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第49話 攻撃は最大の防御(2回目)


 巨人の王が曲刀を構え、刃をこちらに向けた。


 近づけば広範囲の横薙ぎ。距離を取れば、袈裟に斬られる。


 玉座の間は、すべて王の間合いだ。


「ニーナ、攻勢に出よう。このまま引いていたらどの道やられる」


「まかせて。こういう時のとっておきを思いついた。さっきの冴の魔法から」


「とっておきか……! わかった」


 俺は駆けて、敵前に向かう。


 《燻り火の剣》を両手で握り、床へ叩きつけた。


「《残火》!」


 赤い炎が地を裂き、まっすぐ灰の王へと向かう。


 灰が落ちた床に次々と火柱が立ちのぼり、王の足元へ向かって伸びた。


 ニーナは浮遊して詠唱を始める。


「結晶の光の名の下に」


 一転攻勢……。


 だが、灰の王は剣を大きく振るった。


 下から上へ切り上げる……。


 放たれたのは風。


 《残火》と剣から放たれた風圧が衝突する!


「答えよ。其は群星。其は撃。其は砕けて刃を拒む」


 赤い炎は風とぶつかり、消滅した。


「《残火》を風圧で相殺しました……!?」


 床に残ったのは、熱で黒く焼けた灰の筋。


「床を走る火が消し飛ばされました! 受けたんじゃありません。吹き飛ばされました!」


『残火が届かない!?』

『攻撃を消し飛ばすのは反則だろ』

『意識? 生前の行動の反復?』

『王の剣、風圧だけで強すぎる』


「やっぱり、このぐらいじゃ駄目か」


「空を裂き、流れよ」


 詠唱が続いている。


 その直後、頭上で幾数もの結晶が光った。


「降れ、《結晶流星》」


 魔力で作られた結晶が何個も浮かび、放たれた。


 灰の王が動く。


 しかし。


「結晶が落ちていく……! ニーナちゃんの新しい魔法ですね!」


 曲刀の軌道上に結晶が降りそそぎ、刃を押し返した。


 まさしく流星のように、何度も落ちていく。


 これならいける!


 曲刀が振られるたび、結晶が先回りして爆発する。


「止まっています! 灰の王が、結晶魔法の連続で踏み込めません!」


『押してる!』

『ニーナさんの結晶流星、派手すぎる!』

『王の剣を魔力の爆発で止めてる!』


 しかし、灰の王はその剣を振り抜いた。


 刃が、結晶の光そのものを割る。


 何度も何度も。


「あれは……魔流剣技!?」


 そうとしか思えない。


 俺と同じ技だ。


 斬り払われた魔法が広間へ飛び、柱に亀裂を刻んだ。


 流された魔法が玉座の背にひびを入れ、広間全体が悲鳴を上げるように様々な音を立てた。


「連理さんみたいに魔法を斬ってます! 《結晶流星》が辺りで破裂してます!」


『うそだろ』

『ニーナさんの魔法を斬った!?』

『柱が割れた!』

『天井もやばい!』


「このまま続けたら、柱が先にもたない」

「結晶の光の名の下に」

 ニーナの手に光が集まる。

「答えよ。其は塊。其は撃。其は放たれる」

 間髪入れずに次の魔法を撃つつもりだ。


 《結晶流星》はまだ続いている。

「固まり、渦巻き、跳ねよ」

 しかし……。


 今回はいつもと違う!


 バチバチバチ——魔力が凄まじい音を立てて流れていく。


「ちょっと強めに」


 このままでは……まずい。


「ニーナ、待って!」


 ニーナは魔力を溜めながら、こちらを向いた。


「今なら倒せる」


「倒せる。でも、かわされたら王じゃなくてこの空間がまずい。天井が落ちたら、俺たちも帰れない」


 ニーナは悔しそうに唇を結び、手をおさめた。


「王を動けなくするしかない。レンリが止めるなら、ニーナはちゃんと狙える」


 動けなくする……?


 あのサイズの巨人の王を?


