十月の楽しみ
十月になってから、いろんなお店がハロウィン一色。
光希って意外とイベントごとが好きだから、飾り付けを見る度に楽しそう。男性になっても、楽しそうな笑顔は変わらないんだな。
私はそう思いながら、光希と一緒にショッピングモールの中を歩いていた。
「ねぇ光希」
「なぁに? どうしたの?」
「なんで光希って、こういうイベント好きなの?」
「うーん、そうだなぁ。小春ちゃんのコスプレが見られるからかな」
「コスプレって言ったって、高校の時とか猫耳カチューシャだけだったし……」
「それだけでも充分可愛かったよ。僕のスマホやパソコンのフォルダにまだ写真残ってるもん。印刷してアルバムに入れたし」
アルバムって、そんなお母さんみたいな……。ん? パソコン?
「パソコン⁉」
「うん」
「わざわざスマホで撮ったやつを?」
「だってデータなくなっちゃったら嫌じゃん」
「それは、そうか……。心配性だなぁ」
二人で笑い合いながら歩いていると、ハロウィン限定スイーツを押し出してるカフェが目に入った。時刻は午後三時。光希は私の方を振り返って、
「少し休憩しよっか」
オシャレな雰囲気があってか、子供連れの人たちがおらず、落ち着いた感じだった。
飲み物とケーキを注文して届いた後、光希が何かを思い出したようだった。
「そういえば小春ちゃん、去年の学園祭って何してたの?」
「去年? 去年は友達とメイドカフェやったよ」
次の瞬間、光希の目から光が消えた気がした。
「へぇ、メイド……」
私は慌てて、
「裏方ね! メイド服は着てないよ!」
光希は深呼吸した後、ニコッと笑った。
「なーんだ、良かった」
私はホッと胸を撫で下ろした。
良かった。光希の目から光が消えた時って、大体良くない感情を浮かべてる時だからなぁ……。
にしても何でだろ。光希ってメイドに因縁的なものでもあるのかな?
「小春ちゃん、今年は出し物しないよね?」
「うん、しないよ」
「そうだよね。出すならもっと早く、僕に言いに来るもんね?」
「当たり前じゃん!」
光希があからさまにご機嫌になっていた。
「じゃあ一緒に回ろ。僕去年参加出来てないし」
そういえば、光希は手術のために休学してたんだっけ。
「開催するのって今月の下旬くらいだよね?」
「そうだよ」
「楽しみだなぁ。小春ちゃんとの学園祭デート」
「まだ気が早いよ……」
サラッとデートって言ったし。
光希は小さい頃からずっと私と一緒にいたけど、光希があまりにもスマートで、すぐ口説くし。なんか手慣れてる感じで……なんだろ、この気持ち。
この気持ちの正体が分からないまま、その日は家に帰った。




