ハジマリハジマリ
「いやぁ、電撃食らってアフロに小麦肌って君は一昔前のギャグマンガかい?」
そんなことを言われてもね・・・。うわ、マジだ。今どきのダンサーでも見ないような立派なアフロになってるし。
入学初日の交通事故の仕方といい、今朝の大惨事といい訳の分からないことが多く起こっているけど、まさかこれがい能力だったりしないよな。
「てか先輩、いきなりスタンガン人に突きつけないでください」
「いやぁ、咄嗟に対処方法が思いつかなくてね。それにそのかわいい生物もおとなしく出てきてくれたのだからいいだろ?」
俺の襟元から小さな狐が顔を出し、ぺろぺろと頬を舐めてくる。
当たり前だが、たんなる子狐ではない。
首から下は蛇のように細長く、手足もない。太さは10cmほどの異形生物だ。
「これって管狐ですかね」
そう言ったのは早川だった。普段オカルトの知識が全くないのに珍しい。
確かに細長い体を見れば管のようにも見えるが・・・まぁ、謎の生物なのでそれでいいだろ。
早川が撫でようとすると逃げるように俺の服の中に逃げ込む。おい、くすぐったいから服のなかで蠢くのはやめろ。
「ふむ、いろいろと気になることはあるが、とりあえず組分けをしようではないか」
「組ですか?」
「全員で同じ場所を探しても仕方がないだろ? それに1人で行動するのはフラグだからね」
なんというメタ発言。ホラー映画とかだと「こんなとこいてられるか!」とか言ったりパニックになって逃げ出したりで死ぬパターンが多々ある。
でも今回は自分から首をつっ込んでいるからどうなんだろうか?
「少しいいだろうか」
そう言って手をあげたのは風紀委員長だった。どうしたのかと聞いてみるとどうやら家の都合上夜間は外出出来ないらしい。代わりに名前が上がった人物について調べておいてくれるそうだ。
で、残りのメンバーで組分けをすることになったのだが・・・
「で、どうやって決めます?」
先輩とマッチョ先生は霊が見えない代わりに霊的知識を持っている先輩とこっくりさんをガン無視できるほど強い先生、逆に早川と宮崎は霊が見えるけど自衛手段を持っていない。
「ふむ、四方山後輩は一人でいいとして」
「「ですね」」
おい、女性陣。
先輩さっき一人で行動するのは危険すぎるって言ってませんでしたっけ?
「そうね。四方山君はこっくりさんのお墨付きだし、一人で大丈夫だと思う」
「あんたもそっち側!?」
唯一かばってくれそうな風紀委員長までもが女性側に賛同する。
と、そこでマッチョ先生が耳打ちしてくる。
「私は反対だが、好都合なんじゃないのか?」
「と、言いますと?」
「お前、彼女と探索するのにほかのメンバーがいたら邪魔だろ」
確かに手伝ってもらえるかどうかわからないが、メアリーと探索するには他の誰かと行動するよりも都合がいい。
というか、マッチョ先生もしかしてあの子が人間じゃないって気づいてた?
「なんとなくな。まぁ、何をしていたのかは知らんかったが悪い奴ではなさそうだったからな」
そう言ってマッチョ先生は離れる。それ信じていいやつ? こっくりさんが敵意むき出しだったのに「じゃれるな」とか言ってさっきあしらってましたよね?
さて、そんな中話し合いの末以下のペアで行動することになった。
1:先輩&マッチョ先生
2:早川&宮崎
3:俺
え、本当にこの組み合わせで大丈夫? そう思ったが先輩には何か心当たりがあるらしい。その心当たりについて聞いてみるも、なぜかはぐらかしてくる。
で、もう一つの理由がマッチョ先生に管狐が思いっきり警戒して近づこうとしなかったこと。
探知機代わりのこいつが嫌がる以上先輩の感を信じてこのペアにするしかなかったのだ。
さて、気が付けばもうすぐ部活終了の時間だ。ここで全員お開きになり、各メンバーは一度準備のため家に帰り適当な時間に合流するらしい。俺も帰ろうとした時先輩に声をかけられる。
「四方山後輩、少しいいかな?」
「何ですか先輩」
「今、楽しいかい?」
楽しいか?そんなの決まってる。
「ええ、とても」
「そうか、ならこの事件が終わったら焼肉でも食べに行こう。当然私のおごりで」
「楽しみにしてますね」
そう言って部室を出て行った。
さて、さくせんは「いのちだいじに」だな。
こうして、俺たちの部品探しの夜が始まったのだ。
ーー完ーー
・・・いや、終わらんからな?
突然頭の中で文字が現れたけどなんで勝手に終わらそうとしてるんだ?
さて、ここからは資料なしだ。




