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専用武器

 目が覚め、メアに支えられながら帰宅したその翌日――


「それじゃあ始めますわよ」


 ベッドで体を休めていた俺のもとへ本を数冊持ったティナちゃんがやってきた。ティナちゃんは何故かスーツを着て、そして普段かけていない眼鏡をしている。その姿はまるで先生のようだ。


「何を?」

「それはもちろん勉強ですわ」

「えっ? いや……俺、怪我人なんだけど」

「知っていますわ。でも身体は動かせなくても頭を働かせることはできますわよね」

「あの……」

「何か問題でも?」

「いえ……ないです」


 クッ、この子容赦ないな!? 少しは労わってくれてもいいと思うんだけど!




「――ということで王族は皆、自分専用の武器をスキルで作り出すことが出来ますの」

「へー……」


 ティナちゃんのその言葉に驚く。

 ティナちゃん曰く王族、皇族など国のトップに位置する人たちは皆スキルによって己にしか扱えない、そして決して壊れることのない武器を作ることが出来るそうなのだ。


「それじゃあティナちゃんも作れるの?」

「当然ですわ!」

「それって見せてもらうことが出来るかな?」

「まぁ構わないですけど」


 どんな感じなのか気になってティナちゃんにお願いするとあっさりと見せてもらえた。別に秘密にしなければいけないものではないのか。


「はい」


 ティナちゃんから一瞬膨大な魔力を感じたと思ったら手にはいつのまにか短剣が握られていた。


「これが私の短剣、『赤華一閃』ですわ」

「おぉー」


 パッと見ただけでは普通の短剣に見えるが、しっかり意識を向ければ短剣そのものに魔力が宿っている。そう、まるでこの短剣が生き物であるかのように。


「ちなみに魔力を流せばこのように」

「おぉー!」


 短剣が放っていた白い輝きが、ティナちゃんが魔力を流すと紅い輝きにと変化した。なにそれ、かっこいいじゃん!


「ふぅ」

「あっ」


 小さく息を吐いてティナちゃんは短剣を消してしまった。残念だ、まだ見ていたかったのだが……


「どうでしたか?」

「すっごいかっこよかったよ!」

「それはありがとうございますですの。さて、今日の授業はここまでにするんですの。わたくしは下で少し用事を済ませてくるので少し待っていてくださいまし」

「分かったよ、今日はありがとね」

「お礼は全部が終わってからで結構ですの。でも……そう言ってくれるとわたくしも頑張ったかいがあったというものですわ」


 少し嬉しそうに笑ってティナちゃんは部屋を出ていった。


「ふぅ」


 起こしていた上体をベッドに倒して再び身体を休める。


「かっこよかったなぁ」


 先程ティナちゃんが見せてくれたスキルを思い出す。あれはすべてがかっこよかった。武器が出現するところから輝きが変化し、そしてしまう最後まで。

 武器を出現させるのは指輪を使えば俺たちでもできるがどうしても今のようにスッと自然に出現させることは無理だろう。武器の輝きを変化させるなんてことはなおさらだ。


「そういえば……」


 ティナちゃんはさらっと見せてくれたがメアが専用武器を使っているところを見たことがない。そしてリアもだ。あの二人も王族だから間違いなく使えるだろう。


「どんな感じなんだろう?」


 やっぱり二人のも何か特別なものを感じたりするのだろうか。


「戻りましたの」


 いったいどんな感じなのかもやもやしているとティナちゃんが戻ってきた。どうやら下には昼食を取りに行っていたらしい。


「さぁ、お昼を食べるですの」




「これ、美味しいね」


 隣で一緒にお昼を食べているティナちゃんに声をかける。メニューはご飯にステーキ、サラダにスープだ。ステーキはほとんど噛む必要がないほど柔らかく、サラダは野菜がシャキシャキと音をたてるほど瑞々しい。もちろんご飯もスープも美味しいのだが……どれもいつもの味付けと違うような気がする。

 メアはまぁありえないとしてエラとアリスのどちらかが新しい味でも試しているのだろうか?


「お口にあったようで良かったですわ」

「えっ? まさかこれを作ったのって……」

「えぇ、わたくしですの。……なんですの、その顔は」

「いや、だってメアは……」


 まったく料理ができないじゃないか、とは口には出さなかったがティナちゃんにはしっかりと伝わったらしい。


「お姉さまは、まぁ……人には得手不得手がありますの。わたくしは幼い時から厨房に邪魔していたので」

「なるほど……」


 リアもあまり得意ではないと言っていたはずなので王族は料理ができないものと思い込んでいたがそういうわけではなかったようだ。反省しよう。


「しっかり食べてくださいね。身体に効くものを使っているので」

「ん? 何それ?」

「その肉には疲労をとる効果が、サラダに入っている赤い野菜は身体の内部の傷を癒す効果がありますの。他にもいろいろですわ」

「えっ、そんな材料いったいどこから……」

「急いで国に帰っていただいてきましたの」

「ティナちゃん……心配してくれてたんだね、ありがとう」

「いえいえ、結構ですわ……ってわたくしが心配してないと思っていたんですの?」

「いや、だって……ねぇ?」


 怪我人にすぐ勉強をさせるからてっきりそうなのかと。 


「わたくしがそんな薄情に見えますの?」

「ごめんなさい」

「まぁいいですわ。……それにしてもこの服動きづらいですわね」


 ティナちゃんが顔をしかめながら自分の着ている服を見る。


「そういえばどなんでそんな格好を?」

「それは人に教えるというのが初めてだからですの。慣れてないからまずは形から入ろうかと思ってメイドに用意してもらったんですわ」

「初めてだったんだ。それにしては分かりやすかったよ」

「それは良かったですの」


 照れた表情を浮かべながら答えるティナちゃん。そうなのか、これで初めてだったのか……この子は人に教えるのが上手なんだな。


「さて食べ終わりましたね」

「ごちそうさま。美味しかったよ」

「それじゃああなたは身体をしっかり休めてくださいまし」

「もちろん」

「そして回復したら皆で遊びに行くんですの。海が待っていますわ」

「海」

「顔がにやけてますわよ」

「気のせいじゃないかな」

「そうですの? それじゃあまたあとでですの」


 そう言ってティナちゃんは食器をかたずけに部屋を出ていった。

 海かぁ……となるとみんなの水着姿が! これは何が何でも早く治さなければ! その気持ちがさらに強くなった俺は休むためにもぞもぞと布団に入りなおしたのだった。

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