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63話目です。
誤字脱字、お目汚しあると思いますが・・・
ふたりで動き出します。
次の日、串の仕入れ先を聞いた二人は直接仕入れ主から話を聞いた。
どうやら生木の仕入れが減ってきたのはこの1週間ほどらしく、特に最近は顕著に量が減ったようだ。
仕入れ主から生木を採集できる場所を聞き、現地に赴いて現状を確認するべく港町方面とは逆の移動師に乗り、一つ目の村へ向かった。
採集で生計を立てている樵や薬草売りなどの村で、周りは森や林がすぐそばにある。
しかしこれから暖かくなるというのに、木々は枯葉がいくらかついているだけで青々と茂っているものはほとんどなかった。
「下に直接生えている薬草や花なんかは枯れてないのに、木だけ枯れてる」
「気候も冷えているわけじゃなさそうだな」
村をひとまわり周った二人は、入口から奥まった場所で作業をしている村人に話を聞くことにした。
「こんな何もない場所に旅人さんが来るなんて、なにか魔都であったのかしら」
「いや、個人的に懇意にしている友人から気になる話を聞いたので」
「まぁ」
「最近生木の流通が激減していると・・・」
ソウの言葉に村人は驚いたように目を丸くした。
「ギルドに調査してもらうには、あまりに緊急性がなかったのに。わざわざ個人的に調べに来たの?」
「友人は串焼き屋なんです。安くておいしい串焼きを値上がり防止するために、ね」
おどけたように言うソウに、村人がほほ笑む。
「ふふ、お若いお兄さんには大事な問題ね。この村で魔都へ流通する生木を採集できるのは、ちょうど裏手の小高い丘を登ったあたりから、湖の手前までよ。湖に入る少し前には関所があるからわかると思うわ」
「丁寧にありがとう。解決できるように調べてみるよ」
ソウとレイは軽く手を上げると、村の外へ向けて歩き出した。
山というよりは小さく、丘というよりは少し急な斜面を登ってゆく。
採集者が歩きやすいようにか、石などは敷かれていないが小道程度には整えられている。
魔都周辺では見られない種類の薬草や果物などが群生しているが、青々とした地面に比べると周りの木々は明らかに冬さ中のように枯れ果てていた。
「これは生木が取れないのもうなづけるな。しかしなぜ木だけが枯れているのか」
「エリム族に何かあったとしか思えない状況だな。とりあえずあの分かれ道の先あたりに若干強い魔結晶を感じる。行ってみよう」
丘を登り切り改めて異様なものを感じた二人は、周りを見渡し、ソウの感知した魔結晶の気配をたどっていくことにした。
下り坂を進みしばらくすると、道が3つに分かれていた。
ひとつは自分たちが通ってきた、村へ続く道。
ひとつは村人に聞いた湖への関所に続く道だろう。先に簡素な関所のようなものが見える。
もうひとつはその湖とは真逆に続く道だった。
ソウが感知したものはその湖の真逆のほうへ進む道の、道から少し外れたあたりのようだ。
周辺の魔物は襲ってくるようなものはいないようだ。
遠目から二人を見てはいるが、そばに寄ってこようとはしなかった。
枯れた木々を抜けて奥へ行く。視界が開けると目の前には崖のように切り立った斜面が、壁のように立ちはだかる。
そこにただ1本、青々と葉を茂らせた樹齢300年はあろうかというような太く、雄大な樹がたたずんでいた。
「この1本だけ、なぜ」
「これは・・・ソウ、おそらく普通の樹ではない。これはエリムだ」
レイがそう言った瞬間、風もないのに葉は揺れ、まるでCGのように幹がぐにゃりとゆがみそこに顔が現れた。
『ああ、旅人よ。このまま静かに朽ちるだけの運命だったエリムにも、光がさした』
どうかエリムを救っておくれ。
まるで好々爺のようなおだやかな顔をしたエリムが、ソウとレイを見て懇願した。
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