雨のち晴れサプライズ
買ってもらったペンギンのぬいぐるみを抱えながら、私はペンギンの展示を見ていた。
どこに展示されてるのかなってずっと思ってたけど、まさか出口付近だとは思ってなかったな。屋外だからかな?
ちなみに隣に立ってる光希も、ペンギンのぬいぐるみを抱えてニコニコとしていた。
お揃いなのが相当嬉しいみたい。
しばらくペンギンたちを眺めていると、空からぽつぽつと雨が降ってきた。
「小春ちゃん、こっち」
そう言って光希は、私の手を軽く引っ張って出口の方へ向かった。
ここの水族館の出口付近は室内だから、雨には打たれないって判断したんだと思う。
「ごめん小春ちゃん。もうちょっと見たかった?」
「ううん、そろそろ行こうかと思ってたし」
「そっか……良かった」
「にしても雨降ってきちゃったね。予報だと雨降らないって言ってたのに」
すると光希はスマホを取り出し、今の天気予報を調べてくれた。
「僕らが水族館内にいたときに、変わっちゃってたみたい」
「そっかぁ……このまま駅まで歩いたら結構濡れるかもね……」
「そうだね。夜には止むみたいだし、夕飯は近くで探そっか」
とは言っても今はまだ午後四時。
「下の階で、色々見て回ろっか」
光希はまた私の手を握って、歩き出した。
それから二人で雑貨屋さんを見たり、本屋さんや、ケーキ屋さんのショーケースを、迷惑にならなそうな程度に眺めたりしていると、あっという間に夕飯時になった。
「小春ちゃん、そろそろ行こっか」
「うん」
とは言ったものの、珍しく『何食べたい?』とか聞かれなかったな。どこに行くのかも言われてないし……。
そう考えながら付いていくと、エレベーターでどんどん上へ上がって行った。
着いた場所は、夜景が見える、お高そうなレストランだった。
「予約していた空本です」
「空本様、お待ちしておりました」
そのまま誘導されるがまま席に着いた。けど……
「光希、ここ予約してたの!?」
「そうだよ?」
「当然みたいな顔されても……!」
「だって小春ちゃんが初めて誘ってくれたんだもん。それなりにお礼をしなきゃ」
「比になってないよ! というか、いつ予約してたの?」
「お誘いしてくれたあの日に。水族館の場所分かってたし」
「最初から夕飯までいるつもりだったの……!?」
「そうだよ。だってこれサプライズだもん。晴れだろうが雨だろうが、ここに来る予定だったよ」
光希、男性になってから、どんどん大胆になっているような……。
運ばれてくる料理はどれもお高そうで、そのことを考えながら食べていると、
「小春ちゃん、お金のことなら気にしないで。僕が払うから。じゃなきゃお礼にならないでしょ?」
そんな『当然でしょ?』とでも言いたげな笑顔を向けられても……。
しばらく食べ進めていると突然どこからか、男性の声が聞こえた。
「俺と、結婚してください」
声の主の先には、感極まっている女性がいた。
「はい……喜んで」
フロア内に拍手が響き渡った。
「僕はもっと良い演出考えなきゃ」
「気が早すぎるんじゃない?」
「ううん、そんなことないよ。仮にさ、小春ちゃんに告白断られても、僕は諦めないから」
言葉が詰まった。
まさかそこまでだったとは。
「何年も何年も、小春ちゃんと結ばれる日を夢見てたんだ」
光希は真っ直ぐに私の方を向いてきた。
きっと私はもう、逃げられないところまで来てしまったのだろう。
「あれ小春ちゃん、顔赤い?」
「気のせいだよっ!」




