アーク3 - 第18章:ジラードグレ牧場I
(リヴェレンス三、五十九 / 午前0時10分)
「それが合図だ。」
三人は東の方角で炎が勢いよく燃え上がるのを見守った。
炎の勢いの速さに気づいたルナは、近くの納屋に視線を向けた。迫りくる炎から身を守る場所が必要だったが、火はすぐには来ないだろうと彼女は分かっていた。ようやくベンとクリスのほうに視線を向けた時、警棒がかすかに軋む音が耳に響いた。
「君たち二人は、ジャックがいる丘の上へ戻れ。」
「いや。クリスならできるけど、私はやらない。どんな攻撃を受けても、私は対処できる。」
「だったら私の後ろに隠れた方がいいわよ。あいつらはあなたを見つけた途端、あなたを狙ってくるわ。」
ベンはクリスのほうに目を向けたが、クリスは一言も発せず、うめき声すら上げなかった。ベンはモーゼル銃の金属をきしませながら、眉をひそめたまま顔をしかめ、鼻から静かに息を吐き出した。
ルナは一歩前に踏み出し、威厳に満ちた鋭い眼差しで眉をひそめた。
「おい、バカ。俺の言ったこと、聞こえたか?丘に向かって走れ。」
「でも…私もあなたたちと一緒に行きたいんです。」
「ここから先は、銃弾が飛び交えばまさに大混乱になるだろう。君には足手まといになってほしくないんだ。」
「しかし-」
「うわぁ…男だ。」
ベンにとって幸運なことに、ルナの体が彼の存在を隠してくれたので、彼は下の畑に身を隠すことができた。
彼女たちの目の前には、ルナと同い年の女性が立っていた。髪は薄いターコイズブルーに染められ、黒いスカートは膝まで届く長さだった。彼女はヘッドバンドをつけており、その中央には金色の星の形があしらわれていた。
ホープと似た体型をしている彼女は、その女性が十代の少女に視線を向けていることに気づいた。しわだらけの顔を見て、彼女は実年齢よりも老けて見えた。それは主に口にくわえた葉巻のせいだった。茶色の木の葉巻に指を触れ、煙を吐き出すために葉巻を取り出した。
「あなたは誰ですか?」
女は、しわだらけで傷だらけの顔で、気だるそうにルナを見つめた。小さな炎を消し、右に首を傾げながら、それを払いのけた。
「うわ、あんたが私に口出しするなんて、このバカ! ねえ、私、女性が筋肉質なの嫌いなのよ。従順で、欲望に満ちている方が男を惹きつけるのよ。女性は男を惹きつけるべきじゃない。絶対に。」
「マジで彼女うざい。」
彼女は中央のボタンの上に指をかざしたまま、右手を前に伸ばした。相手を睨みつけながら、ブーツを肥料のついた土にしっかりと固定し、体と背筋をまっすぐに伸ばした。
クリスはルナのすぐそばに立っていた。
「私があなたの恋愛事情を気にしているように見える?あなたの意見なんてどうでもいいわ。」
「そうするべきだよ。命を救えるかもしれないから。」
「あぁ……ルナ――」
「どけよ、バカ!俺と彼女は話してるんだ、ありがとう!」
ルナは姿を消した。
女性は瞬きをし、ルナが元々立っていた場所を振り向いた。数歩後ずさり、両手を上に上げて拳を握りしめた。何かを待っていると、ニンニクの匂いが鼻腔をかすめ、まるで――
何か鋭利なものが彼女の首に突き刺さった。
彼女は微動だにせず、ゆっくりと両手と腕を下ろした。彼女に身を委ねるしかなく、背中が彼女の胸と腹に触れ、胸が膨らんで首筋にまで達するのを感じた。
「誰が? は? あなた?」
彼女の目は苛立ちを露わにした。ルナは目を暗くし、それに応えるように目を細めることしかできなかった。
「お前は俺たちを強盗しに来たのか?」
「これが最後のチャンスだ。」
彼女が頭を傾けると、喉に引っかかっていた刃は、ゆっくりと血を拭い去った。金属を伝って流れ落ちる血は、夜風が静かに吹き抜ける中、作物に滴り落ちた。作物、特にその髪の毛がざわめき……女は悪魔のような笑みを浮かべた。
「名前はヴィヴィですヴィヴィ・ジラージです。私の苗字はご存知ですよね?」
彼女の体は溶け始めた。
真夏の暑い日に溶けたアイスクリームのように、彼女の皮膚と筋肉は地面に滴り落ちた。彼女は手を離し、刀を引いて一歩後ろに下がり、防御の構えを取った。
クリスはモーゼル拳銃を手に取ったものの、発砲する気は失せていた。
彼らの目の前には、ゼリーと敵意から生まれた塊が、形を成して姿を現した。地面から立ち上がったそれは、腕と脚、手と足を持っていた。水に似た液体でできているが、水ではない。その防御装甲は、突破するにはあまりにも柔軟に見えた。
その生き物は、一息ついた後、咆哮を上げた。
「くそっ。」
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—待って…彼はジラージ家の当主なの?
