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第63話 星降る夜に


 長い階段を進む。もう少しで頂上が見える……そんな所だった。

 

 屋台の灯りが遠くなり、石段の両側に古い石柱が並んでいる。


 石段の中央には、星をかたどった白い刻印。


 刻印をつなぐ白い紋様は、柱の根元まで続いていた。


「ここ……何か違和感を感じます。石段の刻印だけが光っていますね」


 リィンが石段の手前で止まった。


「……その刻印には触れないで。柱から、まだ力が流れ込んでいるわ」


 乃々さんが刻印を踏まないよう、石段の端へ足を出した。


 しかし。


 直後、頭上に星形の白い光が現れた。


「上だ! 全員、石段から離れよう!」


 俺たちが飛び退いた直後、光が石段へ落ちた。


「いくつも落ちてきます!」


 ニーナが手を上げ、俺たちの上に《結晶盾》を広げた。


 いくつもの光が降り、その一つが、盾の横を抜けリィンの浴衣をかすめた。


「ごめん。全部は止められなかった」


「ありがとうニーナ。リィン、腕は?」


「……大丈夫よ。袖が少し焦げただけ。ニーナがほとんど止めてくれたから、誰もケガをしていないわ」


 ニーナは浴衣の袖を見てから、結晶盾を消した。


 白い刻印はさっきと同じように、光り続けていた。


「刻印の手前で反応しました。石段に近づくだけで、上から落ちてきます」


『石段が割れたぞ』

『踏んでないのに反応した!?』

『屋台の先が急に殺意高い』

『浴衣もデバフのひとつか』


 リィンは刻印ではなく、石柱の根元を見ていた。


「……これは祈跡。あれは祈力を流すために、石へ刻まれた紋様だわ」


「祈跡? 魔法とは違うんですか?」


「……ええ。そう……あまり知られてないのね」


「祈跡……聞いたことは無いですね……」


 そういって乃々さんは考える。リィンは言葉を続けた。


「……魔力ではなく、祈力を使っているの。魔力は外から内に入る力。祈力は内から外に出る力よ。つまり、溜めこみ、残すことができる」


「では、さっきの焼きそば屋台にも祈跡が……?」


「……そうね。祈力の残滓は残っていたから」


『焼きそばにも祈りがある』

『そこ真面目に考えるのか』

『祈跡?』


 すると、石段の奥へ向かって、白い刻印が順に光った。


 頭上にさらに多くの光が現れる。


「今度はさっきより多いです! このまま落ちます!」


「《結晶盾》、防ぎきれるか怪しい」


 リィンが儀仗杖を持ち上げ、石柱と石段の刻印を交互に見た。


「……右の石柱だけ、根元の紋様が強く光っているわ。あそこに祈力が溜まっている。そこを押さえれば、落ちるまでの時間を延ばせるはず」


「リィン、できる?」


「……長くは無理だけれど、やってみるわ」


 リィンが儀仗杖の先を、右側の石柱へ向ける。


 リィンの体から金色の光が放たれた。


 石柱の紋様から光が薄れ、落ち始めていた流星群のような光が遅くなった。


「……消すことはできないわ。落ちるのを遅らせているだけ」


「リィン、祈力を溜めた柱は他にもある?」


「……! ええ。あの少し奥の柱よ!」


 俺は駆けて、柱に向かう。


「……柱の根元に祈力が溜まっているわ!」


 祈力の流れは見えなかったが、とにかく、根元へと視線を向ける。


「《刻の縫い針》!」


 《刻の縫い針》を抜き、光の薄れた柱の根元に投げる。


 針先が見えない空間で停止する。祈力を抑えたのか?


 落ちていたたくさんの光も、頭上で停止した。


「罠の光が完全に止まりました! でも、針が戻ればまた落ちます!」


「進むしかないね」


 俺は石段の端にある裂け目に小さな種を落とした。


「《刹那の種》」


 太いツルが伸び、石柱へ絡みつく。


 重なった葉と花が、石段の端に沿って足場になった。


 弧を描いて空中に橋を作っていく。


「なるほど! 石段の端に、花とツルの足場! これで刻印を踏まずに進めます!」


『落下を止めて花の足場!』

『罠回避にも使えるのか』

『花の橋きた!』

『綺麗』


「急ぎましょう。《刹那の種》だけでは長くはもちません!」


「針が戻る前に渡ろう。リィン、浴衣の袖を持つよ」


「……お願いするわ。杖は離さない」


 俺とリィンのあとにニーナと乃々さんが続く。


「ひー!」


 そして火種ちゃん。


 花と葉を踏むたび、下のツルが少し音を立てた。それでも、足場は崩れない。


「刻印に光が戻っています!」


 走りながらも儀仗杖を石柱へ向けるリィン。


 リィンから発せられる光がだんだんと弱くなる。


「……もう抑えられないわ。レンリ」


「頂上はすぐ前だ。そのまま走ろう」


 《刻の縫い針》が手元の針刺しへ戻る。


 停止していた光が、一斉に落ち始めた。


「ギリギリですー!」


 俺たちが石段の先の踊り場へ飛び移った直後、白い光が辺りへ落ちた。


 石段に入った亀裂が端まで走り、花の足場を支えていたツルが切れる。


 花と葉が崩れ、割れた石段の上へ落ちた。


「抜けました! 全員、無事です!」


 乃々さんが《フライ》を通して視聴者に手を振る。


『ギリギリ』

『あっぶね』

『リィンちゃん頑張った』


 リィンは儀仗杖を両手で持ち、割れた石段を見返した。


 金色の二つしばりの髪が揺れた。


「……この世界でも、わたしの杖で祈跡を弱められたわ」


「リィンが祈力を弱めてくれなかったら、針を当てる前に落ちてた。助かったよ」


「……祈跡はここにもある……」


 最後の呟きは小さく、よく聞こえなかった。


 目の前には巨大な扉。


 そしてその扉は既に開かれている。


「……柱から刻印へ流れていた祈力は、この奥から来ているわ」


「ついに頂上まで来たね。《星降りの祭祀場》の奥、確かめよう」


『まだ奥があるのか』

『リィンちゃーん!』

『ラストエリアかな?』

『やべー雰囲気』


 開いた石扉の向こうで、白い光がさらに強くなった。


すみません。風邪を引いて寝込んでます……応援よろしくお願いします!(混乱)

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