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夢の中の不思議な少女

 薄暗い場所で寂しそうな表情を浮かべた少女がポツンとこちらを見て立っている。


「どうしたの? こんな場所に一人でいたら危ないよ」


 こんな薄暗い場所に少女一人では危ないと思い、近づいて声をかける。


「あれ?」


 しゃがんで少女と目線を合わせて何か違和感を感じた。それは確かに知っているのに何だったかを思い出せないような、そういった類のものだ。

 つまり何が言いたいのかというと俺はこの少女を知っているはずなのに誰なのかを思い出せないということだ。まるで少女がそこに存在していないかのようにさえ思えてくる。


「ごめんなさい」


 すると少女が唐突に謝りながら泣き始めた。その泣いている姿は見た目の年齢よりもさらに幼く見える。


「えっ、どうしたの!? どこか痛いの?」


 突然のことに困惑しながらも優しく声をかける。しかし――


「ごめんなさい……! ごめんなさい……!」


 少女は答えることなく、ただひたすらに謝り続けている。


「……大丈夫だから落ち着いて」

「……えっ?」


 そんな少女の頭に優しく手を置き、撫でながら落ち着くように言う。そんな俺の行動が予想外だったのか少女は目を丸くしている。


「そんなに謝らないで。それともなにか悪いことしたのかな?」

「……うん」

「そうか。じゃあお兄さんが一緒に謝ってあげよう。誰にしたのかな?」

「たくさん」

「たくさん?」

「うん、数えきれないほどの人にしたの。お兄さんにもしたの、ごめんなさい」

「そうなんだ……いいよ、俺には正直思い当たることがないけど正直に謝ってくれたんだ。だから許してあげるよ」

「ほんとう?」

「もちろん」

「……ありがとう」


 これまでずっと泣いていた少女が初めて笑顔を見せた。


「私、レイナっていうの。ねぇ、お兄さん。私、とても寂しいの。だからこの夢が終わっても私のこと忘れないでいてくれる?」

「夢?」

「うん」

「分かった。君のことは覚えておくよ」


 そう答えると同時に、急に俺の身体の周りが光り始めた。


「なんだ!?」

「お別れの時間が来ちゃったみたい。それじゃあお兄さん、また会えたら嬉しいな」



           ☆           



「っ!」


 目が覚めると見たことのある天井が目に飛び込んできた。この天井は家のではなく、エルピリアのものだ。


「おはよう、優臣。目が覚めたのね」

「メア……」


 寝転がったまま横を向けば椅子に座っているメアがいた。


「くっ!」


 起き上がろうとしたが全身に鋭い痛みが走り、断念する。


「無理しちゃだめよ、テオが全身ボロボロだって言ってたのだから。水飲む?」

「ありがとう」

「それにしてもディスパールと戦ったときより酷かったらしいけど、いったい何があったのかしら?」

「実は――」




「そう」


 俺の話を聞き終わったメアは静かにそう呟いた。


「あなたの話を聞いたとき、あのときよりもボロボロだと言われて本当に心配したのよ」

「うっ、ごめん」


 心配かけたことに対して謝ると「はぁ……」とメアはため息をついた。


「謝らないでちょうだい? あなたは何も悪くないのだから」

「……」

「とにかく本当に無事でよかったわ。しばらくはゆっくりと休みなさい」

「いやでも、ご飯とか――」

「いいから休んでちょうだい?」

「……ありがとう」

「あなたはもう少し自分を大切にするべきだと思うわ」

「あはは、俺ほど自分を大切に思っている人はいないと思うよ?」

「はいはい、それじゃあ私は他の心配してる人たちを呼んでくるから少し休んでて」

「分かった」


 そう言うとメアはベッドの横にある小さな机の上にあった水差しを持って部屋を出ていった。


「ふぅ」


 と、小さく息を吐く。そしてさっきまで見ていた夢のことを思い出す。夢と呼ぶにはえらくリアルであった。そして夢に出てきたレイナという少女、どこかで会った気がするんだが……まったく思い出せない。うーん……


ドタドタドタドタ!


「目が覚めたか!」

「うるさいなぁ」


 どうにか思い出そうとしていると大きな足音をたてて廊下を走って来たレオンたちが部屋に入って来た。


「おいおい、最初の言葉がそれかよ!」

「なんだ、他の言葉がよかったのか?」

「いいや、お前らしくていいと思うぞ」

「あっそう」

「それで何があったんだ?」


 そしてメアと同じように何があったのかを尋ねてくるレオンたち。やれやれ、それじゃあもう一回同じことを話すかな。


「実はね――」

Chapter3が始まりました。よろしければこれからも読んでやってください。

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