中年の男は彼らに向かって歩いてきたが、砂利道をゆっくりと踏みしめていた。彼の両手と腕は塹壕銃でカサカサと音を立て、銃床は腰に当てられ、指は引き金にかかっていた。小石が跳ねる音とともに、三人は銃身が自分たちに向けられているのを感じた。
「私がどれだけのお金を失ったか知っていますか?財産の半分がなくなってしまったんです。すべては私が押し付けた賄賂のせいなんです。」
「あ、あなたがリードに賄賂を渡した人なの?」
「その通りだ。それに、あの裁判所で賄賂を渡したのは彼だけじゃなかった。」
男は銃の銃身をルークの頭の近くに突きつけていた。ルークは足を地面にトントンと叩きつけ、少し力を込めて歯を食いしばった。風が顔と皮膚の大部分を乾かすのを感じ、緊張のあまり指の関節が震え始めた。
ルークは目を暗くし、少し体を前にかがめた。
「損害賠償金は我々が支払うこともできたはずだ。金銭の負債があると伝えてくれればよかった。我々は…君たちのタワーの修理は問題なくできたはずだ…だからなぜリードに賄賂を贈ったのか…なぜ彼らに賄賂を贈ったのか…?」
静寂が訪れたが、耳に響くのはニンニクがパチパチと焼ける音だけだった。
肩に重くのしかかる緊張感を感じ、再び誰かの視線を感じた。手は動かず、指先は乾ききっていた。彼は唾を飲み込んだ。しかししばらくして、中年男はついに銃口を彼の頭蓋骨に押し付けた。
「英雄は弄ばれる存在ではなく、選ばれる存在なのだ。」
彼の本能が全て叫び、彼は直角三角形のように九十度身をかがめた。引き金を引くと、散弾はルークの体に引っかくこともかすめることもなかった。彼はそれを避けた――
彼は右のブーツを蹴り上げた。
それを男の腹の奥深くまで押し込むと、男は息を荒げた。銃を落とすと、金属と木が小石とぶつかり合い、男は無防備になった。実際、彼は小さな池の中のアヒルのように無防備だった……周りは多くの丘に囲まれていた。
「ビンゴ。」
別の弾丸が牧場を巡った。
耳をつんざくような銃声を聞き、彼らは慌てて振り返り、中年男性を見た。男性の右肩から血が噴き出し、彼は膝を激しく地面に打ち付けた。
彼は左手を傷口に当てながら、一行から素早く這って離れた。厩舎に着くと、彼は心地よく感じる木製の羽目板に倒れ込んだ。呼吸を整えようと必死になっている彼の姿を見て、ルークたちは牧場の建物に目を向けた。
「あぁ…」
ルークは遠くに人影が見えたのに気づき、一歩後ずさりした。煙の向こうには、茶色の服を着た人影が見えた。薄手のジャケットにカーキ色のズボン、そして両腕にはライフルやカービン銃が構えられていた。
「どうやら長期戦になりそうだ…」
「ちくしょう…お前ら二人とも俺の後ろに下がれ。」
ルークの横を通り過ぎ、マイルズは中央に立ち、片膝を地面につけてひざまずいた。緩んだ小石で手のひらにへこみができ、指先から青い光が放たれ、それはただの砂袋へと姿を変えた。透けて見えるその砂袋は、四、五人が使うのにちょうど良い大きさだった。
マイルズは頭を下げ、もう一方の手で地面に固定された盾の中央を掴んだ。
「この場所を維持できたのはせいぜい10分だけだ。長くてもね。」
「Gotcha」
ルークとホープは二人とも背中を遮蔽物に押し付け、それぞれ武器を取り出した。金属のグリップを握りしめると、ルークは手のひらが十倍にも固く締まるのを感じた。
—私たちは人間よりも恐ろしいものを扱ってきた。
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正反対の二つのものがぶつかり合い、作物はきらめいた。彼女はあらゆる攻撃をかわし、避けた液体がかろうじて彼女の服をかすめた。