「巨人に対抗するなら……レンリ、おっきい竜」


「おっきい竜……そうか!」


 俺は《刹那の種》をつかみ、複数、広間の床へばらまいた。


「《刹那の種》!」


 花とツルが、灰の床から噴き上がる。


 灰の王の曲刀が横薙ぎに切り裂いた。


 花が裂ける。ツルが千切れる。


 玉座の間一面に、《刹那の種》の花とツルが広がった。


「全部、潰されました……!」


 よし。


 ここまでは想定内だ。バラバラになった方がいい。


「いい。全部、床に残ってる」


 切られた後も地面で成長を続ける《刹那の種》。


 そうだ。


 刃に勝てないなら、斬られた後を使う。


 踏まれても、千切られても、まだ終わりじゃない。


 俺は《刻の縫い針》を花の残骸に突き刺した。


「《刻の縫い針》」


 千切れたツルが、枯れる前に止まる。


 落ちた花びらも、切られた葉も、動きを止めた。


「まだ終わりじゃない! 《竜化の手》!」


 《刹那の種》の残骸へ《竜化の手》を重ねる。


 指先に集まった感覚が、床に残った花とツルへ流れ込んでいく。


「切られた部分もひとつになれ。まだ動けるツルで巻き直せ」


 床が震えた。

 

「踏まれた花も、ツルも、繋がって……何度も何度も」


 切れ切れになった花が……開く。


「灰の王を縛れ。《長花竜》!」


 千切れたツルが互いに絡み合う。


 床一面の残骸が一本の長い竜の形へ編み上がった。


「ガアアァァァァァ!!」


 声帯のないアノマリーの花の竜が叫びを上げる。


「花々が……竜になりました! 切られた《刹那の種》が全部つながっています!」


「きれい。だけど、ただの花じゃない」


 針は戻ってこない。


 つまり、針もそのまま竜として組み上がった。


『うわああああ!』

『竜化の手、ここで使うのか!』

『切られた花が全部ひとつになった!』

『花竜で見えねー!』

『でけええええ』


 《長花竜》が灰の落ちた床を走った。


 王の足へ巻きつく。


「グオオオオオオオ!!」


 動く曲刀も絡めとる。


 胴を締める。腕を封じる。


 しかしそれでも、灰の王は抵抗し、《長花竜》を切り裂いた。


 吠え、花竜の胴を裂く。


 裂けた胴は床へ落ちる。


「別のツルがすぐに王の腕へ絡み直します! 切られるたびに集まり、より強く締めてます!」


 美しさより、しぶとさを選んだ竜……そんな気がした。


「王の曲刀まで押さえています! すごい! 今ですよ!」


「そうだね、乃々さん!」


 拘束できているというより、壊される速度より少しだけ早く巻き直しているだけだ。


 チャンスは一度きり。


「ニーナ、今なら王だけを狙える?」


「狙える。レンリが止めてくれたから、たぶん、広間を壊さない」


 手を広げるニーナ。


 先ほどと同じ、大量の魔力が辺りを包んでいく。


「結晶の光の名の下に」


 長花竜が胴体と両腕を押さえ、刃の向きを無理やり床へ向けさせている。


「答えよ。其は波動。其は凪。其は放たれる」


 浮遊するニーナを包むように渦巻く。


「ちょっと強く」


 ニーナの周囲が電気を帯びたように、バチバチと音を立てた魔力が爆ぜた。


「《閃光》」


 巨大な光が放たれた。


 光は花竜の隙間を抜け、灰の王の胸を貫き、背中から玉座へ抜ける。


 巨体に大きな穴が開き、遅れて、吹き飛ばされた。


「グゥゥゥゥゥゥゥ!!」


 玉座へ叩きつけられる灰の王。


 石の背もたれが砕け、台座が割れた。


 握られていた曲刀が宙を舞い、玉座の影に残っていたもう一振りの剣へと落ちていく。


 二刀……。


 刃は交差し、広間の床へ深く突き刺さった。


『荷電粒子砲だーーーー!!!!』

『貫いたああああ!』

『王座ごと壊れた!』

『やべええええええ!』

『今の一撃、切り抜き確定だろ!』

『倒した!!!』


 灰の王の身体が地面に倒れていく。


 長花竜も枯れ、消えていった。


「……倒しました……!」


 床に突き刺さる巨大な二つの曲刀が、ある種の墓標のようになっていた。


ついに灰火モール城もクライマックスです!


そして第一部ももう少しです!


私の忙しさもピークですみません!


是非是非、評価&リアクション・ブックマークで応援頂けると助かります!

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