第44話 魔法を色んな方法でそらさないでー!
ニーナの周囲に、結晶の粒が浮かぶ。
「結晶の光の名の下に」
白と青の結晶が、指先の周囲で渦を作った。
「答えよ。其は塊。其は撃。其は放たれる」
結晶の粒が集まり……
「固まり、渦巻き、跳ねよ」
星の形へ固まっていく。
「とっても小さく」
魔法が飛ぶ。
「《結晶星》」
ホーミングするように動いていく放たれた結晶の塊。
「班長、魔法が来るぞ」
「わかっている」
ドガン!
魔銃が魔力の魂を放つ。
《結晶星》に当たりかき消えたが、ニーナの魔法は大きくそれた。
「ニーナさんの攻撃が、防がれました!」
「そのための銃、ね」
「でも、意識が別に行ったから、ちょっと弱まったね」
「もう一回打つ」
「お願い。降ってくる分は、俺が斬る」
俺は《燻り火の剣》に力を込めた
「一つ目」
まずは接近してきた光弾を狙う。
バン!
刃が光弾を斬った。
紫の光が二つに割れ、床に当たって消える。
中々の術式だ。これを斬るにはコツがいる。
「班長! 魔法を斬った!?」
ソーゴが、盾を構えたまま目を細めた。
「剣で……か」
冴の口角は上がったように見えた。
「やはり面白い!」
意識と同調したのか、光弾の数が増えていく。
「乃々さん、後ろにいてね」
「連理さん、前!」
「見えてる」
更に光弾を斬り、続く二発を払う。
最後の一発は刃の腹で受け、横へ流した。床に当たった紫の光が小さく爆ぜ、灰が舞う。
剣で魔法を斬るたびに、手の中の《燻り火の剣》が熱を返してくる。火が強くなるわけではない。
ただ、刃の奥に残った熱が、次もいけると教えてくれるみたいだった。
いつ間にか冴たちは横にいた。
大楯が魔法を防いでいる。
広範囲魔法を力づくで制圧する……相手も同じことをしていた。
俺の横で、ニーナが息を吸う。
「結晶の光の名の下に」
収束していく魔力。
「答えよ。其は波動。其は凪。其は放たれる」
冴へ向かう直線上に視線を送る。
「とっても弱く……《閃光》」
ニーナの光が、冴へ走る。
しかしそれは……杖でとっさに張ったのだろう……魔法障壁によって防がれた。
「強い」
ニーナの言葉に冴が短く叫ぶ。
「当然だ」
「ニーナの攻撃を防ぎながら、制圧魔法も続けるんだね」
天井の魔法陣が濃くなる。
重ねがけして魔力が強くなったのか。
紫の光が束になり、通路の中央へ降ってくる。進行方向。一気に潰そうとしているのか。
「今度は束です! 押し潰すみたいに落ちてきます!」
「俺が正面を受ける」
「レンリ」
「大丈夫。合わせる場所は見えた」
流石に止まるしかない。
駆け抜けるのは危険すぎる。
「《刹那の種》」
足元に巻いた種。
それは俺を持ち上げて上に伸びていく。
「《燻り火の剣》! 頼むよ!」
魔法を迎え撃つ。
刃が紫の束へ入った。
重い手応えが腕に来る。肩から手首まで押し返されそうになる。
けれど、剣先は外さない。ここでずれたら、乃々さんもニーナも巻き込まれる。
バチバチという魔力が弾ける音が響く。
「おおー」
「すごい! 耐えてます! 剣で! 攻撃は最大の防御ですー!」
なんか意味が違う気がするけど、ツッコめない。
押し切る。紫の光が左右に分かれ、俺たちの両側で床に落ちて消えた。
消えていく。
《ハウンド》は足を止めていた。
「班長、割られた。なんだあれは……」
端末を確認する透。
「微弱な魔力を変化させて、剣にまとっている……? それを微妙に変化させているのか……?」
「正面から……なんてやつだ」
そんな声が聞こえた気がした。
魔王直伝の魔流剣技……実は凄いのか?
俺はツルから降りると、息をつく。
「破りました……! 冴さんの制圧魔法を、剣で破りました!」
「レンリ、すごい」
「今思ったんだけど、もしかしたら針でも止まったかな」
「あ……」
「でも魔法に刺さるかわからないね」
視線の端を《フライ》が映すコメントが流れていく。
『今の対応おかしくない?』
『紫の魔法の束を剣で割ったぞ』
『ニーナの攻撃を防ぎながら制圧魔法続ける冴もやばい』
『制圧魔法vs剣技、切り抜き確定』
冴の目が細くなる。
怒っているわけじゃない。こちらを、もう偶然の相手として見ていない目だ。
「連理、流石だ」
「ありがとう」
《鍵箱》の光は、もう柱二本分の距離まで近づいていた。けれど、冴たちも同じ距離にいる。
「いつのまにか……《鍵箱》は、すぐそこです」
乃々さんの声が、少しだけ熱を帯びる。
制圧魔法によって、他のクランはもうほとんど残っていない。というか《鍵箱》を諦めたクランも多くいるだろう。
しかし、俺たちは諦められない。
そして。
最後の一本を前に、もうどちらも退けない。
ソーゴが盾を構え直した。
「押すか」
「私が止める」
冴の杖に、さらに濃い紫の光が集まる。
さっきとは違う魔法のようだ。
「最後の一本は、《ハウンド》がもらう」
「それは、まだ決まってないよ」
最後の《鍵箱》を前に、俺たちは向き合った。
「氷と水霊の名の下に。流れよ。逆巻く潮流。其は形成、展開、終滅。雹雨よ、我が敵の足を止めよ」
周囲の魔力が刺すように冷たくなっていく。




