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最強女勇者と魔王城に攻め込んだらロリ魔王とロリアラクネが可愛くてそのまま魔王城でスローライフ  作者: 焼肉一番


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もっと遠いところ

「リーン見なかった?」


 走り去ってしまったリーンを探し、テオは兵士時代の同僚に声を掛けた。彼らはいつかのテオの様に、勇者城の城壁に身体を預けて休憩していたのだが、テオにそう言われて口元を歪める。


「いいや? 知らねぇな。お前もあんな勇者のお守なんて大変だよなぁ」


「お守じゃない! リーンは……勇者様は歴代最強なんだぞ! 俺が兵士として役立たずだったから頂いた仕事だ!」


「歴代最強ならとっとと魔王討伐に向かうだろ。毎日この城で偉そうにしてるだけだ。みんなお前に同情してる」


「同情なんか……!」


 いつになく同僚はテオに絡んだ。こんなやりとりも慣れたものだったがテオも今は少しピリピリしている。


「ダレル・キャスタルって行方不明になった男なぁ、ダレルの方がよっぽど勇者だろうって皆言ってる。平和な辺境の村からわざわざ魔王城を目指して来たんだぞ」


 そう、この事だ。この事で勇者城内がザワ付いているのがテオにも良く分かっている。


「シード大臣は突っぱねた様だが、貸してやれば良かったんだよ! 本物の勇者よりよっぽど期待が持てた! それなのに……あげくそのまま消息を絶っちまったんだから、勇者が殺したようなもんだな」


「なっ……!」


 あまりの暴言にテオが息を飲むとその場に居合わせた他の同僚たちも加わった。


「そうだ! 勇者……いや! リリィアンナ・ファーレンは人殺しと同じだ!」


「役目も果たさず偉そうにしやがっ……ぐぶっ?!」


 こんな暴言、全部聞いてやる必要はない。テオは鋭く右足を突き出すと、同僚の腹に思い切り喰い込ませてやった。


「もう一回言ってみろよ」


「テオ! お前……!」


「俺の前でリーンの悪口もう一回言ってみろ! 剣が握れなくてもお前らくらい殺してやれるからな!」


 言いながら、テオは感情が昂ってポロリと涙を零してしまう。リーンが悪く言われる事が悔しくてたまらないのだ。

 それを見た同僚たちは顔を見合わせて引き上げた。もともとテオに対しては憎い感情があるワケではない。


「分かったよ、見つかると良いな」


 心底同情されたのだろう。同僚の一人がそんな言葉まで掛けてくれる。テオはいたたまれなくなってそのまま膝を抱えて泣いた。少し落ち着いたらまたリーンを探しに行こう。泣いた事がバレない様にちゃんと顔を洗ってから……。


「あんな一面もあるんだ。驚いた」


 頭上から探し人の声が振って来てテオはビックリして涙に濡れた顔を上げる。


「リーン?! あ、いや……これはその……」


「擦らないで、腫れるわよ」


 慌てて乱暴に自分の目を擦るテオの手をそっと制してやるリーン。


「俺の目なんて腫れたところで良いですよ。もう、カッコ悪いとこ見られちゃったし」


 慌てて乱暴に涙を拭うテオを見詰めてリーンはポツリと言った。


「……ずいぶん肩身の狭い思いさせてたみたいね」


「ははっ、全然。あいつらが分かってないだけですから」


「まぁでも……一理あるわよ」


「そんな事……!」


「実は勇者ってさ、生まれた時点で自由がないって思わない?」


 言いながらリーンは自分の瞳を指した。美しい青紫のそれは、瞳孔が特徴的である。まるで星の様に、五つの角が出来ているのだ。それこそが勇者の証だった。


「特に個人的恨みもない魔王を倒す義務を押し付けられてさ、逃げようにもこの瞳が許さないでしょ? それこそカンザよりもっともーっと遠いところでひっそり一人で暮らさなきゃ。あたし、あたしを生んだお母さんさえ誰なのか知らないのよ?」


 勇者は個人のものではない。その瞳に勇者の証を持つ者が生まれればすぐに引き離され、勇者城で暮らす事になる。立派な勇者を育てる為に様々な教育を施す為だ。だがそうした結果、リーンは勇者としての育て方を間違えたと言えるだろう。勇者としての強さや知識は十分でも心が追い付いていない。


「そんなの、まるで魔王を倒す為の道具みたい。そう言われてるのが聞こえちゃった事もある。だいたい、本当に魔王って倒す必要あるの? こっちに敵意を向ける魔族は魔王の影響で強大な力を得てるって言うけど、それもしかしたら魔王の意志じゃないかも知れなくない? あたしみたいに、その血を持って生まれてしまっただけなんじゃないの? そうやって余計な事ばっか考えてたら絶対旅立ってやらないって思っちゃったんだよね」


 自分の心の中を吐露したリーンの手を取り、テオはそれを両手で出来る限り強く握った。


「な……何よ」


「行きましょう」


 真っすぐそう言うテオにリーンは苦笑いを浮かべる。


「……そうね……。本当は運命から逃れられないって、分かってた事だしね。どうしても素直に旅立つのが嫌で一年も延ばしちゃったけどどうせ行くなら……」


「違います、カンザよりももっともーっと遠いところですよ」


 思ってもみないテオの言葉にリーンはあんぐりと口を開けた。


「俺、自分で畑作ってみたいなって思ってたんです。最初は大変かもしれないけどだんだん種類増やして、いっぱい美味しい野菜作ります! 川や海の近くはきっと人も多いから、自分たちで井戸を掘って水の確保をしましょう。そうだ! 温泉が湧く土地はどうですか?! 誰も知らない秘境温泉を毎日独り占めですよ! 出来ればペットも飼いたいですね。どんな生き物が居る土地かは分からないから懐いて来た動物……いっそ低級な魔族でも可愛いのが居るかも知れませんよね! 何か特殊な魔法で俺たちを助けてくれたりしたら良いなぁ。夢物語かも知れないけど……」


「あんたと二人で……?」 

 

まるで夢物語をうっとり話すテオに、リーンが冷静にそう言うとテオは途端に顔を赤くして握り締めていた手を放してしまう。


「あっ、いっ……いやまぁその、リーンの考えに賛同して一緒に来てくれる人がいたならそれは俺に断る権利はありませんけどままま万が一誰も来なくても俺はっ……!」


「ふふっ」


「えっ?」


 思いがけず柔らかく笑うリーンにテオは目を奪われる。だがそんな表情は一瞬で、次の瞬間にはいつもの強気な瞳を輝かせた。


「行くわ」


「……はっ! はい! じゃあ俺急いで準備します!」


「別に準備なんか要らないわよ。ああ、一応ブレイズオーブ持って行こうかな。使うかは分かんないけど」


「あ……、はぁ、何に使うんです? ブレイズオーブなんて魔王城の結界を弱める以外にはちょっと綺麗なだけの水晶ですよね?」


「なくてもいけると思うけど、一応省エネよ」


「え?」


「魔王城の結界弱めるのに使うって言ってんの」


「えーっ!!」


 何故急にリーンがその気になったのか、テオにはさっぱり分からない。本当にリーンと、世界を捨ててひっそり暮らす覚悟をしていたのだ。そしてその本気はちゃんとリーンに伝わった。

 リーンはただ、誰かにちゃんと人として扱われたかったのだ。勇者ではなく。だからテオにはずっと名前で呼んで欲しかった。

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