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バカンス

「海だー!」


 目の前に広がる海を前にして、水着に着替えた恭也が大声をあげる。


「こんなところに来れるなんて思わなかったよ」

「何度見てもすげぇな……」


 俺たちは今、リアに誘われて王家が所有する別荘に遊びに来ている。その別荘は白を基調とした大きな建物で、海を背にしてここから見えている。


「そういえば女性陣はまだいないね」

「そういうものだろ」


 今ここには俺、レオン、恭也、テオ、そしてエクスの五人しかいない。俺たちの水着はどれも似たような形のものだ、ただ一人テオを除いては。


「まぁまぁ、パラソルとかを設置しながらのんびり待ってよ?」


 テオが麦わら帽子のつばを掴みながら提案した。そう、テオは麦わら帽子をかぶり、そして上には白とライトグリーンのパーカーを着ているのだ。その姿はとても眩しく、例えるなら真夏に咲いている向日葵のようだ。


「そうするか」




「お兄ちゃーん!」


 パラソルやビーチチェアの設置を終え、座って待っているとアリスが一番にやって来た。


「わぁ、これが海の匂い!? なんか変だね!」


 アリスが砂浜の上でピョンピョン跳ねて興奮している。ここに来る途中で知ったがエラとアリスは一度も海に来たことがなかったようなのだ。だからとても喜んでいるのだろう。


「ところでみんなはどうしたの?」

「すぐ来ると思うよ。あっ、ほら!」


 アリスが手を振った方を見れば女性陣がちょうど階段を下りているところだった。


「待たせたわね」

「「「「おぉー!」」」」


 メアたちが近づいてきてハッキリと姿を認識できると思わず俺たちの間で歓声が上がった。その理由は当然、水着姿を見ることができたからだ。

 喜びのあまり俺、レオン、恭也、エクスの4人で拳を合わせる。


「ここが天国か」

「俺、この光景を見るために生き延びてきたのかもしれない……!」

「吾輩、今日ここにいれたという事実に感謝しかないぞ」

「もう少しで鼻血が出るところだった」 

「ちょっと、後ろで何コソコソ話してるのよ?」

「なんでもないよ」

「そうだ、感動の共有をしていただけだ」

「そう?」


 あぶないあぶない、危うくこの話を聞かれてしまうところだった。それにしてもいろんな水着があるんだなぁ。

 シルティはシンプルな白いビキニか……うん、最高だな!


「なんじゃ、そんなにまじまじと見るでない」


 そんなことを考えているとクロに怒られてしまった。どうやら見すぎてしまったようだ、反省反省。


「ところであいはなんでパーカーをギュッと握りしめてるの?」


 見ていて気付いたことをあいに尋ねる。パーカーを着ていること自体は普通だが、なぜか前をギュッと強く握っているのだ


「あっ? うるせぇ、こっちを見るんじゃねぇよ! ぶっ殺すぞ?」

「ご、ごめん」


 顔を真っ赤にしながら答えるあい。もしかして恥ずかしがっているのだろうか?


「レオン」

「ん?」


 俺の隣で同じく彼女たちを見ていたレオンを見てこちらに近づいてくるリア。どうしたんだ?


「えい」

「っ!?」

「えっ」

「はぁぁああああ!?」


 リアのとった行動にみんなから驚きの声があがる。それもそうだろう、なぜならリアはレオンに近づいてその大きな胸にレオンを引き寄せたのだから。


「リ、リア!? なにしやがんだ!?」

「レオン、他の人を見なとは言いませんができれば私だけを見てほしいのです」


 そしてリアはさらにレオンを引き寄せたのか胸の形が変わっている。 なんだそのセリフは!? そんなことを言われるなんて羨ましすぎる!

 それを聞いた女性陣からは黄色い声とともに


「だ、大胆ね」

「すごい」

「ば、ばか! そういうのはオレたちがいないところでな……!」


 といった声が上がっている。これに対し俺、恭也、エクスはといえば


「裏切り者め」

「こんなに白くてきれいな砂浜を赤く染め上げなければならないなんてな」

「夜道には気を付けろよ」


 とドス黒い言葉を吐いている。


「くっ」

「あっ」


 寂しそうな声を上げるリアと、そのリアから逃れて戻ってくるレオン。


「分かったからこんなことを人前でするのはやめろ!」

「では人前じゃなければいいのですか?」

「違う! 嬉しそうに言うな! いいからさっさと遊ぶぞ!」

「はーい」


 なぜか物足りなさそうな声をあげるメアたち。もしかしてこのやり取りをまだ見ていたかったのだろうか?


「おい、お前ら。あいつらが終えるまでに、ん?」


 準備運動を始めた彼女たちに対し、俺たちはもう済ませているので準備万端だ。つまり時間が少しあるのだ。その時間内にやることと言えば一つしかないだろう。

 エクスがガシッとレオンの肩を掴む。


「なぁ、スイカ割りしたくないか?」

「スイカ割り、いいじゃねぇか。それなら早速準備するか」

「いやいや、準備はもう終わってるぞ。ほら、見てみろ」

「おい、恭也が持ってるの釘バットじゃねぇか! なんでそんなものを――」

「それはなぁ! お前がスイカだからだよ」

「くたばれ!」

「ふざけんなぁ!」


 エクスの手を払いのけて逃走を始めるレオン。逃がすかよ!


「待てやテメェ!」

「吾輩から逃げられると思うなよ」

「くそったれがぁあああ!」



           ☆           



「うーん……」


 一人あの追いかけっこに加わらなかった僕はリアたちと合流する。


「ちょっと、あいつら何してるのよ?」

「スイカ割りって言ってたよ」

「はぁ? なんでそれがあんなことになってんだよ」

「それがさっきのレオンが羨ましかったみたいで」

「はぁ」


 周りから呆れのため息が漏れる。


「……男ってそんなに大きい方が良いのかしら?」


 小さな声でボソッとそんなことを言うメア。


「そうっすよ! 小さいには小さいなりの良さがあるってものっす!」


 そしてそのメアの呟きに乗るミーナ。


「そうっすよね、クロ」

「我か? 我は胸の大きさはそこまで関係ないと思うがのう。ようは気持ちの問題じゃろ」

「くっ、自分と同じくらい小さいのに妙に達観してるっすね!」

「あいとティナはどう思うかしら?」

「え、いや、オレはよく分からないけど……どうなんだろうな?」

「わたくしもよく分かりませんわ」

「くっ、自分より大きいからって強者の余裕っすか!?」

「ちげぇよ!」

「あら、私は大きい方がいいと思うけど?」

「マヤはそんな立派なものを持ってるからそう言えるんすよ!」

「あらひどい」

「でも本当にすごいですわね」

「それを言うならマヤには劣るがシルティもすごかろう」

「そう?」


 まじまじとマヤとシルティの胸を見始めるミーナたち。あの……僕の前でそんなことをされると少し困るんだけど。


「そうだ、テオはどうなのかしら」

「えっ?」

「確かに……私たちがどうこう言うより男であるテオに聞いた方が良いわね」

「どうなんだ、テオ」

「えっ、いや、あの」


 じりじりと近づいてくるミーナとマヤ。これはひょっとしてまずい状況なのかな?


「これこれ、そんなことを聞いてやるでない」


 しかしそこにクロからの助け舟が入った。


「好みは人それぞれじゃからこやつにそんなことを聞いても参考にはならんじゃろ」

「それもそうね」


 それを聞いて下がる二人。良かった……

 あぁ、みんな早く帰って来てくれないかなぁ……僕、この状況に耐えられるか分からないよ……

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