ガゼルのように、彼女のブーツのつま先は肥沃な土壌を滑るように進んだ。摩擦は以前よりもスムーズになったものの、ふくらはぎや太ももに負担がかかっているのを感じた。必死についていこうとする彼女に、塊の突き刺すような攻撃は、一体何と戦っているのかという疑問を抱かせるばかりだった…。
彼女は右のブーツに目を落とした。
「なぜピンク色に変色しているの!?」
しかし、彼女が下を向いたことで、小さな隙間が開いた。右に飛び退くと、拳が彼女の右頬をかすめた。一歩後ずさりしてみると、それは毒ではなく、毒液でもなかった。酸性ですらなかった。
「ああ!何だこれは…」
彼女の頬はかゆく、まるで太陽が同じ場所に2時間以上も照りつけていたかのようだった。指全部で掻きむしりたい衝動に駆られた。
再び不意を突かれた彼女は、右へ飛び退いた。しかし、彼女の剣は謎の液体をまともに受け止めてしまった。土の中を滑りながら剣を体に引き寄せ、彼女は剣の金属部分をちらりと見た。すると、それはすでに錆び始めていた。
「まさか…彼女の力は…」
ヴィヴィは休憩する間もなく右腕を突き出した。ルナは剣を狙いながら両腕と刃を引っ込め、かわすことができたはずの攻撃を避けた。液体を警戒していたため、刃は鈍く見えたが、欠けるほどではなかった。
「くそっ、私は今、ミス・クリーンと戦っているんだ。」
彼女を包み込んでいた、悪臭を放つ液体は、洪水のように周囲に広がっていった。作物を包み込みながらも、その影響範囲はごくわずかで、作物と土壌を蝕んでいった。土壌を病ませ、作物の生命力を奪い去ったその液体は、ヴィヴィをまるで孤島のように孤立させた。
ルナは右の剣を彼女に向けた。彼女の刃のほとんどにオレンジ色の斑点があるのを見て、もう一度あの液体に浸せば金属が腐食してしまうだろうと思ったのだ。
「あっち行けよ、このビッチ。友達に連絡しようとしてるんだ。」
頭頂部からは、水っぽい液体が体から滴り落ちていた。頭を少しだけ突き出すと、ターコイズブルーの髪が地面からようやく見えるようになった。
「彼氏のこと? なぜ男のためにそこまでやるの?」
狙撃銃の発砲音が空気を揺るがした。
ルナは東の方角に目をやった。銃声はルークがいる方向に向かっていた。こめかみから汗が滴り落ちる中、彼女は炎がゆっくりと燃え上がり始めていることにも気づいた。
風が強くなると、ヴィヴィもちらりと外を見た。湿気のない空気の中、汗が肌にじんわりと滲み出た。
「お前たちとあいつらはパパを怒らせたんだ。信じてくれ、パパがお前たち全員にどんな仕打ちをするか、お前たちはきっと気に入らないだろう。」
「私が男性のせいで不利益を被っているように見える?」
「ああ、やっと私のことを理解し始めたのね――」
「だって私はゴミ箱から男を探したりしないもの。私は負け犬なんかじゃないけど、あなたは女にしては情けないわ。」
ヴィヴィの全身の筋肉が緊張し、乾いた喉からうなり声が漏れた。両こめかみに血管が浮き出て、間もなく彼女はよろめく足で地面を踏みしめた。
彼女は両手を前に伸ばした。
「これを食べろ!」
まるで水鉄砲のように、液体の糸が彼女の体から勢いよく噴出した。
野原を駆け回り、飛び跳ねるうちに、ブーツの底に泥が溜まっていくのを感じた。靴下と足がますます不快になり、彼女は歯を食いしばり、歯茎に圧力をかけて出血させた。
「くそっ!こんなことどうやって対処すればいいんだ!」
肥料を含んだ土の中を滑るように進むほど、彼女はまるで猫とネズミの追いかけっこのネズミになったような気分だった。液体を避けようと必死にもがくと、液体は飛び散り、ジュージューと音を立て、可哀想なニンニクの作物から水分を吸い取ってしまった。
「何か気を紛らわせるものが必要だ。彼女がちらっと見るようなものが欲しい!」
二人はかすかなブーンという音を聞いた。
南の方角を向くと、二人は次第に大きくなる羽音を聞いた。その音は体だけでなくブーツまで震わせ、それは他でもない大群の虫だった。彼女は思わず剣を落としてしまった。
