君には分からないのか?」
「う〜ん、乗り気にはならないでしょうね。目的外であると。ただ、こちらからそれを要求したら見返りを要求されそうですね」
「見返り? どんなだね」
「お母様の要求はずっと前から一貫してます」
「ああ、なるほど」
「要は……私に私でなくなるに近い要求です」
「!? 、女王の言ってたあれが……そこまでのものなのか……君にとって」
「うふふ、こんな言い回し初めてですね。母と畑で戯れた時に思いついたんですよ」
笑顔で話す妻に国王はやれやれとばかりにため息をついた。
では女王にどう取引せよというのか。
「とりあえず交換条件で話を進めるのは良くなさそうですね。オーストリアの領土拡張には国王様は批判的でしたね」
「ん、ああ。協力はできないとヨーゼフ二世、君の兄上が来た時もそう言った」
「こちらの方々でお母様の側に付きそうな人もおられるので、そういう搦め手はいくつか用意できそうです」
「気が重いな」
「領土拡張の話はテュルゴーさんに聞けば良いでしょう。彼は非植民地は結局自立させるのが最良で、支配を続けるのはあまり実利が伴わないと言ってます。理論を積み上げてそう結論付けているので、もしお母様と会談を行う時は彼を同伴するのも良いかと」
「う〜む、それはどうなのかな……まだ会談なんかまだ話にも出てないが。出て欲しくはないが……」
「お母様の民への顔見せは今の所はご本人の意思に任せましょう。言ったって簡単に意志を曲げる母では無いので」
「そうか…………放っておく訳か」
「ええ、少しの間は」
王は今日何度目かのため息をついた。
女王が来仏してから数が増えたと実感している。
こういう時は……
(考えても仕方ない)
王はマリーに問いかけた。
「目安箱の書状は目を通したのかね?」
「いえ、これからです」
「では一緒に読もう。ついでに久々に速読術のご指導願おう」
「はい!」
マリーの表情が明るくなる。
彼女も同じことを考えていたのだ。
「あれこれ考えても仕方ないですよね!」
噂をどうするのかって来仏は事実だし。
放っておいて良いのかな。
放っておくと大変なのは母も娘も一緒?




