第38話 もう出番すか!? いや今着替え中っすよ!
「Aランクアイテム。レア剣」
レア剣か……。
ニーナが、銅箱から出た剣を見上げる。
青い光は、まだ刃の周りに残っていた。箱は銅。出たものはAランク。
「銅箱からAランク武具……!? 銅箱ですよね!? 今の、本当に銅箱でしたよね!?」
「うん。銅箱だったね」
刃の奥に、赤色が見える。
『剣きたーーーー』
『Aラン装備とかw』
『アノマリー級にやばい』
光をまとったニーナが呟く。
「真名は、《燻り火の剣》」
真名の通り……。
金属の内側に、熱だけが閉じ込められているように見えた。
「能力は分かる?」
「《残火》」
「残火……?」
名前だけだと、使い方までは分からない。
「どう使うの?」
「地面に、強く叩く。放たれた火が地面を伝って、まっすぐ伸びる」
「剣なのに、地面に叩きつけるんだ」
「うん。そういう剣」
コメント欄も盛り上がっている。
『銅箱からAランク武具!?』
『残火かっこいい』
『鍵だけじゃなくてアイテムも出た』
どうやらただの剣では無いらしい。
「銅箱からAランク武具で、しかも炎が伸びる剣……! 情報量が多すぎます!」
鍵を一本取った直後に、新しい武器まで出た。
嬉しい。けれど、この場所で目立つのは危ない。
館内放送フェノメノンがお知らせしてしまっているからだ。
「前。敵、来る」
「キメラがいなくなって好機と見たんですかね……?」
「ここで足止めされては危険……だと思う」
通路の先で金属音が鳴った。
「ギギ……」
棚の影から、三つの人型がこちらへ近づいてくる。
探索者ではなかった。
鎧……?
いや、装備の隙間から見えているのは、人形……いやマネキンだ。
鎧を着たマネキン……に見える。
歩くたびに古い金具が音を立てた。
「鎧売り場のマネキンに、古い鎧がかぶさっています。三体です!」
「マネキン型のさまよう鎧ってところかな」
ニーナが一体を指して首を傾げる。
「一体……布?」
「あっ、本当です。一体だけ試着室のカーテンみたいのを引きずっています」
なんだあれは……。
カーテンを引きずりながら歩く鎧。ちょっと可愛そうに思える。
「試着中だったのかな」
「着替え途中」
「自分に似合う鎧を探してたのかな?」
魔物に休憩時間があるのかわからないが、タイミングを間違えたようで申し訳ない。
『試着中の鎧w』
『カーテン引きずってるのじわる』
『敵なのに売り場感ある』
先頭の鎧が腕を上げる。
「ギギギッ!」
剣を構え直した。手の中で《燻り火の剣》が熱を持つ。握りは安定している。
誰でも扱える剣は良い剣だ。
「硬そうだね。まず一体、受ける」
「連理さん、正面です!」
「普通に斬ってみる」
刃は鎧の胸に当たった。
金属音だけが返る。表面には斬撃の跡。
「……浅いかな」
それを見てニーナが呟いた。
「《残火》使ってみて」
「地面を叩く……ね」
「うん。強く、下へ」
確かに鎧系の敵には斬撃より魔法だ。
「三体、縦に並びました!」
「なら、ちょうどいいか」
構えると、火種ちゃんが近寄ってくる。
「ひー!」
「火種ちゃん、少し離れてて。火が出るかもしれない」
「ひっ!?」
「剣の火」
「ひー……?」
「対抗しなくていいからね」
火種ちゃんが、剣と俺を交互に見る。
確かにアイデンティティの問題が発生するかも。いや、火種ちゃんは火というか灯りだし……。
「いくよ。《燻り火の剣》」
剣を床へ打ちつける。
「《残火》」
ガキン!
赤い火柱が進んでいく。斬撃の延長……そんな感じもする。
「出ました! 炎が一直線に伸びています!」
「ギギッ!?」
火柱がさまよう鎧……マネキンを炎に包んだ。
「ギ……」
身を火に焼かれ、振り払おうと動く。
「凄いです! 一振りで敵全てを炎に包みました」
しかし……。
「三体目、まだ動く」
「斬る」
俺は《燻り火の剣》を構えながら、駆けた。
「ギギ……」
「悪いね」
ザンッ。
火をまとっているせいか、敵は動きが鈍い。
間隙を狙うのは容易だった。
「なるほど。残火……長く残って影響を及ぼすのか」
『残火つよ』
『かっこよ』
『火種ちゃんは役目が違うから、ね!』
『連理さんの攻撃手段増えたのデカい』
「三体目、これで終わり」
鎧はそのまま崩れ、消えていく。
焼けたカーテンだけが床に残った。
試着室から出てきたにしては、だいぶ物騒な相手だった。
「撃破です! 《燻り火の剣》、強いですね!」
「まだ慣れてないけど、かなり使いやすいね」
「レンリに合う」
「そうだと助かる」
剣を握り直し、通路の奥を見る。
「この後、中央アトリウムへ向かうんですよね?」
「うん。次の《鍵箱》を探そう」
読んで頂きありがとうございます!
今週はめっちゃ大変でした……。
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もうしてるよという読者様、いつもありがとうございます!第一部ラストまでもう少し……続けて二部も頑張ります。よろしくお願いします