「はぁ…はぁ…」
彼女は呼吸が止まり、目を見開いた。顔は死人のように青ざめ、つま先が静電気を帯びる中、ゆっくりと後ずさりした。胸は激しく叩かれ、心臓はまるで太鼓のように何度も何度も鼓動を繰り返した。
なぜなら、その群れは…黒と黄色の集合体だったからだ。
「蜂だ!!」
彼女が作物の茂みに降り立つと、葉や茎が彼女を覆い、群れから守ってくれた。
ヴィヴィは後ずさりしながら、自分の虹彩を構成する奥の黄色い部分を見て目を見開いた。それはただの普通の蜂ではなかった。いや、違う。その体は細く、普通の受粉昆虫にしては細すぎた。
「いやいやいや…」
ヴィヴィとルナの戦いを観戦していたクリスは、フィールドの中央に立っているがっしりとした体格の人物に気づいた。目は閉じられていたが、あまりにも無防備に見えた。しかし、彼がしていることはルナの安全のために必要なことだった。
ヴィヴィの方に視線を向けると、彼の口からたった一言が漏れた。
「スズメバチが…」
スイッチを入れたかのように、嵐のように無数のものが彼女の全身に群がった。彼女は塊のような手と腕で空気と戦いながら、素早く頭を形作って顔を覆った。黄白色の液体が鎧の役割を果たしているにもかかわらず……彼女は腕を振り回し続けた。
「スズメバチは触覚を遮断する外骨格を持っているが、漂白剤を浴びればすぐに死んでしまう。しかし、彼女にとって残念なことに、スズメバチの体は金属よりも丈夫なのだ。とベンは思った。」
群れは次第に小さくなり、その死骸が漂白剤の内側に散乱した。側面から液体が噴き出し、彼女は片膝をつき、そしてもう片方の膝もついた。ピンが刺さるような感覚に襲われ、彼女の盾は……溶けて消えた。
しかし、それは他のハチたちの攻撃を止めることはなかった。
「起きなきゃ…起きなきゃ…」
群れの七十五%が死んだにもかかわらず、残りの二十五%は刺し続けた。片手を伸ばして、彼女は明かりに照らされた牧場の家を見つめた。太ももは腫れ上がり、唇は崩れ、頬はフグのように膨らみ始めた。
「戻らなきゃ…戻らなきゃ…戻らなきゃ…」
足に感覚がなくなった彼女は、胸と腹を慰める土を必死に掻きむしった。首は毒針に貫かれ、喉全体が炎に包まれたように腫れ上がった。気管は炎症を起こし、拷問が続くにつれて赤く染まっていった。
【完璧を目標にせよ。役立たずの弟とは違い、善良な人間になるよう努めよ。】
「いいえ…」
彼女は這うのをやめ、ぼやけた目で牧場をぼんやりと見つめた。
周囲の世界は次第にぼやけ始め、刺された痛みさえも感じられなくなった。聴覚は鈍くなり、触覚も失われ、神経は完全に麻痺した。実際、彼女は目の前にあるものさえ見えなくなっていた。
「パパの言う通りだ…私は戦わなければならない。」
魂が水に沈んでいくのを感じながら、影の中は安らぎと静けさに満ちていた。しかし、呼吸を落ち着かせる術はなく、彼女はできる限り息を止めた。その間、水面から一つの光が消えていった。
「私には力が必要だ…私には強さが必要だ…私には必要なのだ――」
そして、冥府の領域が訪れた。
光の届かない虚空に閉じ込められ、地表から放たれる光も全く見えなかった。息もせず、思考も止まり、ただひたすら自分の思考と祈りだけが頼りだった。思考だけ。目を閉じると、瞳孔の中で白い光がちらついたような気がした。
ついに彼女の手の届くところに光が差し込んだ。
「私に必要なのは私自身だけだ。」
現実が彼女に押し寄せた。まるで時間が吸い取られたかのように、彼女の全身は雷に打たれたかのように弓なりに反り返った。
彼女の視線は牧場に留まっていたが、ふと空を見上げた。星は一つもなく、ただ二つの二重新月だけが輝いていた。
【ブリーチの祝福:第2幕】
そして、漂白剤の波が押し寄せた。




