第四百四十四話 噂が耳に届く
翌日早朝。
「マリー様! マリー様はどこだ!?」
馬に乗ったままでバジーが叫ぶ。
パリから馬を駆って大急ぎで来たのだ。
宮殿の入り口辺り目安箱の小屋の手前まで来ていた。
わざわざ早朝に来たのはこの時間すでにマリーが起きているのを知っているからだ。
馬を降りたバジーは広場を見回す。
「確か今頃ここら辺を走ってるはずだが……まだかな? それとももう一周囘り終えて帰っちまったか?」
「バジーさん」
「えっ? あっ」
声の方を見るとマリーが目安箱の小屋から出て来るとこだった。
「そこでしたか!」
まさに丁度のタイミング。
「おはようございます。で、なんでしょうか?」
気負った様子のバジーを冷静に見つめてマリーは問いかけた。
「はい、実は今、パリ中でマリア・テレジア女王様のパリ滞在の話で持ち切りですぜ!」
「ほう。なんと……」
「いや、そりゃいずれは漏れるとは思ってましたよ! だが昨日一日で急激に広まり出したんです! 昨夜ちょっと飲み屋に行ったらもうその話で盛り上がってて、それで慌ててカフェに行ったらもう勝手に歓迎祝いやってる有り様で……誰が言いふらしたんだよって言いたいですよ!!」
「ふむ。まあ知ってる人は言いたくなるでしょうね」
「そんな悠長な……このままじゃ女王様が市民に顔見せしないと収まらないかもしれないですぜ!」
「お母様ならそんな事をしに来たんじゃない! と言うかもですね」
「そりゃ困りましたね……」
「そんな事をしに来たんじゃない〜〜!!」
テレジアはメルシー伯に癇癪を落とした。
(ただ王妃様にお伝え頂いた事をそのまま伝えただけなのに〜)
メルシーは身を縮こまらせて震え上がってしまう。
確かにお忍びだから民衆に顔見せして歓声に応えて手を振ったりなんてありえないだろう。
「あ、あくまでもしかしたらそんな事もって話でありまして……」
「もしかしてでもあり得ません!!」
「はは〜っ!」
この報告、王妃からのものだとは言えないと思うメルシーだった。
当然この報告は国王にも、というよりメルシー伯より先に伝えられていた。
バジーはテュルゴーやテレー師、そしてカークやビスケらにも。
国王にはマリーが伝えていた。
その国王はというと…………
噂が広まりヴェルサイユにまで届く。
テレジアはあくまでお忍びを通す気ですが、この人まだいつ帰るかも決めてない。
そんなに長く他所の国に滞在してて良いのか?
まだまだ不確定に滞在は続く…………




