アーク3 - 第14章:パシシストとダーク・エンジェル
「待って…エリザベス?!」
「君たち、彼女を知ってるの?!」
「まあ…彼女はラゲフォーへの反撃で私たちを助けてくれた。彼女は役に立った、本当に役に立った。」
クリスチャンは腕を組み、依然としてショーンを睨みつけていた。一方、パシフィカは退屈そうな表情で、口から小さなあくびが漏れた。そしてクリスはというと……
彼は肩をすくめ、さらに目を輝かせた。クリスチャンの肩を引っ張り、弱々しくも力強い力で彼の体を軽く押した。
「おいおい!ショーンはこれを何ヶ月も前から計画していたんだぞ!我々には彼らのスパイがいるんだから、つまり――」
「どうでもいい。君は行かせない。」
「ねえ、クリスチャン、ちょっと聞いてもいい?」
一歩も前に出ることなく、ルークの声がクリスとクリスチャンのちょっとした口論を遮った。二人はルークに視線を向け、クリスチャンは目つきを和らげたものの、唇は依然として険しいままだった。
「行きたくないのは分かっているけど、もしよければ…理由を聞いてくれないか?」
「あの場所はスズメバチの巣どころじゃない。毒を持つキイロスズメバチの巣と言った方が適切だろう。牧場の近くに立ったり、国境付近に近づいたりするだけで、撃たれるぞ。」
「だからこそ、行くべきではないんだ」とマイルズは言った。
「まさにその通りだ。君たちは犯罪者扱いされている。もし君たちがあの牧場を襲撃したら、我々全員が後始末をしなければならない厄介事に巻き込まれることになるだろう。」
ルークは両手を上げ、手のひらと指だけで後頭部をこすった。視線を地面に向けたまま、彼は静かにうなずき、頭の中で考えを整理した。
牧場に行くのは自殺行為だ。たとえこっそり行動したとしても、その結果は前代未聞のレベルに達するだろう。彼らの運命がどうなるか、分かっているようで分かっていないようで、ルークはこれから起こる未来に血圧を上げたくなかった。呼吸を整え、彼は3人の兄弟姉妹の方へ顔を上げた。
「では、投票はどうでしょう?」
クリスチャンをはじめとする多くの人々は眉をひそめた。好奇心に駆られ、頭や顔を掻く者もいた。
「誰か牧場に行きたい人いる?」
手を挙げたのはショーンとクリスの二人だけだった。クリスチャンはクリスの手を引き下げようと必死だったが、脇腹を突かれただけだった。
「彼らが行くか行かないかなんて、誰が気にするんだ?」
ルナ、ジャック、パシフィカは同時に手を上げた。ジャックはジャックらしく、風が彼をどこへ連れて行こうとも、彼はそれに乗って行くだろう。そしてルナはルナらしく、ルークがどんな決断を下そうとも、彼女はそれで構わないのだ。
パシフィカは再び大きなあくびをして静寂を破った。唇をペロペロと鳴らしながら首筋を掻くと、ルナは顔をしかめた。
「今度は誰だ――」
クリスチャンとマイルズは手を挙げた。
「牧場に行きたくないんだ…」
既に挙手していた二人に加え、さらに5人が加わった。ホープ、フレッド、ゲイリー、ディエゴ、スタンの五人からなるこの陣営は、他のどの陣営をも明らかに圧倒していた。ルークは苦笑いを浮かべ、ショーンに視線を向けた。
ショーンは胸の下で腕を組み、太陽が背中に照りつける中、目をくるりと回した。
「それなら、これで決まりですね。」
「ちょっと待って…解決策を見つけたんだ。」
ショーンは右に二歩進み、背中を壁にもたせかけ、日光を避けた。腕を組んだまま、右足を左足の上に置き、くつろいだ様子を装うように軽くポーズをとった。
「行きたくない者は行かない。気にしない者、あるいは行きたい者は来るだろう。大軍は必要ない。少人数で十分だ。」
「ショーン、残念だったけど、民主主義が勝ったんだよ」とクリスチャンは言った。
「ちょっと待って…まだ決めてないんだ。」
皆がルークに視線を向けた。行きたくない者は、彼の言葉に息を呑んだ。気にしない者は、安らかな目で頬を垂らして、ゆったりと横たわっていた。
