表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/65

第24話 空を泳ぐシーサーペント?


 地下に沈んだ神殿のような空間……《深部放水路》。


 高い天井。


 奥まで並ぶ巨大な円柱。柱の向こうには、黒く深い水面が広がっている。


「奥の水面が……膨らんでいます!」


「ひー!?」


 水面が裂けた。


 巨大な頭部が突き上がる。


 続いて全身。


 竜のような長い胴体が、水をまとったまま放水路へ浮かび上がった。


 けれど、それは床へ落ちない。


 水から離れてもなお、魚のように空中を泳いでいた。


「《シーサーペント》……! 水の外でも動いています! ここはシーなんですか? そしてサーペントなんですかあれは!?」


「まぁそういう名称なんだから仕方ないな」


 透の返しは冷静だった。冷静すぎて、逆に状況の異常さが際立つ。


「ピピッ」


 《監視員クラゲ》の笛が鳴る。まだいたのか……。


『大型遊具の持ち込みは禁止です』


「大型遊具じゃないです!」


 タイミングよくシーサーペントは体をねじって咆哮した。


「シャァァァァァァァァァァ!」


「大型遊具って言われて怒ってます!」


「そ、そうなのかなぁ?」


 人語は理解してなさそうだ。たぶん。


 巨体が柱の間を滑る。


 水中ではない。空中だ。深い水面も、太い円柱も、高い天井も、全部が相手の通り道になっている。


 シーサーペントは速度をあげ、こちらに動く。


「来る。下がれ」


「尾が来る、左」


「受ける」


 《ハウンド》の冷静な反応。


「乃々さん、柱の陰へ」


「はい……!」


 尾が横から走った。


 放水路の空気ごと、まとめて薙ぎ払うような一撃。


「ぐっ……!」


 盾が低く鳴る。


 足元の水たまりが跳ね、白い飛沫が柱の根元まで散った。


 盾は倒れない。


 さっきまで道を塞いでいた相手が、今は頼れるシールダーになっていた。


「気をつけろ。続いて氷魔法」


 冴の声を聞いて、俺は敵を見つめた。


 シーサーペントの左右にランス型の氷柱が作られていく。


「ニーナ! くるよ!」


「《結晶礫》」


 ニーナが右手を上にすると、結晶の塊が生成された。


 作られた氷柱がこちらへ飛ぶ。


「いけ」


「《穿つ》」


 俺はバールで受けて、氷を破砕する。


 ニーナの魔法もまた、正面から氷槍を破壊した。


 他の氷片は柱へ。


 巨大な柱……そこに大きく穴が開く。


「今の、直撃したら体が消滅してました……!」


 シーサーペントの体表を流れる水が盛り上がる。


 再度作られた氷槍に向かって、冴が狙いをつけた。


「落とす」


 ズガン、バキッ!


 同じ音の連続。


 二丁魔銃が魔力を放った。


 空中で伸びかけた氷槍が、撃ち抜かれて砕ける。


 撃つまでが速い。


 狙いも迷わない。飛んでくる前に落とす。


 冴の判断は……場慣れした経験によるもの。


『でかすぎ』

『水中ボスじゃないの怖い』

『空中泳いでる!?』

『ソーゴさん盾で受けた』

『冴さん判断早い』


「ひー!」


 火種ちゃんが謎の声をあげる。


 シーサーペントの胴体は、円柱の間を縫うように回り込んでいる。


 俺たちの目線だけでは追いきれない。


「フライ、上げます!」


 乃々さんの声は震えている。それでも、フライへの指示は切れていない。


「映像、使えるか」


 透の声に応える乃々さん。


「動きなら見えます!」


「よし、魔法石は見えるか?」


「首元に3つあります!」


 首元に三つ。


 場所は分かった。問題は、そこへ近づく方法だ。


「首元か。回り込むか、奴の体勢を崩さないとな」


「蛇、動いてる」


 ニーナの声。


「柱の間です! シーサーペント、冴さんたちの後ろへ回っています!」


「冴、後ろ!」俺の叫び。


「ソーゴ!」冴が応える。


「間に合う」ソーゴが駆けた。


 盾が横へすべり込む。


 次の瞬間……尾が盾の表面を叩いた。


「シャァァァァァァアアァァァァァアッ!」


「氷槍、連理側」


 止まらない連続攻撃。


「ソーゴ、差し込め」


「行く」


 続けてソーゴの盾が、俺たちの前へ割り込んだ。


 氷槍が盾に当たり、白い霜のようなものが広がる。


「盾の後ろに」


「助かる」


「大きい人、頼もしい」


「あぁ。頼もしいぞ」


『そこは答えてくれるんだ』

『共闘きた?』

『乃々さんの映像ナイス』

『ソーゴさんかっこいい』

『ハウンド強い』

『連理側も対応早い』


 シーサーペントが、水面へ戻らない。


 どうやって水分を氷に変えてるんだ……?


「シーサーペント……柱の上を抜け、天井近くで大きく旋回しています」


 頭、尾、氷槍。


 どこからでも攻撃が来る。広い場所に出たから楽になる、なんてことはなかった。


 むしろ、広すぎる。


 相手だけが、この空間を全部使えている。


 柱の陰に消えたと思ったら、次の瞬間には別方向から尾が来る。水音も反響で位置がずれる。


 追えば誘い込まれるし、止まれば囲まれる。


「移動範囲が広すぎる。単独で追ったら襲われる」


「逃げ場、少ない」


「こっちだけで見るのは厳しいね」


「同じ判断だ」


 冴は銃口を下げなかった。


 視線だけで、こちらとシーサーペントの距離を測っている。


「今は争っている場合じゃない。組むぞ」


「妥当だ。映像、防御、魔力反応。生存率はあがる。ここで無駄なケガはしたくない」と透。


「守る相手が増える」とソーゴ。


「嬉しそうだな」


「当たり前だ」


 ソーゴは短く返す。


 さっきまで競争相手だったのに、今はその盾が必要だ。


 冴の判断、透の分析、ソーゴの防御。どれも、この広すぎる戦場では欠けると厳しい。


 ここで崩れたら、クリアどころか帰還もない。


「俺たちも合わせるよ」


「結晶の光の名の下に。答えよ、守りよ」


 詠唱。


 ニーナの左腕を覆うように青の結晶の塊が浮かび上がった。


「結晶盾」


「良いじゃないか」


 微笑むソーゴ。


「ひー!」


「火種ちゃんは上。柱の影と足元を照らして」


 火種ちゃんが高く上がる。


 小さな火が、円柱の根元と水たまりの反射を照らした。


 足場、影、水の揺れ。見える情報が増えるだけで、少し呼吸がしやすくなる。


「何か……魔力を溜めているな」


「レンリ」


「うん。乃々さんを守って。俺はチャンスがあれば近づく」


「分かった」


 威嚇するような咆哮。


「シャァァァァァァアァッ!」


『争ってる場合じゃない』

『共闘開始』

『ケガも仕事に差し支えるもんな』

『プロの判断』

『深部放水路でこれは映える』

『これⅡ式のボスかよ』


 シーサーペントの首元で、三つの魔法石が赤く光る。


 何かが来る。


 足元の水たまりが細かく震えた。


 放水路全体の水が、同じ方向へ引かれていく。


「来るぞ」


「うん。受け止めよう」



読んで頂いてありがとうございます!


カクヨムでも配信し始めました! (本編とは遅れて配信になりますが)


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