初めてのお誘い
気づけば五月も終わり。
ついこの間までゴールデンウィークだったような気がするのに。
ゴールデンウィークは光希に連れ回されてたっけ。
大人になったからか、光希が運転してくれて。高校生までは電車移動とか多かったし。
思い出に浸っていると、私はあることに気づいた。
私から誘ったことない……?
いつも光希の方から来てるし、小さい頃は、親同士の約束で遠出するって感じだったし。
じゃあ私から誘ってみるか……でもどこにしよう。
ゴールデンウィークに色んなとこ行ったから思いつかないな……。あ、あそこなら……!
と考えていると、後ろから声をかけられた。
「小春ちゃん、僕の講義終わるまで待っててくれてありがとう」
光希はいつも通りに笑う。
なんて返されるか分からないけど……もう勢いで……!
「光希っ! 今度、水族館行かない……?」
思わず俯いてしまった。
光希ならすぐ反応しそうと思っていたが、中々返事が返ってこない。
変に心拍数が上がった気がする。
嫌だったかな? 急すぎたかな? と不安が募っていく。
恐る恐る顔を上げると、光希は頬を赤く染めたまま固まっていた。
「光希……?」
「ごめん小春ちゃん……」
断られたと思ったが、光希は続けた。
「まさか、小春ちゃんから誘ってくれるとは思ってなくて……。水族館、もちろん行くに決まってるよ」
「本当……?」
「本当だよ。僕が小春ちゃんの誘いを断ると思う?」
確かに……よくよく考えたらそうじゃん。
だって光希は、私と結婚するために性転換したんだもんね……。
未だに心の整理がついてなくて、告白保留にしちゃってるけど。
それでも、私からの誘いを嬉しそうに受けてくれた。
「小春ちゃんと水族館デートか。楽しみだな」
「デートと言われるとなんだか照れくさいというかなんというか……」
「顔赤くなってる。可愛い」
「もうっ! いつ行くの!?」
「すぐにでも行きたいけど、ゆっくり見たいもんね。次の土曜日はどう?」
「う、うん。良いよ」
「そう言うと思った」
「え?」
光希はそれ以上言わず、しれっと私の手を取った。
「今日の約束だけで頑張れそう」
「それいつも言ってるよね」
「そう?」
「うん。昔から言ってるよ」
「それだけ小春ちゃんに一途だってこと。覚えておいて」
光希は私の手をそのまま唇まで持っていって、手の甲に軽くキスをしてきた。
「ちょっ、光希っ!」
光希は満足そうに笑った。
その笑顔だけは、昔から変わってなかった。
小春ちゃんが久々に感じます。