そして、実際に行きたいと思っている人たちにとって、ショーンとクリスはまるでヘッドライトに照らされた鹿のように固まってしまった。彼らは全身全霊を傾け、花火大会でさえも彼らの集中力を乱すことはなかった。
「ショーンと一緒に牧場に行くよ。」
クリスチャン、特にマイルズは、言葉の難解さに顔をしかめた。まるで靴下に石炭を詰め込まれたかのようだった。呆然とし、当惑したルークの衝撃は、皆を静かに息を呑ませるほどだった。
「でも、あなたたちに行くことを強制するつもりはありません。馬鹿げた考えだと分かっていますし、理由もくだらないかもしれませんが、理由はこうです…」
ルークは誰とも目を合わせることができなかった。視線を窓の方に移すと、そこには紫色の花びらをまとった木々が広がっていた。
右目から前髪を押しやり、両目で景色を捉えた。表情を和らげると、目の前に広がる自然が彼の中の子供心を解き放ち、兵士になって以来ずっと忘れかけていたその願いが叶った。
「あの裁判所で起きたことは、我々のせいではない。誰かがリードに賄賂を渡したんだ。誰かがブリッグスに賄賂を渡したんだ。理由は分からないが、誰かが我々に恨みを持っているんだ。」
まるで悪意から仕掛けられた罠のように、すべては彼らが到着した当初は安心感を抱かせるように仕組まれていた。儀式は一転して法廷へと変わり、突然の展開によって全員が窮地に立たされた。
「ショーンの言ったことが本当なら、あの大金持ち一家が復讐を企んでいることになるが、一体何のために?ビルを破壊するため?過剰な損害を与えるため?それが彼らの主な理由だとは思えない…」
もし誰かが政治家や工作員に賄賂を渡していたとしたら、なぜ過剰な損害を証拠として使うのでしょうか?まるで急いでエッセイを書く学生のように、彼らはその情報源の最も忌まわしい部分だけを選び出すのです。突拍子もない主張、些細な詳細、そういったものが相手を悪く見せるために利用されるのです。
「もし私たちが犯罪者である理由が何かあるのなら、どんな理由であれ、それを突き止めることが最優先事項だ。」
ルークは両手を体の横に下ろし、それから体を振り返った。何人かの視線やしわの寄った顔が和らいだのを見て、ルークはホープとルナが座っている方へ歩き始めた。
彼は友人たちの間を通り抜け、ホープの目の前に立った。
「ショーンが言ったように、行くのはほんの一握りの人だけだ。希望。君が行きたくないのは分かっているし、行かなくてもいいんだけど、もし…」
「…もし本当に私に行ってほしいなら…行きます。」
彼女の弱々しい言葉を聞いて、ルークは彼女の従順さに微笑むことも、ニヤリと笑うこともできなかった。よだれを垂らした犬の唾液を浴びせられたような、嫌な気分になり、彼は一歩後ずさりしてルナに目を向けた。
「ルナ、もし君が望むなら、君は――」
「なぜ私がここに留まる必要がある?君は弱い、私は強い。君には私の助けが必要になるだろう。」
「わかりました…」
ルナは床から立ち上がり、ルークは数歩後ずさりした。ホープはおもちゃをいじりながら、小さな物体を指でこすり続けていた。それは鳥のように見え、カワセミのような形をしていた。
おもちゃから目を離さずに、ルークはジャックに意識を向けた。右腕を掻きながら、指で革にこびりついた乾いた汚れをこそぎ落とした。
「おい、ジャック…バンを貸してくれないか、それとも…」
「誰にも運転させない。ベンのひどい運転の後では、俺が専属の運転手になる。」
ジャックは顎の下を掻き、指で乾燥した皮膚を剥がした。爪の間に皮膚が挟まるのを感じながら、彼は尾てい骨をマットレスに押し付け、さらに深く横たわらせた。
ショーンはルークの肩のすぐそばまで歩み寄り、彼の後ろに控えていた。
「つまり、私たち五人だけってことか?」
「あなた自身が言った通りだ。必要なのは小規模な部隊だけで、大規模な部隊は必要ない。」
影の中から、いや、むしろ暗い隅から、サメ人間が現れた。ついに姿を現した彼に、皆の視線はベンに注がれた。彼の友人たちは皆、その大柄な男を無視したが、三兄弟だけは違った…。
「それで…ベン、君も攻撃部隊に加わりたいのか?」
「それはあなたの理由ではなく、私の理由です。」
「あ、ああ…いいよ。」
クリスはサメ人間を見て目を見開いたが、足はくっついたまま動かなかった。恐怖なのか好奇心なのか、彼はその場から微動だにしなかった。パシフィカは両手を体の横に下ろし、右手を腰のあたりに添えていた。指先がぴくぴくと動き、爪先が黒いスプレー缶に触れていた。
クリスチャンは睨みつけながら、両腕を胸の前でしっかりと組んでいた。
「何か問題でも?」とベンは尋ねた。
「ああ、問題ないですよ。全く問題ありません。」
クリスチャンは気づかないうちに、右肩を二度叩かれた。
日焼けした男は右を見ると、ニヤニヤと笑うショーンに視線を向けた。立ち止まると、彼は鎖骨に手を置いた。
「まあまあクリスチャンよ、偏見を持たずに物事を見なさい。
「なぜ?あなたは彼のことで気分を害したの?」
彼の指はすべて強く握られた。
クリスチャンは鋭い痛みに目をぎゅっと閉じ、顔全体をしかめた。唇の中央からシューッと息を漏らし、喉からは低い呻き声が漏れた。
「昔、偏見を憎む女性がいました。彼女はいつも誰に対しても平等に接し、この美しい肉塊も例外ではありませんでした。優しく接しないと、私が彼女を生まれ変わらせますよ。」
ショーンはクリスチャンの肩から手を離し、ジャケットの中に手を押し込んだ。パシフィカから冷たい視線を浴びたクリス自身も葛藤を感じ、片手を首の後ろに当てた。ショーンが正しいのか、クリスチャンが正しいのかはともかく、彼は生まれ育ったのはハクスブルクしかし、進歩は彼の目の前に突きつけられた…。
十代の若者にとって、それはまさに世界の衝突だった。
クリスチャンは汗で顔が青ざめながら、ルークの方を向いた。
「ルーク、約束を覚えているかい?」
「ベンは大丈夫だよ。失礼ながら、彼がサメ人間だからといって怖がらないでくれ。だって…冗談じゃないんだから。」
「私が差別主義者だと思うの?」
クリスチャンは右腕を前後に動かし、先ほど緊張していた筋肉をほぐした。そして、もう一方の腕で上腕二頭筋に手のひらを押し当て、顔の緊張を解きほぐし始めた。
ホープの目にはかすかな光が宿っていた。グウェンに次いで、彼女は人々の想像以上に彼のことを気にかけていたのだ。ショーンはエルフで、ジャックはのんびり屋で、ダークエンジェルズのメンバーは皆、憎しみを植え付けられて育ったわけではなかった。しかし、権威に反抗するように育てられたわけでもなかった。
「私と兄弟姉妹は、サメ人間を除いて、すべての人を敬意をもって扱うように教えられて育った。この国で出会う誰と比べても、私は聖人だ。」
ルークは頬を掻き、恥ずかしそうに小さく頷いた。クリスチャンがだった異なる環境で育ったため、信念の衝突が互いにぶつかり合った。ハクスブルク基準、平和主義者過激派と見なされているが、世界の他の地域では…
彼らは多かれ少なかれ傭兵集団だった。
「ところで、連れて行くのはたった6人だけですか?」
「ああ。ほら、私もこんなことしたくないんだけど…でも…」
ルークは両手を体の横に下ろし、視線を合わせただけで唇が震えるのを感じた。眉間にしわが寄り、額にも皺が寄り、顔全体が引き締まった。
しかし彼は睨みつけなかった。
「これは私たちが思っている以上に、私たちにとって有益だと思います。信じられないかもしれませんが。」
「信じられないかもしれないが、あなたの動機は理解できない。だが、もしそれが本当にあなたが望む選択なら、どうぞご自由に。」
クリスチャンはため息をつき、喉に溜まっていた空気をすべて吐き出した。
彼は両手をポケットに突っ込み、頭を左右に揺らしながらドアまでたどり着いた。そこで立ち止まると、全身がドアからほんの数センチのところまで近づき、後ろを振り返った。そして、ルークとショーンの両方に視線を釘付けにした。
「でも捕まるなよ…何があっても捕まるなよ彼ら」




